推し活もOK、コスパの追求も不要…「自分らしいお金の増やし方」の大切さ
Finasee / 2023年3月23日 11時0分
Finasee(フィナシー)
自分の老後をイメージした際に抱く「不安」はお金が理由であることが少なくありません。その不安を和らげるには、基本的には「貯蓄」や「投資」が必要です。しかし、これらを継続的に実行するには、「自分の価値観を整理し、立ち位置を確認して、どうするかを考える」ことが大事とファイナンシャルプランナー・山崎俊輔氏は言います。
話題の著書『お金の悩みは4マスで考える』では、「自身の価値観を整理し、立ち位置を確認」するのに4マス図を活用して、“見える化”することを提唱しています。今回は、本書冒頭の「はじめに」、第1章「お金とココロの問題を解決したい」の一部を特別に公開します。(全3回)
※本稿は山崎俊輔著『お金の悩みは4マスで考える』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。
「自分の人生とお金の最適解」を見つけるためにお金の悩み、ありませんか? ありますよね?
・普通にやりくりしているつもりでも、毎月給料前には残高がほぼゼロ……
・推しが愛しすぎて、お金がなかなか貯められない
・旅行に行ったり、おいしいものを食べたりして、ついお金を使いすぎてしまう。でも、貯めたいけど今しかできないこともしたい
・最近、「貯蓄から投資へ」とか言われているし、「投資」が大切らしいと話には聞くけれど、なんとなく怖くて手が出せない……
・遥か先だけど、老後を考えてiDeCoとかNISAを始めなきゃと思っている。始めるなら、どっちから始めるべきなのかな
・結婚したばかりで子どもも欲しいから、そろそろ本気でお金のことを考えないと
・子どもが生まれて、きちんとお金を貯めたり増やしたりしたいけど、食費とか洋服とか、旅行とか保険とか、何にどの程度かけていいかわからない
お金の悩みはどこか人生相談につながっているところがあります。「理屈としてはそうかもしれないけど、自分ごととしてどう考えるべきか?」が整理できないと、気持ちがスッキリしないのです。
いろんな人がさまざまな角度からアドバイスしてきます。そのうえスマホを見れば、お金に関するたくさんの情報があふれています。しかし、そのなかで「自分なりの答え」を見つけることが大事だったりします。
私は、ファイナンシャルプランナー(FP)として20年以上活動してきました。確定拠出年金とリタイアメントプランを専門とする一方で、若い世代のためのマネーリテラシー向上や投資教育にも力を入れています。
日本経済新聞電子版やマネー現代、プレジデントオンラインなど、いろんな媒体に月20本ほど、マネー記事を書いたり、年40〜50本くらい講演したりしています。
こうした活動をするなかで感じていたことがあります。
FPの相談では、30〜40年といった長期スパンの人生計画のことを、「ライフプラン」といいます。結婚や出産、マイホームの購入などの大きい出来事や、旅行や引っ越しなどのまとまったお金のかかる出来事を想定し、長期のお金の計画を立ててみます。お金の相談にこられた方に、ライフプランを書いてもらうことが、FPの仕事の基本中の基本だったりします。
しかし、私はあまりこのライフプランが好きではありません。ライフプランを立てるというと型にはめてテンプレートにしがちで、それこそ無限に選択肢があることを忘れがちだからです。
何歳で結婚するか、そもそも結婚するかどうか、子どもが生まれるかどうか、子どもの数は何人か、病気をするかどうか、持ち家か賃貸か、親にお金があるかどうか、親の介護が必要かどうか、共働きか専業主婦にするか、正社員共働きでがんばるかパートにするか、それこそたくさん分岐点があります。
そのうえ、数年先の未来が変わることもしばしばです。おひとりさま人生と思っていたら、1年後には結婚などということもありますよね。
多様性の時代とよく言われますが、人生はもともと多様性の宝庫です。選択肢の積み重ねで、同じ人生はひとつとしてありません。そしてお金の問題もひとりひとり違ってくるものです。
テンプレートから少し離れて、「自分らしいお金の増やし方」、「自分の人生とお金の最適解」を見つけてほしいと考えています。
自分の価値観を整理し、「自分ならどうするか」を考える「お金の流れ」を簡単に説明するならば、「稼ぐ」→「使う」→「差額を貯金したり投資で上手に増やす」です。
この「お金の流れ」で、最後にお金が残るようにすることは人生において大切なことです。かといって、毎日コンビニおにぎりだけを食べて、娯楽ゼロで生きていくのもつまらないものです。バランスよくお金を使って「楽しみ」も手に入れていく必要があります。
それこそ「推しに課金」枠だってあっていいのです。それがあなたに幸福感をもたらしてくれているのなら。お金は気持ちよく使うことも大切です。
好きなことにお金を使うことは、日常生活で全体としてバランスをとることができていれば十分にアリです。
私は、ときどき「オタクFP」とも名乗っています。ゲーム、アニメ、マンガ好きであり、コミックの蔵書は5000冊以上、コミックレビューのコラム連載ももっていたことがあるほどです。
