若手は対人サポート、ベテランは資料充実を求む運用会社への期待
Finasee / 2023年2月21日 19時0分
Finasee(フィナシー)
2022年のマーケットの大きな変化には、金融商品を取り扱う販売会社の若手とベテランの別なく、運用会社の「サポート力」に対する期待が高まった。金融リテール専門誌『Ma-Do』が実施した「運用会社ブランドインテグレーション評価2022」で、30代以下の若手と40代以上のベテランが運用会社に期待する「サポート力」についての回答内容を分析した結果、「問い合わせに対するレスポンスが速い」、「マーケット急変時の連絡が迅速である」という項目で、販売会社の若手の評価ポイントが大きく上昇した。また、若手とベテランの別なく「週次、月次等の運用レポートがわかりやすい」、「販売用資料が優れている」という項目の評価ポイントが上がっている。マーケットが大きく動く中、若手は運用会社の人的サポートに、ベテランは文書化された正確な情報提供に期待する実態が浮かび上がった。
「運用会社ブランドインテグレーション評価」は、投信販売会社が運用会社を評価する調査で、運用会社について「運用力」「商品開発力・企画力」「営業担当者・研修担当者の質」「サポート力」「ブランド力」「ガバナンス」の6つの軸で評価してもらい、得点順にランキングした。2022年調査は9月~10月にWEBで実施し、国内外の運用会社36社を評価の対象とし、310件の回答を得た。回答者の年齢構成は、20代と30代が合わせて40.3%、40代以上で59.7%だった。
市場変化の経験の差が評価を分ける運用会社の「サポート力」に対して、販売会社の若手とベテランの間で期待する要素に大きな変化はないが、2021年と2022年の調査結果によると、「マーケット急変時の連絡が迅速である」という項目について、若手は21年の30.5%が22年には39.2%に大きく評価を上げたことに対し、ベテランの回答は21年の42.9%が22年は42.7%と横ばいだった。これに加えて、「週次、月次等の運用レポートがわかりやすい」という項目に対しては、若手が21年の64.9%から22年は73.6%、ベテランは21年の57.1%から22年は61.6%へと、ともに評価ポイントを上げていることを重ねると、若手はマーケットの変動に対して運用会社の担当者による迅速、かつ、詳しい状況説明が必要と感じられていることに対し、ベテランは運用レポートなどによって正確なデータによるフィードバックさえあれば、マーケット変動に対する説明は自力でできるという自負があるように見える。
2022年のマーケット変動は、米国株式と米国債券が揃って2ケタのマイナスパフォーマンスになるという、「逃げ場がない」といわれた厳しい環境になった。2008年の「リーマン・ショック」を経験した世代は、現在は30代半ば以降になっている。30代以下の若手販売員の多くは、「100年に1度」といわれた「リーマン・ショック」を経験していないことになる。アンケートの結果から読み取れるのは、過去10年以上にわたって続いてきた株式投資優位の運用環境が急変してしまったことに対する若手の戸惑いではないだろうか。ベテランになると2000年の「ITバブル」とその崩壊、そして、「リーマン・ショック」、さらには、2020年の「コロナ・ショック」と過去20年余りに起こった大きな市場変動の波を経験している。運用商品の説明能力の向上には、経験が必要ということだろう。
運用会社のサポート力強化には一定評価一方、「研修・セミナー(対面・オンライン)の質が高い」は若手が21年の61.1%から22年は67.2%、ベテランが21年の67.1%から22年は70.8%。同様に「販売用資料が優れている」は、若手が58.8%から63.2%、ベテランは54.0%から60.0%、「Webでの情報発信に優れている」は若手が33.6%から39.2%、ベテランが32.9%から35.7%など、運用会社が努めてきたサポート力の向上についての努力は、販売会社の評価向上という結果に結びついているように考えられる。販売会社の間では対面の販売と同時に、オンラインによる投信販売の強化は課題であり、販売用資料やそれらを活用したWebでの情報発信について運用会社のサポートが得られることは好都合だろう。
今回の調査では運用会社のサポートについて概ね評価が上がったものの「研修・セミナーのラインアップが幅広し」という項目のみは、若手・ベテランの別なく評価ポイントを下げた。特に、ベテランの回答は、21年の30.4%が22年には24.9%に落ちた。これは、販売会社の販売姿勢が「ゴールベース・アプローチ」(運用目的に適った運用アドバイスの提供)に集約されつつある中、それ以外のサポートは必要ないというシグナルなのか、それともセミナー等のラインアップが豊富な大手運用会社への評価が下がっているということなのか、今回の結果だけでは判然としない。今後の傾向の変化に注目していきたい。
Finasee編集部
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