トレンドより「コスト低減」。世代問わず運用商品にはシビアな目
Finasee / 2023年2月9日 19時0分
Finasee(フィナシー)
販売会社の若手とベテラン層の間には、運用会社の「商品開発・企画力」に期待するポイントに違いがあるものの、トレンドより「運用コストの低減」を求めるニーズが世代を問わず強くなっていることが分かった。金融リテール専門誌『Ma-Do』が実施した「運用会社ブランドインテグレーション評価2022」で、30代以下の若手と40代以上のベテランが運用会社に期待する「商品開発・企画力」についての回答内容を分析した。「商品開発・企画力」の評価で軸になっている「先見性が感じられる商品開発」については、年代の別なく評価ポイントが高かったが、2021年と2022年を比べると「商品のコストとリターンの整合性」に対する評価ポイントが上がり、反対に、「トレンドに適合する商品」への評価は若手が評価を大幅に下げている。投信の運用成果が出難い2022年の市場を前に、特に、若手の間で「トレンドより、運用コストが低い商品を出してほしい」という思いが強まったのかもしれない。
「運用会社ブランドインテグレーション評価」は、投信販売会社が運用会社を評価する調査で、運用会社について「運用力」「商品開発力・企画力」「営業担当者・研修担当者の質」「サポート力」「ブランド力」「ガバナンス」の6つの軸で評価してもらい、得点順にランキングした。2022年調査は9月~10月にWEBで実施し、国内外の運用会社36社を評価の対象とし、310件の回答を得た。回答者の年齢構成は、20代と30代が合わせて40.3%、40代以上で59.7%だった。
若手の間で「トレンド」離れ新しく出てくる商品が「トレンドに適合しているか」というのは、すなわち、「売れ筋商品か」ということであり、販売員にとっては販売成績に直接かかわる重要な要素といえる。特に、経験の浅い若手層にとっては、「多くのお客様が購入している商品」というのは販売しやすいのだろう。ところが、22年の調査結果では「トレンドに適合する商品を提供している」という評価項目が、30代以下の若手では21年の49.6%が22年は38.4%に急低下した。これは、同項目に対する40代以上のベテランの回答が21年の37.9%から22年は36.8%と横ばいだったことと対照的だ。22年の相場は米国をはじめ世界株が低迷したこともあって、21年のように「米国株さえ勧めておけば間違いない」という状況が一変したからだろう。また、株式市場が低迷すると同時に債券市場も中央銀行の利上げによって大きく崩れた。このため、「もはやトレンドだけで商品を勧めることに意味がない」という状況になったと考えられる。
一方、「商品のコストとリターンの整合性がある」という評価項目は、若手の評価が21年の51.1%から22年は64.0%に上がり、ベテランも21年の60.2%が22年は67.0%にまで高まっている。これは、運用環境が厳しい中で、リターンが期待できる商品を開発することは難しいだろうから、せめてコストの面で納得感の高い商品を提供してほしいという気持ちの表れと解釈することができる。この結果、ベテランの評価は、「先見性が感じられる商品開発」(22年は66.5%)を抜いて、「商品のコストとリターンの整合性がある」が最も重視する評価項目になった。
「外部委託の選定力」には年代差「商品ラインナップが豊富」という運用会社の商品開発力の総合力を評価する項目は、若手が21年の30.5%から22年は27.2%にやや低下したものの、ベテランは21年の25.5%から22年は29.7%に上がっている。運用環境が厳しくなると、ベテランになるほど、過去の経験を振り返り、難しい運用局面においてもそれを打開するような商品を開発してきた運用会社の開発力に期待する気持ちが出てくるのかもしれない。
また、「外部委託先の選定力」についても、若手とベテランの回答の傾向が逆になった。若手の回答率は21年の9.9%が22年は5.6%に落ちているが、ベテランでは21年の6.8%が22年は10.3%に上がった。外部委託先に運用を委託するのは、主として外国の株式や債券等のリスク商品に投資するファンドの開発においてだ。22年は急速に進んだ円安によって、海外債券などの運用では円安メリットによって一定水準のリターンを確保できたものもある。国内資産に比べて、より広い運用商品や運用手法が活用できるという点では、市場環境が難しくなるほど、外部委託先との連携は重要になる。この点では、様々な市場変化を経験してきたベテランの間で、運用の工夫による運用商品の開発への期待は高いといえる。これは、運用会社の商品開発・企画力への信頼があることの表れと考えられる。
Finasee編集部
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