誰もが知る大手企業が“異例のトラブル”で破産…黒幕はオーナー実子【3月25日はどんな日?】
Finasee / 2023年3月25日 11時0分
Finasee(フィナシー)
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2022年3月25日、東京地裁は鶏卵大手「イセ食品」の会社更生手続き開始を決定しました。会社更生法の適用を申し立てたのはオーナーの実子だったことから、親子関係のひびを指摘する声も少なくありません。一体何が起こったのでしょうか。
「森のたまご」で知られる大手鶏卵業者が破綻イセ食品は1912年に創業された大手の鶏卵販売業者です。国内でいち早く鶏卵の大量供給体制を整えたことで業容が拡大し、2018年1月期では約471億円の売上高を計上していました。1990年から販売された「森のたまご(旧:杜のたまご)」は同社の看板商品となっています。
しかし新型コロナウイルスの拡大などで業績が悪化し、イセ食品は資金繰りに窮するようになりました。取引金融機関と交渉するも折り合わず、債権者などから会社更生法の適用を申し立てられます。
会社更生とは、裁判所が選任する管財人の下で事業の再建を図る手続きです。第三者からの申し立ては、一般に一定の債権を持つ金融機関などが行いますが、一定の議決権を持つ株主も申し立てることができます。そのうちの1社が、イセ食品の前会長の長男が経営する「ISEホールディングス」でした。一部のメディアは事業承継を狙ったと伝えていますが、真意は明らかになっていません。
イセ食品はスポンサーとしてSMBCキャピタル・パートナーズを迎え、同社からの出資を受けつつ再建を目指すとしています。
なぜ卵は値上がりしたの?イセ食品は業界トップクラスの供給量を誇っていただけに、破綻したことで一部では卵の値上がりを懸念する声も聞かれました。もっとも、イセ食品は当面の運営資金を賄うための融資契約を締結できたことから、同社の供給に大きな影響はないとみられています。
しかし、それでも2022年は卵価格が大きく上昇しました。2022年1月では1キログラムあたり約150円でしたが、2023年1月では約280円となっています(全農:東京Mサイズ)。
【鶏卵価格の推移(全農:東京Mサイズ)】
日本養鶏協会「鶏卵価格の年次別月別推移」より著者作成拡大画像表示
なぜ卵の値段は上がったのでしょうか。大きな理由と考えられるのが鳥インフルエンザです。2022年度は鳥インフルエンザが過去最悪の水準で発生しており、2023年2月20日までに約1478万羽が殺処分の対象となりました。「畜産統計」によると採卵鶏の数は約1億8000万羽(2022年2月時点)ですから、全体の約8%が失われたことになります。このため卵の供給が細り、価格の上昇を招いたと考えられます。
野村農林水産大臣は2023年2月に会見を行い、鳥インフルエンザの影響は半年程度続く見解を示しました。
(発生農場では殺処分の終了後、)鶏舎の消毒をして、そして3カ月待ってからヒナを導入していきます。様子を見ながら。実際ヒナが成鳥になって、親鳥になって卵を産み出すのは、3カ月の空舎期間とそれから3カ月の育成期間、6カ月しないと卵を産まないので、あと半年は待っていただかないとと思っているところです。
出所:農林水産大臣 野村農林水産大臣記者会見概要(2023年2月17日)
また飼料の高騰も、卵が値上がりした要因の1つです。養鶏用の飼料価格は近年上昇傾向にあり、特に2022年はウクライナ情勢に伴う穀物価格の高騰などから顕著に値上がりしました。この生産コストの増加が価格に転嫁され、卵が値上がりしたと考えられます。
【養鶏用配合飼料(バラ)の工場渡価格】
農林水産省「飼料月報」より著者作成拡大画像表示“価格の優等生”を支える国の補助とは
最近は価格の上昇が顕著な卵も、もともとは“価格の優等生”と呼ばれるほど値動きが安定していました。「消費者物価指数」によれば、食品全体は1970年比で約3.6倍に上昇していますが、鶏卵はおよそ1.7倍にとどまっています。1980年以降では大きな値上がりはほとんど見られません。
【消費者物価指数(1970年=100)】
総務省統計局「消費者物価指数」より著者作成拡大画像表示
卵が安い状況が長く続いている理由として、供給過多が指摘されることがあります。需要に対して多くの卵が供給されるために需給が緩み、値上がりしにくいとするものです。
その遠因とされるのが、生産者に対する手厚い公的な支援です。例えば代表的な「鶏卵生産者経営安定対策事業」では、卵が値崩れした際に補填や奨励金の交付を行います。これらは卵の安定供給に資することとなりますが、生産者同士の競争が進みません。従って、結果的に供給が多くなりやすい状況を作り出すことになります。
【主な鶏卵生産者経営安定対策事業】
栄養豊富な卵が安価で手に入ることは、好ましいと感じる人は多いでしょう。しかし、そのための公費投入は賛否が分かれるかもしれません。
執筆/若山卓也(わかやまFPサービス)
証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。
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