備えて得する“新NISA”― プロが教える後悔しない「投資計画」
Finasee / 2023年4月4日 11時0分
Finasee(フィナシー)
前編では、新NISAの前準備として「旧NISA(※)を使い切ること」が必要な理由を解説しました。後編では、旧NISAで投資する際の注意点や、証券アナリストである私の今年の投資プランをご紹介します。
※現行のつみたて・一般・ジュニアNISAを総称して「旧NISA」と表記しています。
■前編:「新NISAは『前準備』が超重要! 知れば得する2023年の動き方」
2023年は「特定口座での投資」は我慢これまではとにかく「年内に旧NISAを徹底活用すること」をおすすめしてきましたが、ここで1つ注意して欲しいことがあります。それは、旧NISAの枠を超えた投資(特定口座での投資)をなるべく避けることです。
例えば、お子さんが1人いる方で、2023年に考えるべき優先順位は以下の通りです。
①つみたてNISA枠で投資(投資枠:40万円)
②ジュニアNISA枠で投資(投資枠:80万円)
理想は、上記のようにつみたてNISAを最優先で使い、余裕があればジュニアNISAでも投資をしていくことですが、上記の①②の枠(合計120万円)を両方使い切ったとき、もしかしたらこう考えるかもしれません。
「思っていたより投資って⾯⽩い! あと少しだけ投資してみよう」
もちろん、旧NISA枠以上に投資をすることは可能です。単に税⾦がかかるだけなので、枠外の投資が禁⽌されているわけではないのですが、ここで少しだけ我慢してください。
例えば、2023年に使う当てのない貯⾦200万円があったとします。そのうち120万円をつみたてNISAやジュニアNISAに投資したとして、余った80万円はどうするか。これは「そのまま貯⾦」がベストな選択です。なぜなら、2024年になってから新NISAの投資に80万円を使うことこそ、税制メリット的に正解だからです。
繰り返しますが、2024年からの新NISAでの非課税枠は元本1800万円まで。そんな中、2023年中に焦って投資額を増やす必要はありません。多くの⽅はかなりの年⽉をかけて新NISAで投資していくことになりますので、今後の投資人生を見据えて、ぜひ「2023年は旧NISA枠を使い切ったらそれ以上投資しない」という選択をしてみてください。
2023年までに買った株や投資信託はどうなる?基本的な動きとして、2023年中は旧NISA枠内のみの投資でOK。少し物⾜りなく感じても、枠外で投資をすると税制メリット的には損をすることになります。
なお、ここで覚えておきたいのは、NISA枠外で投資した株や投資信託をNISA口座に移すことは制度上不可能ということです。新旧どちらの制度も、NISAを使う条件は「NISA口座内で株や投資信託を買うこと」とされているからです。
さらに、2023年までに旧NISAで買った株や投資信託も、2024年以降の新NISA口座に移すことはできません。この点からも、今年は枠外の投資を控えるのが無難と言えるでしょう。
例外として「今、絶対にこの商品を買わないと!」という確信があれば、NISAの枠外で投資するのも1つの選択肢になります。例えば、2023年に株価が⼤暴落するなどして、今が底値と確信できるベストタイミングで買うことができれば、少しぐらい税⾦⾯で損をしようが⼗分すぎる利益が得られます。
とはいえ、やはりタイミングを見極めることは難しいので、
●NISAの枠外で投資すると余計な税⾦がかかるので避ける
●2023年に旧NISAを使い切り、お金が余った場合は新NISA⽤に置いておく
というスタンスで動くのが最善です。
ちなみに、既に旧NISA口座を持っている人は、新NISA口座の開設手続きは不要となる予定です。逆に言えば、旧NISAを使ったことのない人は「2023年中に旧NISA口座を開設しておくこと」が新NISA口座開設の準備になると言えます。そして少額でもいいので旧NISAで投資をしておけば、新NISAに向けた練習にもなるでしょう。
