これからは「新しいNISAで孫に贈与」が流行るかも!? その理由は…
Finasee / 2023年3月15日 11時0分
Finasee(フィナシー)
2024年からの「新しいNISA」。最近、セミナーでお話しすることが多いネタですね。そして、セミナー参加者からのご質問やご意見等を伺いながら考えたのが、今回のテーマである「孫に贈与でNISA」です。
新しいNISAの活用法として、これから流行るんじゃないかと、そんなふうに思っているのですが、その理由を、実際に高齢世代の皆さまから伺ったお話をもとにご説明しましょう。
新しいNISAは高齢世代のお眼鏡にもかなう制度まずは新しいNISAの特徴を確認してみましょう。以下、ご覧ください。
・現行のNISA制度、つみたてNISAと一般NISAが、新しいNISAではそれぞれ、つみたて投資枠と成長投資枠の2つに衣替え
・制度自体が恒久化され、非課税保有期間として5年や20年といった制限も撤廃(=無期限化)
・年間投資枠は、つみたて投資枠が40万円から120万円、成長投資枠が120万円から240万円に引き上げ
・つみたて投資枠と成長投資枠は併用できるようになり、合計最大年間360万円まで投資が可能に
・新たに設けられた非課税保有限度額は、つみたて投資枠と成長投資枠をあわせて1,800万円(うち成長投資枠は1200万円)とし、枠の再利用も可能
こんなふうに新しいNISAのことをセミナーでご紹介すると、高齢世代の皆さまからは、今までになく、NISAへのご意見やご相談をお受けすることが多くなりましたね。例えば、こんな感想を伺うことがあります。
「私はもう歳も歳だし、NISAなんて興味はなかったけど、思っていた以上に良い制度になるのね!」
まさに、新しいNISAの面目躍如ですね。つみたて投資枠にせよ、成長投資枠にせよ、年間投資枠が大幅に拡充され、併用も可能になるわけですから、現役世代よりも貯蓄が多いと言われる、高齢世代の皆さまのお眼鏡にもかなう、そんな制度に新しいNISAが生まれ変わるのだと思います。
今、高齢世代が一番気にしているのは贈与税の改正さて、新しいNISAのことを自分事(じぶんごと)としてご理解いただいた高齢世代の皆さまからは、セミナーの後で、こんなご相談を受けることもあります。
「新しいNISAのつみたて投資枠って、孫にピッタリだわ! 孫には、私のお金をあげたっていいんだけど、贈与税が改正されるとそれもやりにくくなるのかな?」
太っ腹と申しますか、それだけ貯蓄をお持ちの高齢世代が多いってことですが、そうした皆さまが今、一番気にしているのが贈与税の改正なのだとも思います。
簡単にご説明しますと、令和5年度の税制改正で、暦年贈与と相続時精算課税制度の取扱いが変わることになりました。増税になるのは暦年贈与、高齢世代の皆さまが気にされているのは、相続財産に贈与財産が持ち戻し(合算)される期間が、従来の3年から7年に延長されることだと思います。相続財産に持ち戻しされる贈与財産が増えるので、相続税が増税になる、ということです。今後は、この増税を回避するために、なるべく早く贈与する、そんな動きが活発化すると思います。
でも、よくよく確認してみると、相続財産に贈与財産が持ち戻しされる対象者は「法定相続人」です。持ち戻しの期間が7年でも3年でも、それこそ何年であっても、そもそもの話、通常であれば、お孫さまは法定相続人にはなりませんので、実は持ち戻しの対象外なんですよね。つまり、孫への贈与は増税なし、ということなのです。
しかも、新しいNISAのつみたて投資枠、年間非課税投資枠の上限が120万円になることを考えれば、暦年贈与の基礎控除の範囲内、つまり、非課税で贈与できる年間110万円でも、お孫さまはつみたて投資枠で十分に投資ができると思うのです。
ですから、高齢世代の皆さまは、ぜひ、お孫さまに贈与をして、お孫さまがその贈与を受けたお金で、新しいNISAのつみたて投資枠で投資を始めてもらう、そんなことを考えていただければと思います。
「孫に贈与でNISA」を後押しする、祖父母と孫の相場観ところで、高齢世代の皆さまに「孫に贈与でNISAがおススメ」なんて話をすると、少なからずこんなご意見を頂戴することもあります。
「孫は投資の話を聞いてくれるかな? 実の息子とも話したことないけど……」
