「保険金で稼げる」交通事故を故意に起こして数百万円…驚きの手口
Finasee / 2023年4月6日 11時0分
Finasee(フィナシー)
交通事故に遭うと、保険会社へ保険金を請求できます。時にはこの制度を悪用し、事故を偽装したり過剰な診療を受けたりして保険金を過剰に請求しようとする人がいます。
このようなことをすると保険金詐欺になる可能性があるので、やってはいけません。
本稿では何度も故意に交通事故に遭って保険金をもらおうとした加納さん(仮名、20代男性)の事例を元に、保険金詐欺のリスクを解説します。
交通事故に遭ったら保険金を受け取れるとしても、決して詐欺は行わないように注意しましょう。
加納さんの場合加納さんは地方で働く会社員です。給料は高くはありませんが、特に困らずに生活できていました。ただし貯金するほどの余裕はありませんでした。
そんな時、加納さんは交通事故に遭ってしまいました。歩いている時に、近くを走っていた自動車に接触されたのです。
幸い大ケガはせずに済みましたが、通院治療が必要となって半年以上通院を継続しました。
意外と多かった保険金事故後の通院が終わると、保険会社同士で示談交渉が始まりました。加納さんは半年以上通院していたので、慰謝料が70万円以上支払われました。また会社を休んだので休業損害も払われましたし、通院交通費も出してもらえました。もちろん治療費は全額相手の保険会社が負担しています。
結局加納さんは、交通事故によって100万円以上を手にすることができました。交通事故に遭ったからといってこのような大金を受け取れるとは考えていなかったので、加納さんにとってはむしろうれしい驚きでした。
2回目の交通事故交通事故後、加納さんは「また交通事故に遭ったらまとまったお金をもらえるのではないか?」と考えるようになりました。
ただ事故を偽装するのは簡単ではありません。そこで、あえて軽い事故に巻き込まれて保険金請求をしようと考えたのです。
具体的には狭い道路で走っている車に近づいて、軽く腕や脚などを接触して交通事故に遭う方法を試しました。この試みは成功し、加納さんは腕をケガして事故に巻き込まれることができました。
この交通事故についても、加納さんは保険会社に保険金を請求し、また100万円近い保険金を得ました。
3回目の交通事故その後しばらくして、加納さんは「また事故に遭って保険金を請求したい」と考えるようになりました。
しかし1回目や2回目と同じ態様の事故では保険会社から「故意に事故を起こしている」と疑われるかもしれません。そこで加納さんは、今度は自損事故を起こすことにしました。
具体的には家の近くの田んぼのあぜ道を走っている時に浅い溝に転落し、ケガをして保険金請求することにしたのです。加納さんは自動車保険の「人身傷害補償保険」に加入していたので、こちらが適用されてケガに対する補償が行われると考えました。
加納さんの思惑は成功しました。計画通りにあぜ道の横の溝に転落し、軽いケガをして保険金を請求できたのです。この交通事故により、加納さんは60万円程度を手にすることができました。
なお1回目から3回目までの交通事故は、わずか1年あまりの間に立て続けに起こしました。
4回目の交通事故これまで3回交通事故に遭い(自分で起こし)、加納さんはすっかり交通事故で保険金を得る行為に依存するようになってしまいました。
確かにケガはしますが、軽いケガで後遺症も残りません。治療費は全額出してもらえますし、痛くなくなってもしばらく通院を続けていれば、その分高額な慰謝料を払ってもらえます。会社を休んでも休業損害が出るので損になりません。
そこで加納さんは、4回目の交通事故を起こそうと決めました。
手口は2回目と同じです。家の近くを歩いている時にゆっくり走っている車に近づいて、腕をぶつけて交通事故を起こす計画を立てました。
保険会社から保険金支払いを拒絶される加納さんは計画通り、4回目の交通事故に巻き込まれることができました。しかし今回は、前回までのようにはうまく行きませんでした。保険会社が保険金の支払いを拒否してきたのです。
保険会社は理由をはっきり言いませんでしたが、「当社の規定により支払いができない」とだけ言われました。
当然かとも思えますが、保険会社は「加納さんが故意に交通事故を起こそうとしているのではないか?」と疑っていたのです。
治療費も出ないので、加納さんは自費で病院へ通わねばなりませんでした。もちろん休業損害も慰謝料も出ません。軽いケガとはいえ無傷ではないので、加納さんは痛みにも耐えなければなりませんでした。
●自業自得の悲しき末路とは… 続きは後編【「交通事故で100万円もらった」“成功体験”繰り返した男が見た地獄】で紹介します。
福谷 陽子/法律ライター・元弁護士
京都大学法学部在学中、司法試験に合格。勤務弁護士を経て、法律事務所を設立し、約7年間独立営業。中小企業法務や債権回収、不動産の任意売却やカード破産などの案件を多数手がけた。悪徳商法、投資詐欺などの消費者問題にも深い知見がある。現在は弁護士時代の経験を活かして、各種の法律メディアにて執筆、監修、編集、さらに法律事務所のWebマーケティングなどに携わる。
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