そろそろ外国株式への配分、もう少し増やしてみては?
Finasee / 2023年2月21日 11時0分
Finasee(フィナシー)
前回は、長く付き合う商品だからこそ抑えておきたい投資信託。その運用方法から商品性について調べてみました(「アクティブ? インデックス? あなたの資産形成を託せる投資信託を選ぶヒント」)。インデックスファンドの良さが際立つ内容となりました。
自分が投資しているiDeCoでは、吟味したアクティブファンドに9割ほど投資をしているので、残念な現状を実感いたしました。
そこで今回は、投資する地域について考えてみたいと思います。どこに投資するかで大きく結果は変わり、特に”株式”への投資では大事になってきます。下記の表は、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が公表している各資産の期待リターンです。
過去のリターンも大事ですが、過去のリターンは約束されたものではないので、期待されるリターンから考えることも大事です。ちなみに下段は、賃金の上昇率が考慮されたリターンになります。長い目で見ると、預金や債券(外国も含む)よりも、株式の上昇率(インフレも考慮する場合)が高くなっています。株式への投資の大事さがわかる表かと思っております。
この表を見て、債券などへの投資は不要とするのは早とちりです。この表に出ていませんが、リスクを抑えるための分散効果はしっかりと作用すると考えられていますし、賃金の上昇を考慮する前のリターンでは、全ての資産はプランのリターンです。どちらにしても、株式のリターンは、リスクはありますが、魅力あるリターンが期待されています。
実際に投資している確定拠出年金のデータは?2022年3月時点のデータが、企業年金連合会から出ていましたので、まずはそこからみなさんのデータを見てみたいと思います。
株式の割合を知りたかったのですが、元本確保型が多いので参考になりにくいですね。しかし、日本株式と外国株式の割合だけを見てみると、日本株式が約45%、外国株式が約55%の割合となっています。
実際に投資している投資家全体では、日本株へ30%それではさらに、投資家全体のデータである公募投信を見てみます。日本の投信の残高は約140兆円あります。140兆円の中にはETF(ほぼ日本株)も含まれています。ETFも投資信託なのですが、機関投資家*1が多く投資しており、規模も60兆円もあるので省いています。
*1 機関投資家とは、保険会社、信託銀行、銀行や年金基金など株式や債券で運用を行う大口投資家のこと言います。
表は、投資信託協会が公表しているデータから、ETFを省いたデータになります。日本株式が約30%、外国株式が約70%の割合となっています。確定拠出年金よりも外国株式への投資は進んでいるようです。日本株式への投資の場合、個別株で購入している方も多いと思いますので、実際はもう少し投資家全体の日本株式への割合は多いと思っています。
世界の株式時価総額を基準に見てみよう世界に分散投資する考え方はいくつかあるのですが、賢い方法の1つに平均(ベンチマーク)に連動する投資があります。どんな平均かと言いますと、株式の時価総額を考慮した平均です。
時価総額が大きい企業は、色々な理由が考えられますが、評価されている優良企業と言えますので、時価総額を基準にすると常に良い企業に投資できる環境と言っていいと思います。
それでは世界の株式市場の割合を確認します。FTSE Global All Cap Index(FTSEグローバル・オールキャップ・インデックス)という指数があります。これは、全世界の株式市場に連動する指数になります。これによりますと、日本は規模としてはアメリカに次いで世界2位なのですが、全世界の市場に対する割合は6.3%(2022年12月31日現在)しかないようです。
出所:VT Vanguard Total World Stock ETF https://investor.vanguard.com/investment-products/etfs/profile/vt より作成ちなみに新興国は 10.4% 残りが先進国になります。整理しますと、先進国(日本を除く)が約84%、新興国が10%、日本が6% になります。
株式市場も大事だが、経済(GDP)の規模を見てみよう先ほどは株式の規模を参考にしましたが、次は経済の規模(GDP)に注目してみたいと思います。
基本的には、景気(企業の業績)が良いと、株価も評価されるので、経済の規模、GDPに合わせて投資するという考え方も1つです。2000年からのGDPの推移を世界銀行が発表しているデータを元にグラフ化してみました。
世界のGDPは2000年では約33兆ドルでしたが、2021年には96兆ドルと、約20年で3倍近く伸びています。一方で、日本のGDPは、世界の3位ではありますが約5%となっています。
また、先進国と新興国の割合を見てみますと、先進国が55%、新興国が45%、経済面では新興国の割合が半分を占める成長を示しています。
世界への投資とホームアセットバイアスみなさんの投資状況と、日本が置かれている状況(時価総額、GDP)の差を見てみました。必ずしも世界へ投資する割合を増やすことが正しいのではありませんが、相談者に世界に投資できない理由(ホームアセットバイアス*2)を聞いてみると主に下記の3つがありました。
*2 ホームアセットバイアスとは、世界に分散投資しようとしているのに、自国への配分が海外資産への配分比率を常に上回る現象をいいます。
■為替リスク
ここ最近、少し行き過ぎた感もあった円安で為替を意識された方も多いのではないでしょうか。本当は円安になっても外国へ投資していれば恩恵を受けるわけですが、為替にダイレクトに影響する商品(外国株式や外国債券、外貨建ての保険)に投資をしていなければ、そもそも最初から為替のことを意識しないで済みます。ですので、損を避けるために外国への投資を減らしがちになります。
■世界より日本への親近感・安心感
世界より自分の国の方が知っているので当たり前なのですが、人は知らないものよりも知っているものに投資しがちです。本来は感情などではなく、これまでのパフォーマンスや価値に投資するのが賢い方法と言えます。
■情報量の差や情報取集の手間
当たり前ですが、日本を知るのと、世界を知るのでは情報を得るのに差はあります。「企業に投資する」「海外でビジネスをする」のであれば、情報の差は致命的なものになりますが、iDeCoや企業型DCでは、私たちは投資信託などを使ってお任せで投資をします。ですので、あまり気にしなくて良いのですが、どうしても「わかって投資したくなる」心理があります。
私の場合、投資信託だけで見ると世界株式への投資割合が多くなっていますが、全体で見ると、日本株式への投資割合は比較的高くなっています。
その理由は、個別企業に投資しているからです。個々の企業だけをみると、日本企業の中にも期待できる企業があるので、その期待度から多く投資をしています。ちなみに昨年はマイナスでしたので、まったくお恥ずかしい限りです。
まだまだ外国への投資割合が低いのですが、投資信託という良いツール・商品がそろって来ています。冒頭に紹介したGPIFの期待リターンを見てもわかるように、外国株式の方が期待度は高くなっています。
組み入れる割合に正解はありませんが、これまで外国株式に投資していなかった人は特に、外国株式の組み入れをぜひ検討してみてください。
FPかえる(尾上堅視)/ファイナンシャルプランナー
2005年個人投資家として日本株式への直接投資や投資信託を用いた資産形成をスタート。その後、証券会社や運用会社などへ取材を行うライターとして活動し、2010年家計の総合相談センターの相談員(FP)となり現在に至る。個人投資家の金融リテラシーの向上、お金と仲良くおつきあいする方法を広く伝えるため活動中。
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