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「老後に不労所得」目指すなら…絶対知っておきたい“配当金ねらい”の投資に潜むリスク

Finasee / 2023年2月20日 17時0分

「老後に不労所得」目指すなら…絶対知っておきたい“配当金ねらい”の投資に潜むリスク

Finasee(フィナシー)

三井住友トラスト・アセットマネジメントが投資家に向けて定期的に発信している「投資INSIDE-OUT」のVol.232では、最近注目が集まっている銀行株に対する見方を提示しています。

金融緩和政策の見直しで、銀行株の株価が上昇

銀行株はこのところ株価上昇が目立ってきました。あるアクティブ型投信を設定・運用している投資信託は、銀行株の組入比率を10%にまで引き上げてきています。

理由は昨年12月20日に行われた金融政策決定会合で、金融緩和政策の見直しを決定したからです。

具体的には、10年物国債利回り(長期金利)の誘導水準に対する振れ幅を、上下0.25%にしていたのを、上下0.50%に拡大するという内容でした。その結果、市場では日銀が長期金利の上昇を容認したものと捉え、長期金利に上昇圧力がかかったのです。

かつて消滅した金利は、世界的に復活してきている

銀行株といえば、割安銘柄の代表格です。PBRでみると1.0倍を大幅に下回っている銘柄も少なくありません。実際、2007年のサブプライムショック、2008年のリーマンショックを経て大きく値下がりした株価は、その後も大きく回復していないのです。

メガバンク3行の株価を見ても、三菱UFJフィナンシャルグループの株価は半値を回復していますが、三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループの株価は、半値を大きく下回っています。

ここまで銀行株が売られた理由の1つは、サブプライムショックとリーマンショックを機に、特に先進国を中心にして金利が消滅したからです。米国やユーロ圏、そして日本は、政策金利を限りなく0%まで引き下げるどころか、時によってはマイナス金利にまで低下しました。

銀行の主要業務は「利ざや」を稼ぐことですから、金利が無くなれば当然収益力も低下します。その結果として、将来の収益力に対して期待感が薄らいだ銀行株が売られたというわけです。つまり、昨年末から日本の銀行株が買われているのは、徐々に金利が上昇してきたからだと言えます。

世界全体で見ても、すでに海外では、米国をはじめ、ユーロ圏でも急激なインフレへの対抗措置として、連続した政策金利の引上げが行われている最中です。世界的に再び金利が生まれてきたことで、銀行の収益拡大への期待が高まり、銀行株に投資する動きが強まっているのです。

 

銀行の収益拡大へ期待も、成長性には疑問

とはいえ、長期的な視点で考えた時、果たして銀行セクターの成長性が今後期待できるのか、という点が気になります。

そう考える理由の1つは、現在の日本国内が、マクロ視点で見ると個人も企業も、「貯蓄超過」の状態にあることです。貯蓄超過とはお金が余っていることを意味します。

もちろん、「うちの家計は火の車で、お金なんてどこにも余っていない」という声もあるでしょう。当然、個人差はあります。個別で見れば人によってお金の偏在はあるものの、全体的に見れば個人セクターも法人セクターも、お金が余っているのが現状です。

お金が余っていれば、わざわざ借金をする必要はありません。個人が少し高価なものを買うにしても、企業が設備投資をするにしても、自己資金で賄えます。つまり銀行の貸出ニーズは、現時点でかなり低下しているのです。そして貸出ニーズが無ければ、たとえ金利が上昇したとしても、それを活かして収益を改善することは困難だと思われます。

また、銀行セクターの成長性へ疑問を覚えるもう一つの理由として、日本国内においては「オーバーバンキング」による過当競争が収益力を削ぐ要因のひとつになっていることがあります。

何しろ日本には、全国に店舗網を持つメガバンクに加え、地方銀行が62行、第二地方銀行が37行もあり、加えて信用金庫が254金庫、信用組合が145組合あります。その他にも、ゆうちょ銀行や農協などもあり、これらすべてで預貯金を通じてお金を集め、数少ない貸出ニーズの取り込みにしのぎを削っているのです。

少なくとも、国際業務を展開しているメガバンクは海外に活路を見出すことができるでしょう。ですが、基本的に国内マーケットのみ相手にしている地方銀行や信金、信組の場合、これから日本の人口が減少していくことも考えると、競争は一段と厳しくなるものと思われます。

このように、長期的な視点で考えると、「果たして銀行株は買いなのかどうか」という点には、いささか疑問が生じます。株価は基本的に企業業績の成長に連動して決まりますから、その点でもあまり投資妙味というものはありません。

銀行株の配当利回りが継続なら「老後資金」の課題も解決か

唯一、銀行に投資する意味があるとしたら、配当利回りを狙う場合でしょう。

2月10日時点の株価で計算した配当利回りは、あおぞら銀行がトップで5.83%です。仮に配当利回りが5.83%もある状態が続けば、「老後2000万円問題」は解決します。

老後2000万円問題とは、夫65歳、妻60歳の無職世帯が30年間、夫婦とも健康に生活する前提のもと、平均的な実収入額が20万9198円、消費支出と非消費支出の合計額が26万3718円とすると、差額の5万4520円が毎月不足するため、年間で65万4240円、30年間で1962万7200円(約2000万円)が不足するという話です。

これは金融審議会の市場ワーキング・グループが作成した報告書によって、世間に一気に広がったわけですが、この時は「2000万円なんて大金、貯蓄できるはずがないだろう!」といった声ばかりクローズアップされ、いささか感情的な報道が目立ちました。

そもそも、月5万4515円が不足するからといって、わざわざその30年分に相当する約2000万円を目標に貯蓄を進めようとするのは、従来の日本人にありがちな資産形成の考え方です。仮に運用できるとしたら、それだけの資金は必要なくなります。

例えば「年5%の配当利回りで、年間65万4180円の配当金を得るのに必要な投資元本は、いくらか」を考えてみましょう。この場合、投資元本を計算するためには、1年で受け取りたい配当金額である65万4180円を、5%の配当利回りで割り戻せばいいのです。計算式は次の通りです。

65万4180円÷5%=1308万3600円

もし年4%の配当利回りなら、次のようになるでしょう。

65万4180円÷4%=1635万4500円

つまり、想定する配当利回りを年4%まで下げたとしても、老後必要なお金は2000万円ではなく1635万4500円で済むのです。

***
 

この方法の良いところは、配当利回りがほぼ変わらなければ、投資した元本を取り崩すことなく継続して同じ額の配当金を受け取れる点でしょう。

もし2000万円を貯めたとして、それを取り崩しながら月々の生活費にあてる場合、30年が経過した時点で資産はゼロになってしまいます。また、30年よりも長生きしてしまったら、今度は資金不足に陥るリスクが高まります。

このように、2000万円というストックを確保して徐々に取り崩す方法だと、どこかで必ず資金はゼロになりますが、キャッシュフローで資金不足を賄えれば、元本を減らさずに済むのです。その代わり、投資した企業が倒産する、もしくは他の企業に吸収されるといったリスクは必ず理解しておく必要があります。

その点を考慮に入れられるのであれば、配当利回りの高い銀行株に投資するというのは、老後資金を賄うひとつの方法だと考えられます。

Finasee編集部

金融事情・現場に精通するスタッフ陣が、目に見えない「金融」を見える化し、わかりやすく伝える記事を発信します。

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