市場の大きな変化で証券会社も運用会社を再評価、銀行は総合力に期待
Finasee / 2023年3月13日 19時0分
Finasee(フィナシー)
販売会社が運用会社の「営業担当者・研修担当者の質」を評価するポイントは、販売会社の業態による変化は大きくないものの、その時々のマーケット環境によって焦点のあたる項目がある。運用環境が厳しかった2022年には、価格変動商品の取り扱いに慣れている証券会社において「コミュニケーション能力に優れている」、「プレゼンテーション能力が高い」、などの評価が上がった。一方、第二地銀では「業界・他社動向に詳しい」という評価が大きく上がるなど、業態による特徴が表れている。
金融リテール専門誌『Ma-Do』が実施した「運用会社ブランドインテグレーション評価2022」で明らかになった運用会社の「営業担当者・研修担当者の質」に関する評価は、業態を問わず21年よりも22年は上昇する傾向にあり、運用会社の専門知識への期待が高まっていることがわかる。
「運用会社ブランドインテグレーション評価」は、投信販売会社が運用会社を評価する調査で、運用会社について「運用力」「商品開発力・企画力」「営業担当者・研修担当者の質」「サポート力」「ブランド力」「ガバナンス」の6つの軸で評価してもらい、得点順にランキングした。2022年調査は9月~10月にWEBで実施し、国内外の運用会社36社を評価の対象とし、310件の回答を得た。回答者の業態別構成は、地方銀行が41.1%、第二地方銀行が11.6%、ゆうちょ銀行・郵便局が16.1%、証券会社が7.5%、IFA(独立系ファイナンシャル・アドバイザー)が13.0%だった。
証券会社も運用の専門家のサポートに期待運用会社の「営業担当者・研修担当者」に関する評価は、21年の回答では証券会社で他の業態よりも低い傾向の回答が目立っていた。株式や債券を直接取り扱っている証券会社は、リスク商品取り扱いのプロといえ、運用会社の担当者から何かを教えてもらうというニーズは小さいものと想像できる。
ところが、22年には「コミュニケーション能力に優れている」(21年の31.8%が22年は64.3%)、「プレゼンテーション能力が高い」(同様に54.5%が67.9%)、「ニーズや課題を踏まえた対応をしてくれる」(54.5%が67.9%)など、評価項目に対するポイントが上がっている。証券会社であっても、市場の大きな転換点といえる22年には、専門家である運用会社の担当者の力に期待したいという思いが強まった結果だと考えられる。
地銀、第二地銀、ゆうちょ銀・郵便局といった預貯金を中心に取り扱ってきた金融機関は、運用の専門家である運用会社の担当者への期待値は高かったが、22年は一段と評価値が高まっている。
「ニーズや課題を踏まえた対応をしてくれる」という項目では、地銀が21年の74.2%から22年は84.6%、第二地銀は同様に61.8%が75.6%、ゆうちょ銀・郵便局は61.7%が65.3%になった。また、「業界・他社動向に詳しく商品・マーケットの知識がある」という項目の評価も高くなった(地銀は76.7%が76.9%、第二地銀は61.8%が82.9%、ゆうちょ銀・郵便局は70.2%が73.5%)。
リスク商品の取り扱いには慣れていないものの、預貯金を通じて投信の新規顧客候補を多く抱える銀行に対して手厚いサポートを行ってきた運用会社の取り組みは、市場が大きく変化した中で活きているといえるだろう。
部門を越えた総合力も評価一方、「プレゼンテーション能力が高い」という項目について、評価ポイントが高まったのは証券会社と並んでゆうちょ銀・郵便局(48.9%が65.3%)だった。この項目は、新規ファンドの導入時等に注目されやすい項目になると考えられる。市場の流れが大きく変わった環境に対し、証券会社やゆうちょ銀・郵便局では、従来のラインナップに加えて新しい市場環境に適合した新ファンドの導入を検討する動きが強まったのかもしれない。
また、全体的な評価は低いものの「必要な社内リソースを動かす力がある」という項目について、地銀が21年の19.2%から22年は23.1%、第二地銀が8.8%から24.4%、IFAが15.8%から29.8%と相対的に評価ポイントを高めている。市場が大きく変化する中にあっては、営業部の担当者が運用部のファンドマネジャーに運用の実情を説明してもらう、または外部委託運用部の担当者から海外の運用会社の考え方を紹介してもらうなど、運用会社の総力を挙げたサポートへの期待が高まったといえるだろう。
Finasee編集部
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