1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. 経済

団塊ジュニア世代が直面する 「2040年問題」…悩める5人がFPに相談

Finasee / 2023年3月20日 11時0分

団塊ジュニア世代が直面する 「2040年問題」…悩める5人がFPに相談

Finasee(フィナシー)

一般的なマナーとして、他人に対して不躾に年齢を尋ねることが失礼にあたるのは、言うまでもありません。ただ、将来に向けての資産形成に関するさまざまな判断を行う上では、年齢は重要な要素の1つとされています(*1)

さらに、本年に49歳から52歳になる、一般に「団塊ジュニア」と呼ばれる世代については、別の切り口に基づいても専門家がその資産形成のあり方などに特に注目しているのはご存じでしょうか。例えば、社会保障制度の研究者として日本を代表する一人、清家篤氏(慶應義塾大学・名誉教授)(*2)は「団塊ジュニア世代」について、次のような指摘を行っています 。

①団塊世代(1947~1949年に毎年約270万人誕生)が75歳以上を迎える2025年問題が重要視されているが、より深刻なのは団塊ジュニア世代(1971~1974年に毎年約205万人誕生)が全員65歳以上となる2040年問題
②団塊ジュニア世代が労働市場に入ってきたときはバブル崩壊後で、非正規雇用も多く生涯賃金が低い集団
③世代別の給与額を見ても、他の世代がプラスのときでもマイナス、他の世代がマイナスのときはさらにマイナス幅が大きいという統計があり、この低さは年金額にも反映される可能性(非正規雇用者のままで国民年金にしか頼れない人が多かったり、厚生年金に加入していたとしても現役時代の平均給与が必ずしも高くなかったりする可能性)
④団塊ジュニア世代にハンディがあるのは、生涯賃金が低いだけでなく、団塊3世にあたるような、この世代を支える人口ボーナスが存在せず、2040年には労働力人口が5,500万人を割り込み(直近の6,700万人から1,000万人超もの減少)、無策のままでは社会保障制度の持続可能性が低下する懸念

そして、こうした懸念に基づいて「団塊ジュニア」世代が全員65歳以上になるタイミングを取り上げて、「2040年問題」(*3)と呼ばれていることはご存じだったでしょうか。

(*1)例えば、知るぽると「資産形成。お金にも働いてもらうという考え方」金融広報中央委員会HP、(https://www.shiruporuto.jp/public/document/container/choiyomi/choiyomi016.htmlを参照。
(*2)清家篤「2040年問題に備える」(アカデミア、2019年冬号 Vol.128、https://www.jamp.gr.jp/wp-content/uploads/2019/12/128_07.pdf)、同「生涯現役社会のための働き方改革と社会保障制度改革」(年金時代HP・企業年金年金数理人会創立30周年記念行事講演会・シンポジウム(要旨)、2019年6月17日、https://info.shaho.co.jp/nenkin/trend/201906/5690)、同「2040年問題に備える」(医療と社会、Vol.29 No.4 2020、https://www.jstage.jst.go.jp/article/iken/29/4/29_29-446/_article/-char/ja/)。
(*3)井潟正彦「はじめに(補論)」(「2041 年、資産形成をすべての⼈に けん引役は団塊ジュニア世代 〜8 つの Actions と 12 のアイデア〜」、投資信託協会、2022年7月12日、https://www.toushin.or.jp/statistics/Tsumiken/hokokusyo/)も参照。

「2040年問題」にどう取り組んだらいい?
やさしく解説する読み物を公開

もちろん、こうした議論は政策的なインプリケーションの検討を主な目的に、経済全体を巨視的に、平均的に捉えての議論ですから、一概に「団塊ジュニア」世代の家計に個別にあてはまるわけではありません。

特に同世代は、未曾有の就職氷河期を経験した上に、就職後も給与が必ずしも従前の世代ほど伸びないような経済・社会環境の下で、「未婚化、非婚化、非正規雇用、パラサイトシングル、共働き世帯の急増等、多様化の進展という点ではフロンティア」(牛窪恵氏の投資信託協会「つみけん」でのプレゼンテーション内容から )(*4)を担ってきたことから、従前の世代のロールモデルをそのまま受け入れず、さまざまな新しいライフスタイルや価値観を見出してきたとも評価されています。

団塊ジュニア世代の個々の家計が老後に向けての資産形成、ひいてはライフプランニングのあり方を検討するにあたって、従前によく提示されていたような何か標準的なモデル (*5)が1つあれば済む、とはおよそ考えられません。

