電気代高騰で巨額赤字、相次ぐ倒産…東電と「新電力」の決定的な違い
Finasee / 2023年3月22日 7時0分
Finasee(フィナシー)
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エネルギー価格の高騰などを背景に、全国で電気代が上昇しています。2022年は電力会社で値上げが相次ぎ、12月の平均電気代は前年比で1.1~1.4倍程度に増加しました。
【電気代の推移(2人以上世帯)】
総務省統計局「家計調査」より著者作成拡大画像表示
電気代の上昇は、これまで低価格を武器に拡大した「新電力」でも起こっているようです。近年は新電力にとって厳しい環境が続いており、倒産が相次いでいます。2022年3月22日には、上場企業「ホープ」の新電力子会社も経営破綻しました。
親会社の赤字事業を承継し3カ月で破綻ホープは自治体向けに広告事業やメディア事業といったサービスを提供する企業です。2016年に当時のマザーズ市場に上場し、2018年には新電力事業を開始しました。2020年10月には、自治体が持つ施設に電力の供給などを行う「ホープエナジー」を設立するなど、次第にエネルギー事業に傾倒していきます。
しかし2020年12月から2021年1月にかけて、日本を記録的な寒波が襲いました。電気の需給が逼迫したことから、電力卸市場における取引価格も急騰します。新電力の多くはこの取引価格で電気を調達するため、財務が急激に悪化しました。ホープも2021年6月期に約69億円もの純損失を計上し、債務超過に転落します。
【2020年9月~2021年3月の電力卸価格(全時間帯のシステムプライスの平均値)】
日本卸電力取引所「取引情報:スポット市場・時間前市場」より著者作成拡大画像表示
ホープは債務を圧縮するため、巨額の赤字を計上したエネルギー事業を2021年12月にホープエナジーに承継させ、ホープ本体からエネルギー事業を切り離しました。そして2022年3月22日、ホープはホープエナジーの破産を申し立てます。破産時の負債総額は300億円にも上りました。
しかしホープエナジーを破産させてもなお、ホープにはホープエナジー株式の評価損失として約48.5億円の負債が残り、2022年3月末時点でも約56億円の債務超過となります。
新電力を破綻させる「インバランス料金」とはホープの経営が傾いた直接的な原因は「インバランス料金」です。これは電力の需給を一致させるために発生する費用のことをいいます。
電力は容易には貯蔵できないため、原則として発電量と消費量を一致させなければいけません。このため電力小売り業者と発電事業者は需要を予測して計画を立て、過不足が発生しないよう電気を作ります。
しかし、電力需要を完全に予測することはできません。従って、どうしても計画した発電量と実際の需要量に差異(=インバランス)が生じます。そこで、東京電力といった一般送配電事業者が最終的に電力の不足や余剰を解消し、その料金は電力小売り業者や発電事業者との間で事後的に清算する仕組みが作られました。この料金をインバランス料金といいます。
ホープを苦しめたのは、実際の需要が計画を上回る不足インバランスです。このとき、一般送配電事業者が代わりに電力を供給し、その費用は不足を発生させた電力小売り業者や発電事業者が補填しなければいけません。
上述したように2021年1月は寒波などから電力需要が急増したため不足インバランスが発生し、また算定のベースとなる市場価格も急騰していたことから、巨額な不足インバランス料金が発生しました。ホープでは約65億円もの不足インバランス料金が請求されています。
ホープはどうやって上場廃止を切り抜けたのか上場維持基準から、債務超過の企業は上場を維持できません。当初ホープは2022年6月末までに債務超過を解消しなければ上場廃止となるところでしたが、決算期を6月から3月に変更し、猶予期間を2023年3月末に延長することに成功します。
およそ9カ月間延命できたものの、債務超過の解消は絶望的かと思われていました。しかし、ホープに救世主が現れます。負債の大部分を構成していたホープエナジー株式を譲り受けてもよいとする人物が現れたのです。ホープは2022年9月、破産したホープエナジー株式を1株1円で全て譲渡し、当該株式で発生していた約48.5億円の負債を解消しました。これにより、ホープの超過債務の額は大きく減少します。
【ホープの純資産総額】
ホープ「決算短信」より著者作成拡大画像表示
さらに2022年12月、ホープは同じく自治体向けにサービスを提供する上場企業「チェンジ」と資本契約の締結に成功します。チェンジを引受先とした第三者割当増資で約5.7億円を調達する内容で、ホープは債務超過を解消できる見通しが立ちました。これを受け、ホープ株式も大きく値上がりしています。
【ホープの株価】
Investing.comより著者作成拡大画像表示
このように、子会社に対する破産の申し立てや決算期の変更といった荒業を駆使し、さらに出資者に恵まれたことでホープは上場を維持できることになりました。当面は大きく低下する収益力の向上が課題となるでしょう。今度はどのような方法で立て直すのか、その手腕が注目されます。
【ホープの業績】
※2022年3月期より決算期を変更している※2023年3月期(予想)は第3四半期時点における同社の予想
出所:ホープ 決算短信
執筆/若山卓也(わかやまFPサービス)
証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。
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