株価が下落…「底値買い」や「ナンピン買い」がキケンとされる“これだけの理由”
Finasee / 2023年3月13日 11時0分
Finasee(フィナシー)
「老後の備えは自分で作らなくてはいけない」そんな危機感がコロナ禍でさらに膨らみ、投資を始める人が増えている。しかし、そうはいっても奥深いのが投資の世界。慣れれば慣れるほど疑問や不測の事態に直面することも増えてくる。
そこで、この連載では「資産形成3年目だからこそ知りたい」用語や投資情報を解説する。第15回は「株価の底値買い」について。決算発表に伴い、業績の下がった企業の株価を見ると、どのように行動すべきか迷うもの。市場全体に目を向けても、2022年8月に一時2万9000円台まで復活した日経平均株価は、2023年2月下旬は2万7000円台まで水準が徐々に切り下がっている。
株価が下落傾向のタイミングこそ「仕込み時」と考える投資家もいるが、初心者にとってはこのような時こそ慎重な投資が重要だ。今回は、株価の下落時に不安にならないための投資法を見ていこう。
株価下落時の主な対応方法3つを解説株価下落に直面したときは、手じまいをするかもう少し粘るかで迷うことも多い。対応方法としては大きく分けて3種類がある。
1. そのまま保有を続ける株価が下がっても慌てず、じっと相場の反転をうかがう方法だ。市場の需給で一時的に値下がりすることも珍しくない。割安度や業績を改めてチェックして一時的なものと判断した場合は、下手に動かず待つのも手だ。急落した場合も同様に、次の展開を辛抱強く待ち続けよう。
ただし、見込みもないまま止むを得ず長期保有している「塩漬け」の状態には注意したい。「見切り千両、損切り万両」という格言があるくらい下落したときの売却のタイミングは難しいとされるが、「塩漬け」銘柄を保有することは運用効率の低下にもつながりかねない。資産運用の目的や期間を鑑みて保有を続けるのか売却するのかを検討したい。
2. 売却する保有している株式を売却し、損失を確定させる方法(損切り)もある。保有し続けた場合、さらに株価が下落して含み損が膨らむ可能性もあるため、損失額を確定させることで損失が膨らまないようにする狙いだ。購入した株の価格が下落し、回復が見込めないと判断できるケースでは有効といえる。
ただし、反転した場合もすぐに買い直すのはNG。損切りした銘柄に拘らず、あくまで自分の「買い」と「売り」の基準をもとに投資を続けよう。
3. 追加で注文する反転に期待し、保有を続けるだけではなく、追加で注文を行う方法。ナンピン買いと呼ばれる。平均購入価格を下げることで、株価上昇時に含み損を解消するまでの時間を短くできるというメリットがある。
しかし、株数が増えることで、株価がさらに下落すれば損失の膨らむスピードが速まる可能性もある。デメリットとして、他の投資対象に回す資金がなくなったり、分散投資しづらくなったりすることなどが挙げられる。
株価の底値買いは「仕込み損」のリスクが高い底値とは、一定期間中の一番低い株価をあらわす。一時的に株価が安い状態である優良銘柄を探して買い、値上がり益を狙うのが「底値買い」の基本戦略だ。このことから、株価の下落相場を「仕込みどき」と捉える投資家もいる。
しかし、「ナンピン買い」と同様、初心者は以下の3つの理由からあまり手を出さない方がよい投資方法といえる。
1つ目の理由は、「十分な値上がり益を得られない危険性がある」からだ。
株価が下落している最中に、どこが底値になるかは誰にも分からない。また、株価が大幅に下がっている最中は、機関投資家などがまさに売却中である可能性が高い。そのような時に、資金量に劣る個人投資家がいくら購入しても下落は止まらない。その結果、仕込んだ株を損切りする必要が出てきたり、塩漬けになってしまったりするリスクがあるのだ。
2つ目の理由は、「さらに損失を広げてしまう可能性がある」からだ。
リーマンショックやコロナショックなど、世界的な株価暴落時は相場の値動きが普段以上に激しくなる。とくに初心者は動揺も相まって適切なタイミングで損切りできず、損失を広げてしまう可能性が高まる。さらに、急な下落相場で冷静さを失い、信用取引などハイリスクな売買や、普段の売買ルールとは異なる取引をしてしまうことも。
3つ目の理由は、「下落している銘柄は旬を過ぎていることが多い」からだ。
株価が下落し続けることには理由がある。株価が下落するのは株主の売りが増えているためであり、背景には業績不振なども考えられる。また、投資家にとってその銘柄が旬を過ぎていることもある。たとえば、2022年の東証プライム市場での下落銘柄ワースト30の多くは、「グロース」と呼ばれる今後成長が期待できると見込まれた企業や、勢いのあった新興企業の小型株が占める。相場全体からの期待が落ち込んだ銘柄は、なかなか上昇に転じることが難しいのだ。
安定して上昇を続ける銘柄がベター株の短期〜中期での売買は、損する人と得する人が出るゼロサムゲーム的な側面を持つ。「頭と尻尾はくれてやれ」というように、株価相場の最高値や最安値を読み切ることは非常に難しいと言われるなか、利益を奪い合う相手は機関投資家やプロのトレーダーだ。とくに相場が荒れているとき、個人投資家が普段と異なる売買で勝つことはほぼ不可能だろう。
「落ちるナイフを掴むな」という格言通り、下落している銘柄での「底値買い」や「ナンピン買い」を無理に目指さず、業績と株価が連動する銘柄でコツコツ投資していくのが望ましい。
投資初心者だけではなく中級者以降も、長期保有で利益の獲得を目指すプラスサムの世界での投資が現実的であるといえるのではないだろうか。
文/中曽根 茜(ペロンパワークス)
Finasee編集部
金融事情・現場に精通するスタッフ陣が、目に見えない「金融」を見える化し、わかりやすく伝える記事を発信します。
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