昨年7月12日、そうした家計の多様性のフロンティアになった「団塊ジュニア」世代に焦点を当てて、彼らの老後に向けた資産形成を応援するために、極めて画期的な(短い脚本のように読みやすい)無料でダウンロードできるデジタルブックが発行されたのはご存知でしょうか。投資信託協会による「別冊 つみけん2021報告書第三部 『あなたに世界の成長を届ける』〜大切なのはライフプランニング〜」です(*6)

5人の「団塊ジュニア」世代プラス前後の方々(当デジタルブックでは1967年~1977年生まれを「アクティブミドル世代」と呼んでいます)が、お互いに異なるライフスタイルに基づきながら、自分なりに充実した人生を過ごすことを目的に『ファイナンシャル・プランナー(FP)との会話』を通じて、家計の見直しに取りかかる様子が親しみやすく、平易に描かれています(あくまで仮想で、実在の人物ではありません)。

当デジタルブックの副題には「アクティブミドル世代。さあ、ここから!仕事も投資もカッコ良く。」というメッセージが添えられていることからも、同世代を応援しよう、寄り添おうとする熱意に溢れた読み物になっていそうなのが感じられるのではないでしょうか。

(*4)牛窪恵「団塊ジュニア世代の意識 ーマーケティングの観点からー」(「2041 年、資産形成をすべての⼈に けん引役は団塊ジュニア世代 〜8 つの Actions と 12 のアイデア〜」、投資信託協会、2022年7月12日、https://www.toushin.or.jp/statistics/Tsumiken/hokokusyo/)。
(*5)例えば、総務省が定義する「標準世帯」。因みに大和総研・是枝俊悟主任研究員によると、総務省が定義する標準世帯は現在、総世帯数の5%にも満たないとのこと。是枝俊悟「総世帯数の5%にも満たない「標準世帯」」(大和総研HP・コラム、2018年7月10日、https://www.dir.co.jp/report/column/20180710_010074.html)。
(*6)投資信託協会は、投資者の保護を図るとともに、投資信託等の健全な発展に資することを目的に設立された一般社団法人で、主に投資信託委託会社等を会員とする金融商品取引法上の自主規制機関(https://www.toushin.or.jp/profile/mission/index.html)。筆者は「つみけん2021報告書」を議論した研究会にオブザーバーとして参加。

日頃感じているようなお金の疑問や悩み…。
5人のケースでライフプランニング

当デジタルブックに登場する5人(Aさん~Eさん)の仮想プロフィールを簡単にご紹介すると、次のようになります。「自分に似ているな、近いな」と感じる人物はいませんか?
 

Aさん
◇49歳の男性で既婚。中堅企業の管理職(別会社で長らく非正規雇用、転職経験あり)。
◇妻は教職。私立大学生の長男と公立高校生の長女(私立大学に進学か)。
◇世帯収入は1000万円、貯蓄は700万円。
◇45歳で買ったマンションのローン(返済期間残り26年)残高が約3600万円。
◇父親と妻の母親の介護も意識。
◇定年後も65歳まで働きたい。
◇老後の備えは公的年金、職場の一時金、企業型確定拠出年金。

Bさん
◇Aさんの元カノで48歳の女性。5年前に離婚し、私立高校生の一人息子と暮らすシングルマザー。
◇大手メーカー勤務で、年収は700万円、貯蓄は300万円。
◇家賃15万円の賃貸マンションに居住。
◇息子の大学進学後の海外留学希望を叶えたい。
◇自分の年金制度については把握していない。
◇仕事は60歳定年まで勤め上げるつもりだが、転職も機会があれば。

Cさん
◇Aさんの友人で48歳。Aさんの取引先の知人。
◇妻は専業主婦。国立大学生の長男、公立高校生の長女(私立大学に進学か)。
◇年収は500万円、貯蓄は100万円。
◇一年前にマンションを購入したばかりで、ローン(返済期間残り29年)残高が3000万円。
◇勤務先では活躍中だが契約社員のまま。
◇老後の備えは公的年金と企業型確定拠出年金(全額を預金)。そもそもFPに何を相談すべきか不明。

