販売会社は「ガバナンス」へ関心高めるが一歩先見る証券・IFA
Finasee / 2023年3月23日 19時0分
Finasee(フィナシー)
金融機関にとって「ガバナンス」は、近年になって非常に重要視される項目になってきた。販売会社が運用会社の「ガバナンス」を評価する視線も、年々厳しさを増していると考えられる。特に、運用環境が悪化した2022年は、運用商品のパフォーマンスが冴えなかったこともあり、「ガバナンス」には一段と厳しい評価になったと想像される。
金融リテール専門誌『Ma-Do』が実施した「運用会社ブランドインテグレーション評価2022」で、運用会社の「ガバナンス」に対する販売会社の業態別の評価をみると、銀行(地銀、第二地銀、ゆうちょ銀)では21年と22年の差が大きくないものの、証券会社では「経営陣の経験」、そして、IFAでは「顧客利益を重視するために役職員を評価する環境」への注目度が大きく上昇した。
「運用会社ブランドインテグレーション評価」は、投信販売会社が運用会社を評価する調査で、運用会社について「運用力」「商品開発力・企画力」「営業担当者・研修担当者の質」「サポート力」「ブランド力」「ガバナンス」の6つの軸で評価してもらい、得点順にランキングした。2022年調査は9月~10月にWEBで実施し、国内外の運用会社36社を評価の対象とし、310件の回答を得た。回答者の業態別構成は、地方銀行が41.1%、第二地方銀行が11.6%、ゆうちょ銀行・郵便局が16.1%、証券会社が7.5%、IFA(独立系ファイナンシャル・アドバイザー)が13.0%だった。
銀行で高まるダイバーシティへの関心運用会社の「ガバナンス」に関する販売会社の評価は、評価の主軸になっている3項目について銀行の評価は21年と22年で大きな変化はなかった。「受益者本位の商品組成や効率的な運用」は、地銀が21年の57.5%が22年は59.0%、第二地銀は47.1%から61.0%、ゆうちょ銀・郵便局は55.3%が51.0%という結果だった。「経営陣の資産運用ビジネスに関する経験・理解」については、地銀が21年の55.0%が22年は55.6%、第二地銀は55.9%が48.8%、ゆうちょ銀・郵便局は55.3%が53.1%だった。そして、「顧客利益を重視するために役職員を評価する環境」は、地銀が45.8%から49.6%、第二地銀が35.3%から41.5%、ゆうちょ銀・郵便局は44.7%が42.9%という結果で、第二地銀において、最も重要視する項目が「経営陣」から「役職員」へと移動する変化はあったものの、21年と22年で評価ポイントに大きな変化はなかった。
ただ、銀行においては「多様な人材の活用を推進している」(=ダイバーシティ)という項目について、回答率は依然として低いものの、傾向として評価ポイントが揃って上がっている。地銀が12.5%から22.2%、第二地銀は14.7%が22.0%、ゆうちょ銀・郵便局は17.0%が28.6%になった。
「多様な人材の活用」は、一般社会においても重要な社会課題になっている。運用会社にとっては、多様な人材や価値観を活用することによって、テールリスク(まれにしか起こらない想定外のリスク)の回避などリスク管理の高度化や、反対に、見過ごされがちな収益機会の獲得の可能性を高めることなどに役立つと考えられている。ダイバーシティは、今後ますます重要視されることになると考えられ、販売会社での評価の推移にも注目していきたい。
証券・IFAでは目先の利益より将来性に期待一方、証券会社やIFAといった販売会社では、運用会社の「ガバナンス」に対して21年と22年の間で目立った変化があった。証券会社は「受益者本位の商品組成や効率的な運用」について21年の36.4%が22年は57.1%に大幅に高まり、また、「経営陣の資産運用ビジネスに関する経験・理解」という項目も21年の54.5%が22年は67.9%になった。価格変動商品の取り扱いに長けている証券会社にあっては、22年の市場環境のように運用が厳しい中にあっては、目先のパフォーマンスよりも、中長期的なパフォーマンスを左右する「ガバナンス」に関して関心を高めたと推察される。
IFAでは、「受益者本位の商品組成や効率的な運用」について21年の52.6%が22年は64.9%に、そして、「顧客利益を重視するために役職員を評価する環境」が同じように52.6%から64.9%に評価ポイントを高めている。もともと「ガバナンス」については他の業態よりも評価の優先度を高くする傾向があったが、22年のような運用環境が厳しい中にあって一段と「ガバナンス」を重視する姿勢を強めたということだろう。
証券やIFAという価格変動商品の取り扱いに慣れた販売会社では、足元のパフォーマンスが期待できない中にあっては、より長期の目線で運用会社を評価する機運が高まっているのは興味深い。「今がダメなら、今後の期待を高める」というしたたかさが感じられる回答だ。
Finasee編集部
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