販売会社の業態の違いを問わず22年は「守り」の商品戦略に
Finasee / 2023年3月9日 19時0分
Finasee(フィナシー)
販売会社が運用会社の「商品開発力・企画力」を評価するポイントは、2021年と2022年で大きく異なっている。市場が右肩上がりで上昇していた21年は「先見性が感じられる商品」や「トレンドに適合した商品」に対する評価が比較的高かったが、市場が下落に転じた22年になると「商品のコストとリターンの整合性」への評価が高まった。金融リテール専門誌『Ma-Do』が実施した「運用会社ブランドインテグレーション評価2022」で運用会社の「商品開発力・企画力」に関する評価は、販売会社の業態による差もあることながら、どちらかというと販売会社の全体的な傾向が似通った調査結果になった。
「運用会社ブランドインテグレーション評価」は、投信販売会社が運用会社を評価する調査で、運用会社について「運用力」「商品開発力・企画力」「営業担当者・研修担当者の質」「サポート力」「ブランド力」「ガバナンス」の6つの軸で評価してもらい、得点順にランキングした。2022年調査は9月~10月にWEBで実施し、国内外の運用会社36社を評価の対象とし、310件の回答を得た。回答者の業態別構成は、地方銀行が41.1%、第二地方銀行が11.6%、ゆうちょ銀行・郵便局が16.1%、証券会社が7.5%、IFA(独立系ファイナンシャル・アドバイザー)が13.0%だった。
市場環境の激変が販売会社の業態の違いをなくす運用会社の「商品開発力・企画力」に関して販売会社が最も高く評価するのは「先見性が感じられる商品」だが、この項目に関しては、全体的に21年に対して22年は評価ウエイトが下がっている。地銀が21年の77.5%が22年は74.4%、第二地銀は79.4%から75.6%、ゆうちょ銀・郵便局が57.4%から53.1%、証券が63.6%から57.1%と、業態を問わず評価を落としている。唯一IFAが60.5%から64.9%に上がっている。
この項目に変わって評価を上げたのが「商品のコストとリターンの整合性」で、地銀が21年の53.3%を22年は61.5%に上げたが、第二地銀も52.9%から61.0%、ゆうちょ銀・郵便局は68.1%から72.5%、証券は45.5%から62.9%、IFAも63.2%から68.4%と、業態を問わず評価ポイントを上げている。
販売会社にとって「先見性のある商品」とは、市場の変化を先取りし、投資家ニーズを上手に汲み上げる商品といえ、「販売することに困らない商品」と言い換えることもできる。どんどん新しい商品を仕入れ、どんどん新規の投資資金を呼び込もうという環境の下では「先見性のある商品」は大いに歓迎されるだろう。
一方で、「商品のコストとリターンの整合性」については、新規の資金を取り込むというよりも、既存の投資家に対する説明責任を意識した項目といえる。株式市場等の下落によって投資家の投資マインドが低下する中、パフォーマンスよりも運用コストに意識が高まっている様子がわかる。
これらの点で、販売会社の業態による違いがほとんどないのは、それだけ21年と22年のマーケット環境の変化が大きかったため、どの販売会社も等しく守りの姿勢を強めたということだろう。
証券会社が「外部委託先」を評価する理由は?一方、販売会社の業態の違いが明瞭に表れたのが「トレンドに適合する商品」という項目に対する回答だ。地銀は21年の47.5%が22年は41.9%、第二地銀は58.5%から46.3%、証券も54.5%から39.3%に揃って評価を落とす中で、第二地銀と証券の落ち方が非常に大きく目立っている。21年まではトレンドに合致する商品を強力に営業推進していたものの、22年になって市場環境が大きく変わってしまったために、その対応に苦慮しているのかもしれない。反対に、ゆうちょ銀・郵便局(21年の28.9%から22年は38.8%)、IFA(18.4%から26.3%)はこの項目の評価を上げている。
また、「外部委託先の選定力」という項目について、全体的に販売会社の関心度合いは低いものの、証券が21年の9.1%から14.3%にポイントを上げている。「外部委託先」の活用は、主に国内の運用会社が外国資産に投資するファンドやヘッジファンドなどを作る際に外国の運用会社に運用を委託する形で行われる。比較的投資商品に慣れている顧客が多く、また、どちらかといえば足が速い(短期で結果を求める)顧客が多いと考えられる証券会社で、外部委託への関心が高まっているのは、今後の商品戦略を考える上で気になる動きになっている。
Finasee編集部
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