Dさん
◇48歳の男性で独身。Aさんの学生時代の友人。中堅IT企業のプログラマー(長らくフリーター後、現職で正社員に)。
◇父親は他界、父が建てた家に同居している母親の介護を意識。
◇年収は500万円、貯蓄はなし。
◇元公務員の母親は病気がちだが、年金や貯蓄を使い医療費などを自分でやりくり。
◇勤務先で加入予定の企業型確定拠出年金については詳しくない。
◇そもそもFPに何を相談すべきか不明。

Eさん
◇45歳の女性で独身。Bさんの学生時代の後輩。翻訳業でフリーランス(以前は10年ほど会社勤務)。
◇昨年父親が他界し、10年前に購入したマンションで母親と同居。
◇母親から生活費として月10万円を受け取り。
◇年収は400万円、貯蓄は500万円。
◇マンションのローン(返済期間残り25年)残高は約2400万円。
◇学生時代に留学した米国でよく耳にしたFPに相談できる機会を得てありがたい。 

こうしたプロフィールを持つ5人が各々、FPとどんな会話をしながら、どんな家計の見直しや将来への備えに取り組んでいくことになるか、どうしてそうした取り組みが必要になるかは、無料でダウンロードできる当デジタルブックをぜひご自身で読んで確認していただきたいのですが(繰り返しますが、短い脚本のようで取っ付きやすい読み物です)、FPが主に“何に注目点を置いてアドバイスを行ったか”について簡潔に示すと、次のようになります。ご自身が日頃感じているのと同じような、生活やお金に関する疑問や悩みなどがありませんか?
 

Aさん
〇老後(リタイアメント)の備え(プランニング)の基本
〇住宅ローンの仕組みや借り換え
〇保険の見直し
〇企業型確定拠出年金で積立投資

Bさん
〇ラテマネーやサブスクなどの支出見直し
〇教育費の具体的な目途
〇リタイアメント・プランニング
〇ねんきん定期便の見方
〇個人年金やiDeCo(個人型確定拠出年金)の活用

Cさん
〇高額療養費制度や傷病手当金といった公的給付制度の理解
〇保険の見直し
〇妻のパート開始による家計増収
〇リタイアメント・プランニング
〇企業型確定拠出年金で積立投資、また、つみたてNISA(筆者注:2024年からは後述する新NISAも始まる)でも
〇公的年金の受け取り方(繰り上げ・繰り下げ)

Dさん
〇母親の医療や介護に関連して自己負担の歯止めになり得る後期高齢者医療制度における高額医療費制度
〇同じく公的介護保険の高額介護サービス費制度
〇同じく高額介護合算療養費制度
〇母親の生活費と自分の生活費の区別
〇リタイアメント・プランニング
〇企業型確定拠出年金で積立投資

Eさん
〇確定申告
〇ねんきん定期便の見方
〇会社員と異なるフリーランスの保障やリタイアメント・プランニング
〇小規模企業共済、国民年金基金、iDeCoにおける掛け金の所得控除
〇iDeCoで積立投資

年齢的に老後のことが気になり始める世代ですし、頼れる次世代の人数が少ない「2040年問題」も議論されていることから、どんなリタイアメント・プランニングに取り組むべきかが、5人に共通の注目点になることは当然と思います。今後はおおむね65歳~70歳が最終的な退職年齢になるでしょうから、団塊ジュニア世代(当デジタルブックではアクティブミドル世代)は引退まで約20年という比較的長い時間を活用できるでしょう。

家計の見直しと共に、自身の状況に応じて企業型確定拠出年金やiDeCo、つみたてNISA(筆者注:2024年からは後述する新NISAも始まる)といった税制優遇のある制度で、積立投資を少額でも今から行うのが肝要であることがいずれの事例でも語られています。

また、5人に共通の切り口として「公的な給付制度が実はいろいろあるので、それらをきちんと理解しましょう、活用しましょう」という点もFPが強調している印象を受けました。国や自治体が準備している公的な社会保障制度を知ることは、将来の生活に関して漠然とした不安を引きずったままにしたり、過大に心配し過ぎて保険に入り過ぎたり、という苦境を避けるためにも極めて重要なことであり、家計の見直しの基本中の基本だと確信します。

YouTubeでVODを先に観てみませんか? 
新NISAのスタートも忘れずに

中には「私は活字が苦手だ」という方もいらっしゃることでしょう。嬉しいことに去る1月23日、当デジタルブックに掲載されているFPと5人の会話の様子が各々映像化され、投資信託協会のYouTubeチャンネルにVODとして公開されました。しかも1本がせいぜい10分程度とコンパクトな編集になっているので短編映画を見ているようです。正直に申し上げて、気軽さという点では当デジタルブックを読むより、このVODを観る方が断然お勧めです。

