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夫婦で年収1000万円は”普通の人”。無謀な億ション購入後の悲惨な末路

Finasee / 2023年2月9日 17時0分

夫婦で年収1000万円は”普通の人”。無謀な億ション購入後の悲惨な末路

Finasee(フィナシー)

都心6区では3LDKが中古でも1億円超の値付けに!?

1月25日付、日本経済新聞の朝刊に「中古も『億ション』迫る」という見出しの記事が掲載されました。

東京カンテイが24日に発表した、2022年の都心6区中古マンションの平均希望売り出し価格が9800万円になり、1億円の大台乗せ寸前まで値上がりしているという内容の記事です。

この平均売り出し価格は70平方メートル換算のものですが、2022年は前年比7%の上昇となりました。記事によると、2004年から2.2倍になったということです。ちなみに23区全体では8%上昇の6842万円。これに対して23区の住宅価格は年2%程度しか上昇しておらず、戸建てよりもマンションが人気であることを伺わせる数字になっています。

実際、筆者が中央区にある事務所の近辺を歩いていても、築年数7年程度の築浅中古マンションが、70平方メートルの3LDKで1億円を超えた値付けになっていました。新築マンションが1億円を超えているのは知っていましたが、築浅とはいえ中古マンションでも1億円を超えていることには驚きました。もはや都心に住むのは、普通の庶民には無理なようです。

などと思っていたのですが、同記事に掲載されている不動産会社のコメントによると、実はこの手の高額物件を購入しているのは富裕層でも何でもなく、普通の会社員であったりするということでした。同記事ではリクルート調べということで、「21年に首都圏で新築マンションを契約した人の平均世帯年収は1019万円と08年に比べて38%増えた」と書かれています。金融機関によると条件次第では年収の10倍まで住宅ローンを貸すことができるということで、確かに平均世帯年収が1019万円あれば、1億円の物件には手が届くことになります。

億円超えマンションを狙う人たちが見逃している“あるリスク”

ただ、現在の年収に合わせて目いっぱいのローンを組んで高額物件を購入することのリスクは、認識しておくべきでしょう。

まず現在の収入ですが、これからも順調に年収が増え続けるなら問題ありません。しかし、果たしてその保証が今の会社にあるでしょうか。もちろん能力が非常に高く、出世していける人であれば、年収もどんどん上がっていくでしょう。

でも、これからの時代は同じ会社で働く同期の間で、優勝劣敗がはっきりしてきます。高度経済成長だった時のように、全員が一定水準まで昇進し、それに伴って給料も増えていくという時代ではないのです。優秀な人材は給料がどんどん増えますが、そうでない人は全く給料が増えないことも、十分に考えられるのです。

給料が増えないことに加えて、共働き家庭が世帯年収ギリギリのところで目いっぱい住宅ローンを組んだ場合、夫婦の片方が働けなくなった場合のリスクもあります。いずれかが病気になる、大きなケガをする、あるいは出産によって会社を辞めるという事態も起こりうるでしょう。最近は女性が産休明けに職場復帰しやすい環境を整えている会社も増えていますが、もし会社を辞めてパート勤めをするという選択肢を取った場合、世帯年収は大幅にダウンします。

変動金利型の住宅ローンの場合、金利上昇により返済額大幅アップの可能性も!?

言うまでもなく家は人生で最も高額な買い物になります。その返済負担を、長期間の住宅ローンを組むことによって20年、30年間で平準化できるといっても、借り入れる金額によっては月々の返済負担もかなり重くなります。これは銀行のホームページに住宅ローンの返済シミュレーターがあるので、それを使って計算してみると良いでしょう。

ちなみに頭金2000万円で8000万円を借り入れて1億円の物件を購入した場合、ボーナス返済額をゼロにすると、35年間の返済期間、変動金利で年0.475%の借入金利でも、月々の返済金額は20万6785円になります。仮にペアローンを組み、共働きの夫婦は半々で返済した場合、1人あたりの返済金額は10万円とちょっとになりますが、35年という長期間のうちには、どのようなトラブルが生じるか分かりません。そのリスクも念頭に置いておく必要があります。

それに加えて、ここに来てクローズアップされているリスクは、金利上昇リスクです。特に変動金利型の住宅ローンを組んでいる人は要注意です。確かに、変動金利型の住宅ローンは固定金利型に比べてローン金利は低いのですが、今後、長期金利の上昇に連れて短期金利も上がったら、変動金利型の住宅ローンを組んでいる人の返済負担は、さらに上昇します。仮に現在の0.475%が1.0%まで上昇したら、それだけで月々の返済金額は2万円も上がるのです。

もし、今の住宅ローンの返済負担が、自分の所得水準から見てギリギリのところだとすると、金利上昇に伴って返済金額が1万円、あるいは2万円でも増えたりしたら、それだけで家計が破綻してしまう恐れがあります。

年収500万円×2の共働き夫婦は“ごくごく普通の人々”

同記事では、共働きで世帯年収1000万円超えの夫婦を「パワーカップル」などと称していますが、そんな言葉に騙されてはいけません。年収500万円ずつの夫婦で世帯年収1000万円程度などというのは、パワーカップルでも何でもありません。ごくごく普通の人たちです。

でも、不動産会社やデベロッパーは、住宅を購入してもらいたいし、住宅ローンさえ組ませることができれば、債務は銀行持ちになるので、「パワーカップル」でも何でも、おだてる言葉を用いて家を買わせようとします。

またお金を貸す銀行も、返済が滞れば物件を競売にかけて回収しますから、別段、腹は痛みません。マンションでも戸建てでも、それが新築でもあったとしても、あるいは中古物件であったとしても、最終的に返済義務と諸々のリスクを背負うのは、家を買う人たちなのです。家を買うにあたっては、長期の返済期間中に生じる恐れがあるリスクをすべて洗い出し、ひとつずつ潰して、それでも返済し切れる自信があるかどうかを考える必要があります。

自信がなければ買わなくても良いでしょう。それならば自分が高齢者になるまで賃貸物件で生活し、倹約しながら資産形成に勤しみ、高齢者になったら年金と蓄積した金融資産を合わせて、施設暮らしをした方が合理的です。

鈴木 雅光/金融ジャーナリスト

有限会社JOYnt代表。1989年、岡三証券に入社後、公社債新聞社の記者に転じ、投資信託業界を中心に取材。1992年に金融データシステムに入社。投資信託のデータベースを駆使し、マネー雑誌などで執筆活動を展開。2004年に独立。出版プロデュースを中心に、映像コンテンツや音声コンテンツの制作に関わる。

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