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家族を脅され離婚、退職まで…たった一度の「闇金」で人生崩壊の悲劇

Finasee / 2023年3月16日 11時0分

家族を脅され離婚、退職まで…たった一度の「闇金」で人生崩壊の悲劇

Finasee(フィナシー)

都内の大学に通う田村さん(仮名、21歳男性)は1人暮らし。アルバイトをしていますが生活が厳しく、将来の奨学金返済にも不安を感じる毎日でした。

そんなときにネットで「先払い買い取り」の広告を見つけます。「商品画像を送るだけでお金が振り込まれる」「実際には商品を売る必要がない」とのことで、そんなに簡単ならと田村さんは飛び付きます。

早速、自分のPCの写真を適当に送ると、本当に10万円が振り込まれました。ところが、すぐにキャンセル料として13万円を業者に支払わなければならなくなったのです……。

●いったいどういうこと!? 「新手の闇金」に大後悔
※前編【「新手の闇金」に手を出してしまった大学生…深く後悔するも手遅れに】からの続き

先払い買い取りとは

そもそも田村さんの利用した「先払い買い取り」とは何なのでしょうか?

先払い買い取りは、業者へ商品を売ったフリをして実際には売らず、代金だけを払ってもらう商売です。ただし商品の売却については、その後「キャンセルすること」が前提になっています。

先払い買い取りで商品を売ると、いったんは先払い買い取り業者から商品の代金が振り込まれます。ただし商品の売買は取り消され、利用者は先払い買い取り業者へキャンセル料や違約金を払わねばならない仕組みです。違約金の金額は先払い買い取りによる買い取り金額より高額なので、利用者は結局損をしてしまいます。

このように、実際には商品のやりとりをせず初めからキャンセルが予定されているのが「先払い買い取り」の特徴です。一時的にお金が必要な人などが利用するケースが多く見られます。

ブラックリスト状態でも利用できる

先払い買い取りの特徴として「ブラックリスト状態でも利用できる」点が挙げられます。

ブラックリスト状態とは、借金返済を滞納するなどして個人信用情報に延滞情報などの事故情報が登録された状態です。信用情報に延滞情報が登録されると、クレジットカードやキャッシングなどの審査に通りません。まともな金融業者からはお金を借りられない状態になってしまいます。

先払い買い取りの場合、実質的に闇金なので審査はなく、ブラックリスト状態の方でも利用可能です。

先払い買い取りは実質的に闇金?

先払い買い取りを利用すると一時的に資金調達できるので、ブラックリスト状態の方を中心に利用者が増えています。しかし先払い買い取りは「実質的に闇金と同じ」であり、非常に危険性の高いものです。

闇金の仕組み

闇金は、貸金業の登録をせずに違法な高金利を課して金もうけをする違法業者です。闇金業(無登録営業)は法律で厳しく禁止されており、闇金行為を行うと「10年以下の懲役または3000万円以下の罰金またはその両方」の刑罰が科される可能性もあります。

闇金を利用すると、一時的にはお金を借りられても、高額な利息を払わねばならず結局は自分の首を締めてしまいます。支払いをしないと激しい嫌がらせなどが行われるケースも多く、家族を脅されたり会社へ電話されたりするケースも少なくありません。

嫌がらせの結果、離婚して家族を失ってしまったり退職に追い込まれたりする方も多数います。闇金は危険なので、絶対に利用してはなりません。

先払い買い取りの仕組み

ではなぜ先払い買い取りは闇金と同じなのでしょうか? それは、先払い買い取りの場合、初めから商品売買が予定されておらず、単なる資金融通の手段として利用されているからです。

先払い買い取り業者が商品代金としてお金を振り込み、利用者は商品代金より大きな金額を「違約金」として返済しなければなりません。これを外形的に見ると、違法金利を取り立てる闇金と全く同じになっています。

そのため先払い買い取りは実質的に闇金と同じ、といわれるのです。

金融庁や警察の見解、取り組みについて

国も違法な先払い買い取り業者を問題視しています。実際に金融庁からも「先払い買い取りは実質的に貸金業に該当するおそれがあります」と注意喚起が行われています。

2023年1月には、先払い買い取り業者が全国で初めて摘発されました。今後は先払い買い取り業者への取り締まりが厳しくなっていく可能性が高いといえるでしょう。

いずれにせよ、田村さんのように軽い気持ちで先払い買い取りを利用すると、将来、多重債務状態に陥ってしまう可能性もあるので、やはり利用すべきではないでしょう。

先払い買い取りのネット記事を信用してはならない

ネット上では「オススメの先払い買い取り業者」などの記事があふれていますが、結局は全て違法な闇金にすぎません。利用すると、お金をとられて損をしてしまいます。支払わないと激しい嫌がらせや脅迫を受ける可能性もあります。

無責任なネット記事に踊らされて、紹介されている業者を利用しないように注意してください。

先払い買い取りを利用してしまったら

もしも先払い買い取りを利用してしまったらどうすればよいのでしょうか?

先払い買い取りは違法となる可能性が高いので、まずは弁護士に相談しましょう。闇金に該当する先払い買い取り業者であれば、元本の返済も不要となります。先払い買い取り業者が請求する違約金やキャンセル料を払わなくてよくなる可能性があるので、払ってしまう前に相談してみてください。

また警察に相談するのも1つです。先払い買い取り業者から届いたLINEなどの証拠をそろえて警察に持参しましょう。逮捕や摘発へ向けて動いてくれる可能性があります。

●「闇バイト」は一度やったらやめられない? 詳しくは【「5万円の報酬」につられて闇バイトに手を出した結果…絶望の末路へ】(本サイト記事)で紹介します。

福谷 陽子/法律ライター・元弁護士

京都大学法学部在学中、司法試験に合格。勤務弁護士を経て、法律事務所を設立し、約7年間独立営業。中小企業法務や債権回収、不動産の任意売却やカード破産などの案件を多数手がけた。悪徳商法、投資詐欺などの消費者問題にも深い知見がある。現在は弁護士時代の経験を活かして、各種の法律メディアにて執筆、監修、編集、さらに法律事務所のWebマーケティングなどに携わる。

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