国民的な金融リテラシーの向上が課題だと言われている日本では、そういう心配もあるかもしれませんね。言わば、お金を贈与するだけでなく、“相場観”も贈与できるかどうか、ということでもありますが、実はその点、私はあまり心配していません。どういうことなのか、祖父母と孫の相場観という話をご紹介しましょう。
アメリカのある調査によると、個人の投資判断に大きな影響を与えるのは、10代から20代にかけて、どんな株式市場を経験したのか、ということだそうです。例えば、株式市場が好調な時代に育った人は、株価が低迷している時代に育った人に比べて、その後の人生で株式に投資する金額が多かった、そんな調査結果を目にしたことがあるのです。
そこで、日本の場合はどんな感じになるのか、それをちょっと調べてみました。贈与する人は70代が多いと言われますので、今年75歳になる人と、そのお孫さま世代の20代、その中でも今年25歳になる人が、10代から20代に、どのような株式市場を経験しているのか、並べてみたのが下のグラフになります。
筆者作成いかがでしょうか? なんとなく似たような右肩上がりの株式市場を、今年75歳の人も、今年25歳の人も、同じように経験している――そんなふうに見えるかと思います。先ほど、私が「あまり心配していません」と言ったのは、こういうことなのですが、高齢世代とそのお孫さまは、意外と投資の話が共通の、そして、共感できる話題になるかもしれないのです。
ですから、高齢世代の皆さまは、ある意味、自信を持ってお孫さまに投資の話をしてあげてほしいと思います。そして、これから「孫に贈与でNISA」が流行るとすれば、それがひいては国民的な金融リテラシーの向上にも繋がるんじゃないかと、そんな期待も胸に秘めているのです(笑)。
お孫さまが未成年でも、今年なら新しいNISAの予約ができるなお、ここまでは、高齢世代として70代や80代の皆さまからのご意見やご相談を中心にご紹介してきました。一方、60代の皆さまに「孫に贈与でNISA」をおススメすると、こんな感想を頂戴することもあります。
「孫は未成年でNISAがまだできないから、うちには関係ない話。良いアイディアだと思ったけど残念……」
そうですね。ご理解いただいているとおり、新しいNISAの対象年齢は18歳以上ですから、未成年だと利用できません。そして、お孫さまがまだNISAができない年齢であることが残念でならないと、60代の皆さまが思う気持ちもよく分かります。というのも、今、60代の皆さまは20代から30代にかけて、日本がバブル景気だった頃の株式市場を経験されているからです。おそらく、70代の皆さま以上に、「孫に贈与でNISA」というアイディアに共感いただいているのではないでしょうか。
そんな、ある意味、「孫に贈与でNISA」の一番の理解者である60代の皆さまへ申し上げたいのは、新しいNISAも、そして、現行のつみたてNISAや一般NISAも対象年齢は18歳以上ですが、現行の2023年末までのジュニアNISAは未成年、つまり、0歳から17歳でも利用できる、ということです。ですから、今年中に未成年のお孫さまに贈与して、お孫さまがその贈与を受けたお金で、今のジュニアNISAで投資を始めてもらう、そんなことを考えていただければと思います。
「でも、新しいNISAにはジュニアNISA枠なんてないんだから、あまり意味がないだろう」なんて、そんな声が聞こえてきそうですね。たしかに、新しいNISAにはジュニアNISA枠なんてありませんが、私が申し上げたいのは、今、ジュニアNISAをお孫さまに始めてもらうのは「意味がない」ことではない、ということです。
逆に、どんな「意味がある」のかと言いますと、今、ジュニアNISAをやっている未成年者が18歳で1月1日を迎えると、新しいNISAが自動的に開設される※、言ってみれば、新しいNISAの予約が未成年のうちからできる、ということです。そして、これは2024年からではできない、つまり、ジュニアNISAがある2023年中にしかできないことですから、未成年の「孫に贈与でNISA」も、今年に限っては「意味がある」、そんなふうに思っています。
※なお、ジュニアNISAで保有している商品を新しいNISAの非課税投資枠へ移管する(ロールオーバーと言います)ことはできません。これは、つみたてNISAや一般NISAも同じで、現行のNISAと新しいNISAは別モノということでもあります。そして、別モノであれば、ジュニアNISAだけでなく、つみたてNISAや一般NISAを今年中にやっておくことも「意味がある」ことになります……よね(笑)。