特に「自分はこれまでFPに会ったことがない。自分がFPからアドバイスを受けているような臨場感を体験してみたい」という方には見逃せないのではないでしょうか。「VODをまず観る→詳細を当デジタルブックで復習する(逆も可)」という使い方も効果的なはずです。

昨年末、「新しい資本主義」を掲げる岸田政権はその施策の1つである「資産所得倍増プラン」の第一の柱として、2024年1月よりNISA(少額投資非課税制度)の抜本的拡充・恒久化(新NISA)を行うことを2023年度与党税制改正大綱で決定しました。前述したように、世代全体として「2040年問題」が待ち受ける「団塊ジュニア」にとっては、家計の状況に合わせて引退までの約20年という時間を味方につけながら、新NISAをどのように活用していくのかは、他の世代よりも一層関心を高めざるを得ないのではないでしょうか。

しかも、投資信託協会が行った別の研究(*7)によると 、現在 40 代の団塊ジュニア世代の純金融資産残高平均値は20 年前の 40 代よりも減少しており、さらに、所得や金利の水準などが相対的に低下している環境に鑑みると、現在の 40 代が 20 年後に 60 代になったときには、現在の 60 代より純金融資産が少なくなるという「負の世代間格差」が生じる可能性が高いとのことです。自ら積極的に資産形成に取り組まないままでは、両親や叔父、叔母の世代と必ずしも同様の生活水準を享受できるとは限らないかもしれないという指摘です。

ただし、家計をどう見直し、新NISAにどう取り組むべきか、といったことを自分一人だけで調べ、考え、行動に移していくのは、情報収集や勉強などに手間や時間などもかかり、なかなか容易なことではありません。中には本来FPが相談相手になり得ること(*8)を知っていても、自分のお金の話をするのは恥ずかしい、上手く質問が出来そうにない、などと不安を感じている方々もいらっしゃるでしょう。

FPに実際に会ってみた場合にどんなヒアリングを受けて、どんな会話になりそうか? などについて少しでも予習できれば、そうした敷居も低くなるのではないでしょうか。論点や解説などについて物足りなさももちろんあるでしょうが、VODもセットになったユニークな当デジタルブックは取っ付きやすさ、分かりやすさを優先して短編的に制作されています。広く「団塊ジュニア」世代の方々にとって、まずはFP相談に向けて関心を持ち始める、あるいは最初の一歩を踏み出すための入門材料として活用されるようになることを期待します。

(*7)青山直子「日本の家計資産における世代間格差の逆転 -親世代より子世代が貧しくなる日本、現在の40代の資産形成の遅れと是正策-」(投資信託協会・調査広報室レポート、2022年1月24日、https://www.toushin.or.jp/files/statistics/67/R_02.pdf
(*8)なお、FPのタイプも一様ではない。例えば、有料・無料、専門・得意分野の違い、相談以外に金融商品取り扱いの有無、実務経験や能力・知見の豊富さ、認定資格の有無や種類など、さまざまな切り口でタイプが分かれる。信頼できるFPの探し方などについては、例えば、当デジタルブックの執筆者のお一人でもある山中伸枝氏による以下の金融庁HPへの寄稿などが参照になろう。山中伸枝「心とお財布が幸せになる!お金との付き合い方」(金融庁HP・NISA特設ウェブサイト・有識者コラム、2018年2月28日、https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/column/column-16.html)。

井潟 正彦/立教大学大学院 ビジネスデザイン研究科客員教授

大手邦銀、外資系信託銀行、シドニー大学留学(MBA)を経て、野村総合研究所に入社。野村総合研究所アセットマネジメント研究室長、野村ホールディングス経営企画部次長、野村資本市場研究所研究部長、同執行役員、同常務、野村サステナビリティ研究センター・シニアフェロー(兼務)などを経て、2021年4月より株式会社 助太刀 常勤監査役。2016年度より立教大学ビジネスデザイン研究科特任教授、2020年度より同客員教授。2022年5月より野村アセットマネジメント 資産運用研究所 アドバイザー。金融審議会「投資信託・投資法人法制の見直しに関するワーキング・グループ」専門委員、経済産業省「持続的成長への競争力とインセンティブ~企業と投資家の望ましい関係構築~」(通称・伊藤レポート)会議メンバーなども歴任。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください