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出遅れた日本のEVは変われるか? トヨタ社長交代で透けるクルマの未来

Finasee / 2023年2月20日 19時0分

出遅れた日本のEVは変われるか? トヨタ社長交代で透けるクルマの未来

Finasee(フィナシー)

EVの現在地はどこなのかーー。温暖化対策を背景に、2020年10月に菅義偉首相(当時)は2050年までに日本のカーボンニュートラルを目指すことを宣言。それを機に国内自動車市場でも電気自動車(EV)熱が高まった。一方で、国内の自動車メーカーで構成される自動車工業会(自工会)は、EV一辺倒がカーボンニュートラルへの唯一の解決策ではないとする方針を示した。菅前首相の宣言から2年以上が経った今、目に見える変化はあったのか。国内外のEVの現在地を探る。

日本でもEVの販売台数は増加傾向に

まずは日本のEV市場を振り返る。日本自動車販売協会連合会(自販連)と全国軽自動車協会連合会(全軽自協)によると22年のEV(乗用車)の国内販売台数は5万8813台で、21年の2倍以上となり、乗用車全体に占める割合は1.7%で初めて1%を超えた。軽自動車の規格を超える大きさの自動車(登録車)の販売台数は3万1592台と前年比で1.5倍となった。軽自動車は、同49倍の2万7221台と一気に上昇した。

国内メーカーでは、22年6月に発売した日産の軽EV「サクラ」が22年暦年で2万1887台を販売し、軽自動車の車名別ランキングで15位に入った。同じく日産のEV「リーフ」は1万2732台を販売し、前年の販売台数を上回った。三菱自動車の軽EV「eKクロスEV」なども販売台数増を牽引した。

海外メーカー車(輸入車)もEVのラインナップを増やし販売台数を伸ばしている。輸入車の21年のEV販売台数は8610台に対して、22年は1万4341台で1.7倍増となった。全輸入車に占めるEVの割合は5.9%となり、国産車よりEV化が進んでいる結果となった。さらに1月31日には、中国のEV大手の比亜迪(BYD)が日本で乗用車EVの販売を開始した。

参考までに22年の登録車(軽自動車の規格を超える大きさの自動車)の販売構成比・販売台数(乗用車)をみると、ともに大半を占めているのはハイブリッド車(HV)とエンジン車だと分かる。HVの全体に占める販売構成比は前年比6.2%増の49.0%(販売台数は108万9077台)、ガソリン車は同7.0%減の42.3%(販売台数は93万8750台)であった。ガソリン車とHVが入れ替わった形となったが、合わせて90%以上となった。

中国は躍進、欧米も高い伸び。進む海外のEV化比率

では海外でのEVの販売台数はどうか。最大のEV市場である中国について、中国汽車工業協会によると2022年のEVは同81.6%増の536万5000台だった。EVだけで日本全体の22年新車販売台数を上回る規模だった。メーカー別では、BYDが販売台数を大きく伸ばすなど、中国メーカーの躍進が目立つ。中国内での新車販売に占めるEVのシェアは単純計算で約2割を占めた。

欧州自動車工業会(ACEA)が2月1日に発表した電気自動車(EV)の新車登録台数は21年比で28%増の約112万台だった。EVのシェアは12.1%と初めて1割を超えた。一方、ガソリン車やディーゼル車はシェアを落とし、環境意識の高い欧州ではEV化が進む。

米国内でも環境意識の高いカリフォルニア州のEV販売台数は、米カリフォルニア州新車ディーラー協会(CNCDA)によると、2022年の電気自動車(EV)の販売台数が21年比62%増の28万5199台となった。

グローバルでのEVの販売台数の上位は中国BYD、EV専業メーカーの米テスラや、米ゼネラルモーターズ(GM)グループ(中国合弁含む)、独フォルクスワーゲン(VW)グループなど米・欧・中勢が占め、日本メーカーの存在感は薄い。

トヨタも社長交代でEV重視に?

23年に入り、国内自動車業界での大きなニュースは、トヨタ自動車の社長交代だろう。4月1日付けで豊田章男社長が会長に、新社長として佐藤恒治執行役員が就任する。2月13日の佐藤次期社長の会見では、新体制が取り組む重点事業の3本柱の一つに「次世代BEVを起点とした事業改革」を掲げ、「BEVファーストの発想で、モノづくりから販売・サービスまで、事業のあり方を大きく変えていく必要がある」と説明。その変革をリードするのが、佐藤次期社長が長年関わってきた高級車ブランド「レクサス」としている。従来から掲げるHVや燃料電池車(FCV)を含めた「全方位」戦略も維持する考えだ。

22年の各主要市場のEV新車販売比率は、中国が2割、欧州が1割を占める一方で、日本国内は1.7%にとどまる。ガソリン車と比べ比較的開発が容易なEVは新規参入がしやすいと言われている。日本・欧州・米国だけでなく、中国国内を中心に販売台数を伸ばす中国メーカー、ベトナムの複合企業最大手の「ビングループ」の自動車子会社など新興メーカーも参入している。

日本メーカーは、徐々にEVのラインナップを増やしているが、主要国ではすでにEV化の第一波が訪れていると言っても過言ではないだろう。そんな中、ソニーグループとホンダが共同出資するEV新会社「ソニー・ホンダモビリティ」は25年に新型EVの受注を始める予定だ。先のトヨタ佐藤次期社長は会見で、電動化について「足元でのラインナップを拡充するとともに2026年を目標に、電池やプラットフォーム、クルマのつくり方など、すべてをBEV最適で考えた『次世代のBEV』をレクサスブランドで開発していく」と発言している。

EVはまだ黎明期である。EV製造時の電力問題や材料コスト、EVの充電網の拡充など様々な課題はあるが、それでも主要国ではEV化を推進していることが、販売台数や比率からも分かる。2、3年後に国内メーカーが満を持して発売するEVがその先5年後、10年後に世界を席巻している可能性も否定できないが、現時点ではEV化のスタートダッシュに出遅れた感があるのは否めない。

執筆/鎌田 正雄

合同会社ユニークアイズ代表。大手産業総合紙で記者経験を積み、主に自動車業界や中小企業など製造業の取材に従事し、2021年に独立。「ものづくりのまち」で有名な東京都大田区生まれで町工場の息子。はやりのポイ活で集めたポイントを原資に少額ながら超低リスク投資を始めた

Finasee編集部

金融事情・現場に精通するスタッフ陣が、目に見えない「金融」を見える化し、わかりやすく伝える記事を発信します。

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