「ガバナンス」について若手は就労者の資質、ベテランは経営陣を評価
Finasee / 2023年3月2日 19時0分
Finasee(フィナシー)
運用会社のガバナンスについて、日本では多くの運用会社が大きなファイナンシャル・グループの子会社であるケースが多く、経営の独立性が保たれているか? ファイナンシャル・グループの一員であるために、ファンドの受益者が不利益を被ってはいないか? などが厳しくチェックされるようになってきている。金融リテール専門誌『Ma-Do』が実施した「運用会社ブランドインテグレーション評価2022」で、販売会社の担当者に運用会社のガバナンスについて聞いたところ、20代、30代の若手と40代以上のベテランの間で、ガバナンスを評価するポイントに差異があることが明らかになった。
「運用会社ブランドインテグレーション評価」は、投信販売会社が運用会社を評価する調査で、運用会社について「運用力」「商品開発力・企画力」「営業担当者・研修担当者の質」「サポート力」「ブランド力」「ガバナンス」の6つの軸で評価してもらい、得点順にランキングした。2022年調査は9月~10月にWEBで実施し、国内外の運用会社36社を評価の対象とし、310件の回答を得た。回答者の年齢構成は、20代と30代が合わせて40.3%、40代以上で59.7%だった。
若手は「ガバナンス」向上に役職員の努力を評価運用会社の「ガバナンス」に関して販売会社が評価するポイントは、若手とベテランの別なくトップは「受益者本位の商品組成や効率的な運用」(若手は22年の回答率が54.4%、ベテランは63.2%)だったが、2位以下の評価ポイントで若手とベテランの考え方が分かれている。ベテランは、2番目に高い評価を「経営陣の資産運用ビジネスに関する経験・理解」に置いている。この項目についてベテランは、21年は58.4%でトップの評価項目にしていたが、22年も59.5%と依然として高い評価を与えている。
一方、若手は「顧客利益を重視するために役職員を評価する環境」を22年は51.2%の回答率で2番目に重視する項目にしている。21年の回答率が49.5%で3番目の評価項目だったことから評価を上げている。
このような「ガバナンス」に関してベテランと若手で評価の軸にズレがあるのは、ベテランは、ガバナンスについては「経営者」の考え方が大きく影響するとの考え(ある意味で、現状追認型)があり、若手は「(自分たちを含む)現場の頑張りによって、より高い次元にガバナンスを押し上げることができる」(現場の改善力・改革力への期待)と考え、この差が表れているように感じられる。
若手の回答率が高かった「役職員を評価する環境」という回答には、「役職員の行動を的確に評価すれば、ガバナンスはより良くなる」という運用会社へのポジティブな評価目線が感じられる。
「ESG」はガバナンスの重要ポイント「ESGの観点からエンゲージメント活動に積極的」という項目では、若手の回答率が21年の35.9%から22年は29.6%に低下し、ベテランも21年の29.8%が22年は29.2%にやや低下した。これは、22年に金融庁がESGファンドについて「グリーン・ウォッシング(環境への好影響を謳いながら、その実態がない)」への警戒感を強めたことが強く影響したと考えられる。本来であれば、近年のESG投資ブームを反映して「ESG」や「エンゲージメント(投資先との建設的対話)」については、もっと関心が高まっても良い評価ポイントといえる。この項目に対して特に若手の評価が落ちていることは、運用会社は自戒すべきだろう。
また、「多様な人材の活用を推進している」というポイントもESGの観点で近年は注目度が増している項目だ。性別や国籍などを問わず能力のある人材に活躍の機会を与える企業は、投資先としても有望であり、同じように、運用会社や販売会社でも求められている企業の資質になっている。この項目の評価ポイントは高くはないが、若手が21年の13.7%から22年は23.2%に、ベテランも21年の18.0%が22年は22.7%に上昇している。
若手、ベテランの別なく働きやすい職場に対する評価は上昇しており、今後もガバナンスにおけるESGの視点は重要なポイントとして意識されるだろう。
Finasee編集部
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