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業界大手が免震ゴム不正データ改ざん…違法建築で入居者退去の大惨事【3月13日はどんな日?】

Finasee / 2023年3月13日 7時0分

業界大手が免震ゴム不正データ改ざん…違法建築で入居者退去の大惨事【3月13日はどんな日?】

Finasee(フィナシー)

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自宅が突然欠陥住宅に……。業界大手の不祥事によってそんな事件が起こりました。8年前の3月13日、TOYO TIRE(当時は東洋ゴム工業)は建築物などに用いる免震ゴムなどの性能評価で不正なデータ改ざんが行われ、基準に満たない製品が出荷された事実を認めます。

何が起こったのか、事件の経緯を振り返りましょう。

基準を満たさない免震ゴムで153棟が違法建築物に

まず、建築物の重要な部分に用いる材料は、国土交通省が定めた一定の基準を満たすものでなければいけません。TOYO TIREは国土交通省の認可を受け免震ゴムなどを製造、販売していました。しかし、その認可は技術的根拠のない性能評価に基づいた申請によって取得していたことが発覚します。

【建築基準法第37条「建築材料の品質」(抜粋)】
建築物の基礎、主要構造部その他安全上、防火上又は衛生上重要である政令で定める部分に使用する木材、鋼材、コンクリートその他の建築材料として国土交通大臣が定めるもの(以下この条において「指定建築材料」という。)は、次の各号のいずれかに該当するものでなければならない。

1.その品質が、指定建築材料ごとに国土交通大臣の指定する日本産業規格又は日本農林規格に適合するもの

2.前号に掲げるもののほか、指定建築材料ごとに国土交通大臣が定める安全上、防火上又は衛生上必要な品質に関する技術的基準に適合するものであることについて国土交通大臣の認定を受けたもの

出所:e-Gov法令検索 建築基準法

当該免震ゴムが納入された建築物のうち、153棟で国土交通省の認定に適合しないか適合性が判断できず、建築基準法に違反することとなりました(他に建築基準法の対象外となる重要文化財が1棟ある)。TOYO TIREはこの補償を行うため巨額の特別損失を計上し、業績は大きく悪化します。

【免震ゴム問題にかかる引当金および対策費と純利益】

TOYO TIRE 決算短信より著者作成

拡大画像表示

この時期は特に大企業の不祥事が相次ぎました。TOYO TIREと同じく品質データの改ざんが多く、日本の物づくりに対する信頼が大きく揺らいだと言わざるを得ません。

【主な大企業の不祥事(2015年~2017年)】

 

なお、TOYO TIREによれば当該免震ゴムの交換や改修はほぼ完了しています。早期に全棟の対応を表明したためか、株価への影響も限定的でした。不祥事は起こさないことが望ましいですが、その後の対応の大切さが分かるケースといえるかもしれません。

【TOYO TIREの株価(2015年)】

Investing.comより著者作成

拡大画像表示

【TOYO TIREの業績】

※2023年12月期(予想)は、2022年12月期時点における同社の予想

出所:TOYO TIRE 2022年12月期決算短信

マンション建て替えに必要な決議

報道によると、TOYO TIREは不正な免震ゴムを納入した福岡の賃貸マンション1棟を2021年に取得し、解体を進めるようです。当該マンションは全室が賃貸のようで、入居者は借地借家法に基づいて退去が求められると考えられます。

では分譲マンションの建て替えはどのように行われるのでしょうか。複数のオーナーが区分所有するため、誰かの一存で断行するわけにはいきません。かといって、区分所有者の全員の賛成を待っていては建て替えが進まず、安全性が懸念されるマンションなどが放置されるケースが懸念されます。

そこで、分譲マンションといった区分所有建築物は「建て替え決議」が採られれば建て替えが可能だと認められています。これは、原則として区分所有者および議決権の5分の4以上の賛成があればマンションの建て替えができる仕組みのことです。

【区分所有法第62条「建替え決議」(一部抜粋)】
集会においては、区分所有者及び議決権の各5分の4以上の多数で、建物を取り壊し、かつ、当該建物の敷地若しくはその一部の土地又は当該建物の敷地の全部若しくは一部を含む土地に新たに建物を建築する旨の決議……をすることができる。

出所:e-Gov法令検索 区分所有法

建て替え決議を採るための集会は少なくとも2カ月前には開催が通知される必要があり、集会の1カ月前までには事前説明会を行わなければならないと定められています。また建て替え決議の採決後は、当該建て替えの賛成者は対価を支払うことで反対者にその権利を譲り渡すよう請求することが可能です。

この仕組みにより、分譲マンションといった区分所有建築物の建て替えが突然決定される事態が回避できるほか、反対者の権利も保護しつつ建て替えを円滑に進めることが期待されます。

このように、分譲マンションの建て替えは民主的なプロセスを経て実施されます。マンションの購入を自宅用や投資用に検討している人は、頭に入れておいた方がよいかもしれません。

執筆/若山卓也(わかやまFPサービス)

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。

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