***以上、新しいNISAの特徴や贈与税改正を踏まえて、これからは「孫に贈与でNISA」が流行るのではないかと、その理由を高齢世代の皆さまから伺ったお話しをもとにご説明しました。そして、「孫に贈与でNISA」が流行れば、それがひいては、国民的な金融リテラシーの向上にも繋がるんじゃないかと、そんな期待もしているのです。
だからこそ、高齢世代の皆さまには、お孫さまにお金を贈与するだけでなく、投資経験や相場観、そして金融リテラシーといったものも含めて、お孫さまと投資について語り合う、そんな場を積極的に作っていただければと思います。
最後に、新しいNISAについては、先日、YouTubeに動画をアップしました。新しいNISAのことをお孫さまにお伝えする前に、まずはこの6分程度の動画で改正のポイントをおさらいいただければと思います。もちろん、このYouTube動画のリンクを、お孫さまとLINEやメールで共有すれば、「おじいちゃん、おばあちゃん、なかなかやるじゃん!」(この言いっぷりが、なんとも昭和レトロで恥ずかしいのですが……笑)みたいになるかもしれませんね。そして、この動画が投資の話題をきっかけとした、高齢世代の皆さまとお孫さまとの懸け橋になれれば嬉しいですね。ご参考になれば幸いです。
●筆者出演のYouTube動画「新しいNISAのトリセツ ~改正のポイントと活用法~」
小出 昌平/大和証券 ライフプランビジネス部 担当部長
1993年4月大和証券入社。投資信託の開発や富裕層ビジネスの企画・運営業務などを経て、2015年より確定拠出年金業務に従事。現在は、iDeCoと呼ばれる個人型確定拠出年金の周知・普及活動に携わりながら、自治体や事業会社の職場における金融・投資教育、ライフプラン教育の支援活動に取り組み中。
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
毎年「110万円までなら非課税だから」と贈与してくれる父。しかし2024年からの「変更点」を見落とすと損な結果に!? 注意点を解説
ファイナンシャルフィールド / 2024年11月22日 5時0分
-
旧NISAの口座があります。一般NISAをまだ売却していないのですが、いつまでに手続きすればいいですか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年11月17日 1時50分
-
娘の結婚祝いに、娘の口座に貯めていた「300万円」を渡したいです。お祝いなら“非課税”で渡せるでしょうか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年11月8日 2時30分
-
年金「夫婦で28万円」の70代夫婦、激愛する孫に「年100万円・20年分」の贈与も、税務署「これは贈与になりません」と撃沈するワケ「何かの間違いでは?」
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月7日 9時15分
-
「ジュニアNISA」が2023年で廃止! 友人が「自分が新NISAを運用して500万円を子どもに渡す」と言っていますが、税金はかからないのでしょうか…?
ファイナンシャルフィールド / 2024年10月29日 5時20分
ランキング
-
1【独自】船井電機前社長『不正を働いたことはない』 “破産の申し立て”は報道で知る「本当に驚いた。なんでこんなことに…」
MBSニュース / 2024年11月22日 18時20分
-
2三菱UFJ銀行の貸金庫から十数億円抜き取り、管理職だった行員を懲戒解雇…60人分の資産から
読売新聞 / 2024年11月22日 21時35分
-
3物価高に対応、能登復興支援=39兆円規模、「103万円」見直しも―石破首相「高付加価値を創出」・経済対策決定
時事通信 / 2024年11月22日 19時47分
-
4「築浅のマイホームの床が突然抜け落ちた」間違った断熱で壁内と床下をボロボロに腐らせた驚きの正体
プレジデントオンライン / 2024年11月22日 17時15分
-
5ファミマ、プラ製スプーン「有料化」の実験結果を発表 大手コンビニで初、どうなった?
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年11月21日 12時20分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください