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「配当金」ねらった投資で“まさか”の損失も⁉ リスクを減らす方法とは

Finasee / 2023年3月2日 17時0分

「配当金」ねらった投資で“まさか”の損失も⁉ リスクを減らす方法とは

Finasee(フィナシー)

2月15日付、日本経済新聞朝刊のマーケット総合欄に掲載された記事で、「高配当株に資金流入」という記事が掲載されました。

同記事によると、「配当利回りの高い銘柄を抽出した『東証配当フォーカス100指数』は14日、2010年の算出開始以降の最高値をつけた」ということです。

東証配当フォーカス100指数とは?

「東証配当フォーカス100指数」という株価インデックスを、あまり耳にしたことのない人も多いのではないでしょうか。

日本の代表的な株価インデックスというと、「日経平均株価(日経225)」や「東証株価指数(TOPIX)」、「JPX日経インデックス400」、「日経株価指数300(日経300)」あたりは、株式情報を流しているサイトなどで目にする機会はあると思いますが、「東証配当フォーカス100指数」は、この手のサイトにもほとんど掲載されていません。

「東証配当フォーカス100指数」は、比較的新しい株価インデックスです。算出開始日は2010年3月で、同年2月26日を基準日として、この日の指数を1000ポイントとして算出されています。それが2023年2月14日時点では2136ポイントまで上昇しています。

2023年2月24日時点の「東証配当フォーカス100指数」の指数構成銘柄は、日本株89銘柄、J-REIT11銘柄の合計100銘柄です。

日本株はどのような銘柄が組み入れられているのかというと、商船三井(15.46%)、日本郵船(14.18%)、東芝(6.81%)、日本たばこ産業(6.72%)、日本製鉄(5.86%)、ソフトバンク(5.58%)、SBIホールディングス(5.11%)、日本カーボン(4.87%)、住友商事(4.86%)、住友林業(4.85%)で、以上が上位10銘柄になります。

ちなみに、上記の銘柄名の横にカッコで入れた数字が2023年2月24日時点の配当利回りになりますが、これを見ると特に船舶関連の高さが圧倒的です。

特に配当利回りが高かったのは商船三井で、株価は2月24日の終値時点で3620円でした。そして、2023年3月期決算の配当金額は、予想ベースで560円です。

その「高配当」は持続するのか――

恐らくこの配当利回りを見て、「それなら商船三井の株式を直接購入した方が良いのでは」と思った方もいらっしゃると思います。ただ、問題はこの高配当がいつまでも続くかどうかという点です。

同社のここ数年の配当金推移をさかのぼると、

2023年3月期・・・・・・560円(予想)
2022年3月期・・・・・・400円
2021年3月期・・・・・・50円
2020年3月期・・・・・・21.67円
2019年3月期・・・・・・15円
2018年3月期・・・・・・6.67円

というように推移してきました。

このように決算をさかのぼってみると、3桁の高配当を出したのは2023年3月期と2022年3月期のみです。

では、どうしてこれだけの高配当が実現したのかというと、一種のバブルが生じたからです。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で物流がひっ迫したことにより、船賃が大幅に値上がりしたのです。

外国航路海運における船舶の賃貸借料金をインデックス化した「バルチック・ドライ指数」の推移を見ると、2020年5月時点では500ポイント前後だったのが、2021年10月には5526ポイントまで上昇しています。

ざっと計算して、船賃が約10倍にもなったのです。このバブルともいうべき船賃の上昇を受けて、海運会社の業績が上振れした背景から、配当金が大幅に増配されました。したがって、もし商船三井の株式を配当利回り目的で投資するならば、この配当金額が持続的かどうかという点を考慮する必要があります。

まず船賃ですが、前出のバルチック・ドライ指数は低下傾向をたどり、2023年2月22日時点で674ポイントまで低下しています。つまり一時期の船賃バブルは終わったと見て良いでしょう。そうなると、気になるのが商船三井の今後の業績です。

商船三井の今後の業績

これは会社四季報の二期予想が参考になると思います。

最新の2023年1集(新春号)に掲載されている、2024年3月期決算予想は、減収減益です。ちなみに経常利益は2023年3月期予想の8000億円から4000億円に、純利益は7900億円から3900億円まで大幅に減る見通しです。そしてこれも四季報の予想ですが、2024年3月期の配当予想は270円です。

仮に株価が3000円だとしたら、270円の配当で配当利回りは9%まで低下してしまいます。それでも9%は十分に高いのですが、業績次第ではさらに減配されることも考えられます。

ちなみに配当金が15円だった2019年3月期決算の時の配当利回りを計算すると、その時点での株価が大体800円前後ですから、配当利回りは1.875%でした。商船三井の配当利回りには、この程度のブレがあると言えます。

結果、15%超の配当利回りを見てこれから投資すると、業績後退による減配と、それを悪材料にした株価下落によって、むしろ損失を被るリスクの方が高いとも考えられるのです。

減配で損失を被るリスクを軽減する方法

この手のリスクを軽減させるためには、2つの方法が考えられます。

ひとつは、景気に左右されず、業績が安定している企業の株式に投資することです。この手の企業はそう簡単に減配をしないので、逆に株価が安い時に仕込んでおけば、配当利回りを改善できます。

もうひとつの方法は、投資信託を買うことです。ちなみに「東証配当フォーカス100指数」への連動を目指すETFもあります。

日興アセットマネジメントが設定・運用している「上場インデックスファンド日本高配当(東証配当フォーカス100)」がそれにあたります。2023年2月24日の株価で計算した分配金利回りは3.67%です。

東証配当フォーカス100指数の上位10銘柄の配当利回りと比べると、やや見劣りする感覚はありますが、このETFは100銘柄への分散投資を前提にしたパッケージ商品ですから、指数構成銘柄の一部で業績が悪化し、減配されたとしても、分配金利回りが大きく悪化することはないでしょう。

***
 

資産形成では、自分のポートフォリオの利回りを高めておくことも大事です。

たとえば複数の個別銘柄に3000万円ほど投資して、その平均的な配当利回りが4%だと想定したら、年間120万円(税引前)の配当を得ることができます。リタイヤ後はこれに公的年金を加えれば、生活費をかなり賄えると言えるでしょう。

もちろん3000万円を一度に投資するのはなかなか大変なことですが、若いうちから時間をかけて少しずつ株式のポートフォリオを増やしていけば、決して非現実的なプランではありません。

鈴木 雅光/金融ジャーナリスト

有限会社JOYnt代表。1989年、岡三証券に入社後、公社債新聞社の記者に転じ、投資信託業界を中心に取材。1992年に金融データシステムに入社。投資信託のデータベースを駆使し、マネー雑誌などで執筆活動を展開。2004年に独立。出版プロデュースを中心に、映像コンテンツや音声コンテンツの制作に関わる。

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