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「住まない自宅」放置で近隣トラブルも…家族で決めたい“我が家の最期”

Finasee / 2023年4月7日 11時0分

「住まない自宅」放置で近隣トラブルも…家族で決めたい“我が家の最期”

Finasee(フィナシー)

第3回では(「まさか我が家が…」相続争いに陥る家族の“意外な共通点”)、遺言が必要な家族の特徴や、親と遺言作成を進めるコツについて解説しました。

今回は、親亡きあとの自宅の行方をどうするのか、親の生前に家族で話し合う必要性について説明していきます。

兄弟姉妹の考えを整理する

親の死後に相続人同士で問題が起きやすいのが、明確な分割が難しい不動産の相続です。また、昨今は空き家の増加も問題となっています。親が自宅を所有しているのであれば、家族で「親亡き後の自宅」をどうするか事前に話し合っておくと、不要なトラブルを防ぐことができるでしょう。

子が複数いる場合、兄弟姉妹で「将来自宅に住みたいと思っているか」をそれぞれに確認します。自宅に住みたいと思う子がいれば、その人が自宅を相続することになります。

ただし、相続する自宅は「流動化できない資産」となり、親の老後生活に必要な資金を捻出するために活用できなくなることに注意してください。この場合は、親の老後資金を親の資産だけで賄わなければいけないため、今後のキャッシュフローを考えることが必須です。

反対に、自宅に住みたい子どもがいない場合は、将来的に自宅を流動化して親の老後資金の一部に充てることができます。

親の意向を確認する

子どもたちの意見が整理できたら、いよいよ親に考えを聞いていきます。両親が生きている間は、自宅を処分する選択肢はほとんどないと思いますので、両親には「親のどちらかが亡くなった場合、どこで生活していきたいと思っているか」を聞くといいでしょう。

おそらく、「判断能力があり身体も動かせるうちは自宅で過ごしたい」、「判断能力がなくなったり、身体が思うように動かなくなったりした時は施設で生活したい」と考えている人が多いのではないかと推測します。

将来的に施設での生活を希望している場合でも、いざその時が来てから考えるのでは、スムーズな移動は難しいものです。現時点で施設で生活を希望する意思が確認できたなら、どのような施設で暮らしたいのか、ということから一緒に考え始めるとよいでしょう。

自宅の価値を確認する

子が将来自宅に住まないと考えている場合は、不動産の流動化の方法を探るためにも、自宅の価値を確認しておくといいでしょう。その際、自宅に関する情報や書類の所在をあらかじめ親に聞いておいてください。相続が起こった後に書類を探し出すのは、結構大変です。

特に所在を確認すべき書類は、自宅の土地・建物の登記済証(権利証)、建物確認通知証・検査済証、測量図・建物図面・建築協定書などです。自宅がマンションの場合は、購入時のパンフレットやマンションに関する規約や説明書、といった書類です。

次に、もし売却するならば価額はどのくらいになるのかを調べてみると参考になります。簡単な方法として、インターネットを利用して、宅建業者のサイトに自宅の情報を登録すると調べることができます。

デメリットとして、サイトによっては情報を登録するとしつこく営業連絡が来るようになってしまうので、煩わしいと思う方は注意してください。

自宅の価値を調べるもう一つの方法は、インターネットを利用して、買う人の視点から近隣の売却物件情報を調べることです。

ただし、不動産は自宅に接する道路の状況や土地の形、建築基準法などの法の基準によって、個別性が非常に高く価額差も生じやすいものです。調べた価額はあくまで参考程度にとどめておきましょう。

不動産は売却して換金する以外にも、賃貸する、リースバックやリバースモーゲージローンを活用するなど、流動化する方法は複数あるので、情報を収集してみてください。

資産に占める自宅の割合を調べる

その他に確認しておくべきこととして、親の資産全体に占める自宅の割合はどのくらいなのか、親とのコミュニケーションを通して推定していかなければなりません。

資産における自宅の割合が高ければ、後々さまざまな準備が必要になってきます。また、不動産などの固定資産の割合が高ければ、子が自宅を相続する場合に、遺産分割や相続税の納税で問題が生じることもあります。

この段階ではより正確な不動産の価額を把握したいので、親に「自宅のことを調べたい」と伝え、固定資産税・都市計画税納税通知書(以下、固定資産通知書)を開示してもらいましょう。

親が自宅以外に不動産を所有していれば、自宅以外の不動産が記載されている固定資産通知書もあわせて開示してもらいます。そうすれば、不動産の価額を取得することができます。

資産全体の中で自宅が占める割合を知るには、他の資産についても把握しなければならないため、資産区分ごとに情報を入力できる表計算シートを作って活用する方法がおすすめです。

現金預金、金融商品、亡くなった時に受け取れる生命保険金、不動産、自社株式(親が会社オーナーの場合)などと区分を分けて、親から取得できた情報を順次入力していくとよいでしょう。

「相続税がかかるか」を調べる方法

固定資産通知書に記載されている金額は、不動産の固定資産税評価額です。建物の固定資産税評価額は、そのまま相続税評価額として利用できますが、土地の相続税評価額は、固定資産税評価額とは異なります。

しかし、次の計算でなら推定することが可能です。

・土地の相続税評価額の目安=土地の固定資産税評価額÷0.7×0.8

・相続税の基礎控除額=3000万円+法定相続人数×600万円

また、上記の式で算出した結果を用いて、

・土地の相続税評価額の目安+建物の固定資産税評価額>相続税の基礎控除額

となった場合は、相続税が課税される可能性があると覚えておきましょう。

***
 

親と財産について話す時は、相続税のことをきっかけに話を広げていくと、協力的に資産情報を開示してくれるかもしれません。また、兄弟姉妹と話をする時も、「将来自宅に住みたいなら、配偶者居住権というものがあって、相続税を減らすことができるかも」などと話を進めると興味を持ってもらいやすいでしょう。

近頃、世の中では空き家の増加が問題となっています。しかし、本来この問題は親と子がしっかりと資産の情報とお互いの思いを共有できていれば、減らすことができるものだと筆者は考えています。

相続で問題が起こってしまってから焦らないためにも、親が存命のうちから家族で自宅について話し始めてみてはいかがでしょうか。

石脇 俊司/継志舎 代表取締役

日本証券アナリスト協会検定会員・CFP・宅地建物取引士。外資系生命保険会社、日系証券会社、外資系金融機関、信託会社を経て、株式会社継志舎を2016年に設立。 金融機関での経験を活かし、企業オーナーや資産家の資産承継対策の家族信託組成とその後のサポートに取り組む。 不動産会社、生命保険会社、証券会社へ相続・事業承継に関する業務推進のコンサルティング業務も行っている。 家族信託の組成を支援するコンサルティングプラットフォーム『信託の羅針盤トラコム(r)』の開発責任者。 著書に『中小企業オーナー・地主が 信託を活用するための基本と応用』(大蔵財務協会)、『税理士が提案できる家族信託 検討・設計・運営の実務』(税務経理協 会)、『信託を活用した ケース別 相続・贈与・事業承継対策』(日本法令)などがある。

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