しかし、日常生活はシンプルです。高いお寿司にも興味がありませんし、ユニクロと無印良品とGAPを組み合わせて服代はリーズナブルにすませています。私からすれば服や靴に一点2万円もかけるくらいなら、マンガを20冊買ったほうがいいし幸福感がある、と考えているからです。
こういう優先順位、おそらく普通のお金の本では、あまり認めてくれないでしょうが、もちろんアリです。
お金の流れはシンプルですが、解決策は人それぞれです。人によって解決策は「転職」だったり「節約」だったり「積立定期預金の設定」だったりします。
節約だって、お金をただ削ればいいというわけではありません。「どこにいくら使うのか」「どこが削りどころか」を自分なりに見極めるプロセスだったりします。
つまり、自分の価値観を整理し、立ち位置を確認し、「自分ならどうするか」を考えて行動することが大切なのです。
お金の悩みを、2×2の4マス図で「見える化」するそこで自分の価値観を整理し、立ち位置を確認し、どうするかを考えるために、図を活用します。
2×2の4マス図です。
タテ軸とヨコ軸で作る図をマトリックス図といいますが、この図でお金の問題を図解し、解き明かしてみるのです。
これから、各テーマごとに選択肢が2個ある軸を二つ設定し、
・変化の有無
・制度や法律の違い
・行動のパターン
などを見える化してみます。
この4マスの図のいいことの一つは、「避けるべき選択肢」「不合理な行動」がシンプルに見えてくる、ということです。
4つのマス目には、たいていの場合、一つか二つは得ではないことがあります。それがわかれば、賢くない行動、損する選択は避ければよくなります。
2×2の軸の中に「○」「△」「×」のようなマークをつけていることもあります。選択肢が相対的に優劣がついている状態です。この場合は「×」を回避するように心がけてみると読みやすいと思います。できれば「○」の選択肢を選べないか、自分なりに考えてみてください。
また、「どこを目指して自分を変えていけばいいかわかる」こともメリットです。
図の中に「↑」を大きく引いていることがあります。左下から右上へ矢印が出ていたら、その方向を目指すのだ、というイメージをもってみてください。
今の自分が左下のマス目にいるのだとしたら、そこから自分のポジションを右上のマス目に変化させればよいのです。こう気づくことができれば、実際に行動を移す意義が明確になりますし、実行する意欲もわいてきます。
お金の悩みが解決の方向へ一歩動き出すはずです。
私たちはおおむね「非合理的」であるあなたは自分のことを「合理的なタイプ」と考えているでしょうか。それとも「非合理的なタイプ」だと考えているでしょうか。
ミニマリストというライフスタイルがありますが、ワンルームマンション、家具はほとんどなし、服は数着のローテーションのみ、スマホかタブレットがあればテレビも不要……といった究極的なシンプル生活を送っています。コストパフォーマンスの追求、合理的な生活の行き着く先、という感じです。
食事についてはおいしいとか楽しいとかは気にせず、栄養バランスと価格だけを考えている人がいます。たしかに合理的ではあります。
この二つのライフスタイルはちょっと究極的な例ですが、ほとんどの人は「それはちょっと無理……」と思うはずです。どんな人でも合理的だけでは暮らせません。
趣味や生きがいに時間とお金を使うのも、非合理的といえば非合理的ですが、人間とはそういうものです。
「推し」に課金する見返りなどなくても、私たちはアイドルを応援することがあります。マンガを読まなくても人生は成り立ちますが、気分転換にマンガアプリなどを開いて新作マンガや名作マンガを追いかけたりします。
むしろ非合理的なところに人間らしさがある、といってもいいかもしれません。
とはいえ、お金の決断ですべて非合理的、というわけにはいきません。そこはバランスをとりたいところです。
まずそんなお金のココロの問題をテーマにしてみたいと思います。
●第2回(大切なのは“メンタル改善”ではない…! お金が確実に貯まる“ある仕組み”)では、実際に4マス図を使った「お悩み」への対処法を解説します。
『お金の悩みは4マスで考える』山崎俊輔 著
発行所 ディスカヴァー・トゥエンティワン
定価 1650円(税込み)
山崎 俊輔/ファイナンシャルプランナー
1972年生まれ。フィナンシャル・ウィズダム代表。1995年中央大学法学部法律学科卒業後、企業年金研究所、FP総研を経て独立。確定拠出年金を中心とした企業年金制度と投資教育が専門。著書『普通の会社員でもできる 日本版FIRE超入門』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『共働き夫婦 お金の教科書』(プレジデント社)、『お金の悩みは4マスで考える』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など多数。
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