若者の“銀行窓口”離れ…「株式もネットで購入」が当たり前になったワケ
Finasee / 2023年2月27日 17時0分
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Finasee(フィナシー)
日本証券業協会が昨年行った、全国の個人投資家5000人を対象にしたインターネット調査の結果を、「個人投資家の証券投資に関する意識調査報告書2022年」として公表しました。
回答者の年齢層は、20~30代が17.5%、40代が18.8%、50代が15.6%、60~64歳が13.3%、65~69歳が10.1%、70歳以上が24.7%です。
また年収別の構成比は、300万円未満が42.7%、300万円~500万円未満が26.6%、500万円~700万円未満が13.8%、700万円~1000万円未満が10.7%、1000万円~1200万円未満が2.4%、1200万円~1500万円未満が1.6%、1500万円~2000万円未満が1.0%、2000万円以上が1.1%です。
そして金融資産保有額は、10万円未満が3.9%、10万円~50万円未満が4.3%、50万円~100万円未満が6.1%、100万円~300万円未満が13.3%、300万円~500万円未満が12.0%、500万円~1000万円未満が16.0%、1000万円~3000万円未満が25.3%、3000万円~5000万円未満が9.3%、5000万円以上が9.8%です。
年代別に見る個人投資家の傾向上記の属性を持った5000人を対象にしたインターネット調査について、気になる項目を挙げて見ていきましょう。
保有する株式の種類まず保有株式の種類を、前回行われた2021年調査と比較すると、国内上場株は96.7%から94.9%へと低下する一方、海外上場株は9.8%から14.8%へと上昇しました。
この結果から、約95%と大半が国内上場株式を保有しているものの、同時に海外上場株式に対する関心が高まっていることがうかがえます。国別の投資先までは不明ですが、ここ数年の傾向から考えると、恐らく米国株式が中心ではないかと思われます。
投資のスタンス株式の投資方針は、どの年齢層でも「概ね長期投資だが、ある程度値上がり益があれば売却する」の回答比が最も高く、全体でも50.5%がそのように答えています。ちなみに、この回答比が最も高い年齢層は、20代~30代の55.3%でした。
ただし、この回答比の高さは、投資家の大半が長期投資を指向しているとは言えないことを意味しています。なぜなら、「ある程度値上がり益があれば売却する」という条件が付されているからです。
「ある程度値上がり益があれば売却する」という条件の「ある程度」がどの程度を指すのかは、この調査では示されていません。しかし、例として「投資して1週間後に満足できる値上がり益が得られたら売却する」というふうに受け取ることも可能です。
さらに、「値上がり益重視であり、短期間に売却する」の全体の回答比である11.4%を加えると、全体で61.9%もの人が、値上がり益重視の投資スタンスを取っています。
つまり、これらの人たちは、株価の値動き次第では「長期投資を前提にしていながらも、短期間で売却する可能性もある」投資家であると考えられます。
それとは逆に、本当の意味での長期投資をしているのは、「配当・分配金・利子を重視している」と答えた人だと言えるでしょう。この回答比は全体で21.0%でした。
この手の長期投資のスタイルは、値上がり益よりもキャッシュフロー重視であり、配当政策に変化がない限り保有し続けるものと考えられます。
また、「配当・分配金・利子を重視している」と答えた人を年齢層別にみると、60~64歳までの回答比は20%を下回っているのですが、65~69歳が25.5%、70歳以上が24.2%というように、年齢層が上がるほど配当や分配金を重視していることが分かります。
仮に株式への投資金額が1000万円で、ポートフォリオ全体で年4%の配当利回りを実現すれば、それだけで年40万円の配当金が確保できます。公的年金+配当金で、毎月の生活水準をある程度底上げできるでしょう。
株式の平均保有期間ちなみに株式の平均保有期間を見ると、年齢層が上がるほど10年以上の保有比率が上がる反面、20代~30代は83.6%が5年未満でした。
企業が技術開発などで付加価値を高めるには、5年、10年単位の時間を必要としますが、株式の平均保有期間が5年未満では、付加価値が高まる前に売却してしまうことになります。
年齢が若いからこそ、長期投資を前提に企業の付加価値向上を資産価値に反映させるチャンスに恵まれているとも言えます。ですので、特に若年層投資家の短期志向については、長期投資のメリットを十分に享受するための意識変革が必要でしょう。
主な注文方法今回の調査報告は、主に個人投資家の意識を調査したものではありますが、証券会社を中心にして金融機関が考えるべき点もあります。
株式保有者に主な注文方法を聞くと、「証券会社や銀行等の店頭(店舗への電話注文、営業員が訪問しての注文を含む)」の回答比がかなり低いことが分かります。
60~64歳が20.7%、65~69歳が19.1%、70歳以上であれば26.2%と、現時点では年齢層が上がるほど金融機関の店頭での注文が認められますが、問題となるのは若い世代です。
20代~30代で金融機関の店頭に注文を出している人の比率は、たったの3.7%しかいません。40代でも5.3%、50代ですら10.4%です。
この年齢層の人たちが将来、60代、70代になった時、果たして金融機関の店頭で注文を出すようになるかと言われれば、その答えは恐らく「ノー」でしょう。
対面型証券会社の「未来」どうなる?現時点で、日本全国に本支店を置いている金融機関は、まだ結構な数あります。しかし前出の注文方法に関する回答を見ると、果たして支店網をこのまま維持できるのかどうかは疑問です。
利用者がいないのに店舗を開き、顧客対応のためのスタッフを置いておくことは、業務効率の低下を招きます。
また、株式については早晩、売買委託手数料の無料化を推し進めるオンライン証券会社もあり、それが普及すれば、証券会社にとって株式の売買仲介は、少なくとも「飯のタネ」にはならなくなるでしょう。そうなると、特に証券会社の場合、店舗網を構えていることの意味が見いだせなくなります。
そして株式の売買委託手数料が大幅減になった時、それを投資信託の購入手数料ならびに信託報酬で賄えるかというと、これも疑問が生じる点です。
というのも、昨今のオンライン証券会社は、大半の投資信託の購入時手数料を無料にしているからです。しかも、扱っている投資信託の種類や本数も、かなり幅広いものです。
そうなると、店舗網を持つ証券会社は、ますます営業面で苦しくなっていくでしょう。支店を維持することすら難しい場合も考えられます。
オンライン証券会社が登場してから25年ほどが経ちましたが、店舗を持つ対面型証券会社は、店舗網とそこに属する人員をどう活用するべきか、真剣に考えなければならない時期に来たと言えそうです。
Finasee編集部
金融事情・現場に精通するスタッフ陣が、目に見えない「金融」を見える化し、わかりやすく伝える記事を発信します。
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