ガソリン価格から世界情勢まで…知らないのは損!? 「金利」を見るメリット
Finasee / 2023年3月10日 11時0分
Finasee(フィナシー)
物価の上昇、ガソリンの値段変動……。「金利の変動による日常の変化」にはどんなものがあるのか説明できますか? 大きな流れはわかっていても、“からくり”をしっかりと説明するのに言葉が詰まる人は少なくないはずです。
今だからこそ金利について知っておきたい、そう思いつつもなかなか踏み出せない! そんな声に話題の書籍『図解 身近な「金利」と「お金」のことが3時間でわかる本』では、金利の役割や基礎について対話形式でかみくだいて解説。今回は特別に、第2章「金利入門」の一部を公開します。(全3回)
※本稿は角川総一著『図解 身近な「金利」と「お金」のことが3時間でわかる本』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。
金利がわかると「経済視力」が上がる!?――金利を見る人・見ない人、その差は?
あなたは金利を意識したことがあるかな? こういえば「預金金利とか住宅ローン金利が何%かちゃんと見てるよ」というかもしれない。しかし、ここでいう「金利を意識する」っていうのはちょっと違う。
経済社会で金利が演じている役割をきちんと理解しているとか、家計をうまく回していくために金利っていう道具をどんな風に使うかってことをいいたいんだ。
――金利が演じている役割ですか?
そう。たとえばどんなときに金利が上がるのか、とか、金利が上がったらどうなるのか、って話だ。つまり金利を巡る因果関係だね。これがわかれば、大げさにいうと将来が見えてくる。世の中の動きを見る視界がぐっと広がるんだよね。私は“経済視力が上がる”ってよくいうんだけど、モノゴトがもっとクリアに見えてくる。
――どういうことですか?
たとえば2021年の2~3月のことだけど、アメリカの金利が一段アップした。これはあちこちでニュースになった。金利の基本を勉強していた人だと、この見出しを見ただけで、「あ、株は一時的に下がるな」ってわかる。アメリカだけではなく日本の株もね。また「金の価格も下落するな」って想像できる。
さらには「これは、アメリカで物価がだいぶ上がってきているんだな」ってイメージできる。また「しばらくはドル高・円安傾向かな」って予想できる。「そうすればガソリンの値段も上がるかもしれないな」ってなるんだ。こんなイメージが次から次へと湧いてくるんだよ。
そしてこの手の予想は7割方は当たる。つまり、経済社会を動かしている物語がある程度見通せるんだよね。経済がどんな風に動いているかを知る方法はいくつもあるけれど、その中でも金利は格好のとっかかりを与えてくれるんだ。
金利への理解はそのまま日常生活に役立つ――では、金利がわかれば生活で役立つっていうのはどういうことですか?
そうだね。逆に、知らないとどんな目に遭うかを考えてみようか。金利に無知だったばかりに損することは少なくない。20万円のカードローンを年14%で借りたとき、月々の返済額次第ではすべて返し終えるのに3年も5年もかかり、利息だけでも20万円を超えることがある。そして返せなくなる。これは金利の基本になる複利の力を知らなかったためだ。
あるいは、10年以上前に借りた住宅ローンを返して、新しく低い金利に借り換えれば、月々の支払いが1万円以上安くなる。なのにそれを知らないまま無駄に多く支払っているなんて例も少なくない。
世界全体の動きを読むにしても、個人のお金生活を豊かにするという身近な分野でも、金利の初歩がわかり、その考え方を生活に取り入れると、もう少し世界が、そして家計全体がクリアに見通せる。
――金利がわからないと損しちゃうんですね。金利っていろいろなものに影響しているから、基礎は学んでおいた方がいいんですね。
金利が変われば世界景気は一変する実は、金利がきっかけになって歴史がひっくり返った例は少なくない。たとえばね、日本はもう30年以上デフレから抜けられないんだけど、なぜだと思う?
――人口が減る中で高齢者が増え、働ける人が減ってきているからですか?
それだけじゃない。実はデフレのきっかけは、日銀の金利引き上げだったんだ。1989年に日銀が金利をドンドン引き上げたんで、株価は暴落、ついで地価も急速に下がった。バブルの崩壊だね。
一方アメリカでは、2008年にリーマンショックがおき、その後数年間世界経済は奈落の底に落ちた。今3万円の日経平均なんか7000円台まで下がったんだ。このときも、アメリカが金利をどんどん上げたため不動産価格が急落したのがきっかけだった。
あるいは2021年2~3月には、アメリカで物価が急に上がったことで、金利が引き上げられるだろうとの憶測が広がるとともに、NY株は連日のように暴落を繰り返した。また金の価格も急落した。
金利が日本、世界経済で果たしてきた役割は、多くの人が思っているよりはるかに強力なんだ。経済の根幹を揺さぶるほどの大きなエネルギーを持っている。だから、金利の基礎は知っておいて絶対損はない。
出所:IMF、米FRBグラフを見れば、金利が景気ととても密接な関係を持っていることがわかるよ。これはアメリカの例だけど、米国金利が上がると世界全体の景気が悪化するのが常なんだ。ドル高が進むため新興国の通貨が売られて下がり、これらの国々の物価が急激に上がって景気を冷やすのが原因の1つだ。
それと、やはりドル高で世界のお金がドルに集まり、それ以外の国で使えるお金が減って景気が悪くなるって面もある。そして、なにより金利は景気よりも先に動くことが多いっていうことが大事なんだ。ということは金利を見ていれば、景気が先読みできる。
なぜ「今」金利が大切なのか?実は、この本の執筆中の2021年、世界中で10年以上続いた超低金利も終焉を告げようとしている。さっきも話したけど、2020年末から特にアメリカで物価が急激に上がり始めた。物価が上がれば金利が上がるのは基本だ。すでに2021年半ば以降はブラジル、次いでロシア、メキシコ、イギリス、ニュージーランド等はさっさと金利を上げ始めている。
金利が上がればどうなるかは後ほど詳しく話すけど、世界的には10年ぶりに、日本だと20数年ぶりに金利が上がる可能性が高い。そのとき何が起こるかを今知っておいて絶対損はない。
●第2回(実は経済を発展させる立役者―「金利って何?」にズバリ回答)では、お金の貸し借りに伴うさまざまな金利の仕組みについて解説します。
『図解 身近な「金利」と「お金」のことが3時間でわかる本』角川総一 著
発行所 明日香出版社
定価 1,760円(税込)
角川 総一/金融教育、金融評論家
1949年大阪生まれ。証券関係専門誌を経て、1985年、株式会社金融データシステムを設立し代表取締役に就任。わが国初の投信データベースを管理・運営。 マクロ経済から個別金融商品までにわたる幅広い分野をカバーするスペシャリストとして、各種研修、講演、テレビ解説の他、FP等通信教育講座の講師としても活躍。 主な著書に、「為替が動くとどうなるか」(明日香出版社)、「金融データに強くなる投資スキルアップ講座」(日本経済新聞社)、「日本経済新聞の歩き方」(ビジネス教育出版社)等。
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