「今年の投資プラン」はこれ!では、実際に証券アナリストでいち個人投資家でもある私が、2023年にどのような投資計画を立てているのか、参考までにご紹介します。
前提条件として、私は現在34歳で、妻と娘2⼈(4歳・1歳)の4⼈家族です。
1.夫婦2人分のつみたてNISA枠消化まず2023年に最優先で⾏うのは「夫婦2⼈分のつみたてNISA枠の消化」です。つまり、40万円×2⼈分=80万円。この80万円の枠を優先的に使って投資していきます。
投資する商品は私と妻でそれぞれ⾃由に決めています。妻は保守的にリスクの低い商品を選んでいますが、私は多少のリスクを受け⼊れ収益重視で投資しています。
そんな私がつみたてNISAで投資する商品の9割は、「eMAXIS Slim⽶国株式(S&P500)」です。ご存じの方もいるかもしれませんが、これは⽶国を代表する約500の企業から成る「S&P500」という株価指数に連動する商品で、簡単に⾔うと⽶国全体の株価と連動する投資信託です。この商品の特徴は信託報酬(手数料)が年間0.0968%ととにかく安いこと。毎年発生するコストを抑えられるため⻑期保有には⾮常に向いています。
もちろんリスクが伴うため、大暴落などが発生すれば⼀時的に損する可能性は理解しておく必要があります。しかし、米国経済は歴史的にも上昇を続けており、10年、20年といった⻑いスパンで考えると投資する価値は⾮常に⾼いと私は考えます。
なお、つみたてNISAの⾮課税期間は20年間ですので、よほどのことがない限り、つみたてNISA枠で買った80万円分の投資信託は20年間寝かせておくつもりです。そして、年内に買った投資信託を20年後にどうするかは今のところ未定です。
2023年中につみたてNISA枠で買った投資信託は、2043年になると自動的に課税口座に移されます。そのとき欲しいものがあれば現⾦化して使うなり、使い道がなければ課税口座でそのまま持っておくなり、20年後の状況に応じて判断しようと思っています。
2.子供2人分のジュニアNISA枠の消化夫婦2人分のつみたてNISA枠を使い切った後、次に私が優先するのが「⼦ども2⼈分のジュニアNISA枠の消化」です。つまり、80万円×2⼈分=160万円。2023年はつみたてNISA枠である80万円(夫婦2⼈分)の投資に加えて、この160万円の枠もすべて投資していきます。
私がジュニアNISAを使って投資するのは、「株主優待狙い」の個別株です。つみたてNISAでは基準を満たした投資信託しか買えませんが、ジュニアNISAでは投資信託だけでなく、個別株を買うこともできます。
正直なところ、優待株で大きく儲かることは少なく税制的なメリットも小さいのですが、優待品を家族で楽しむことができ子どもが投資に興味を持ってくれるという「金融教育」の価値も期待した投資です。これはあくまでも私の計画なので、非課税メリットを最大限に狙うのであれば、やはり収益性の高い「eMAXIS Slim⽶国株式(S&P500)」などを買うのが良いでしょう。
このように、2023年の私の投資計画である「つみたてNISA 40万円×2⼈」「ジュニアNISA 80万円×2⼈」を合わせると、合計で240万円を投資することになります。1年間で240万円の投資は家計的にかなり厳しいものです。
ここで私が使おうと考えているのが、これまで手を付けていなかった定期預⾦です。旧NISA枠は2023年を逃すと⼆度と使うことができないため、これまでコツコツ貯めていた「いざ」というときの定期預⾦の使いどきが、まさに2023年だと確信しています。この貯⾦を切り崩し、今年は何とか家族4⼈分の旧NISA枠を使い切るつもりです。
***なお、⽣活費にまで影響するようなら2023年中に旧NISA枠を無理に使い切る必要はありません。あくまでも、税制メリットだけで言えば2023年中につみたてNISA枠を使い切るべき! という考え⽅です。⾮課税制度の有無にかかわらず、「投資して良いのは余裕のあるお⾦」というルールは必ず守り、将来に備えていきましょう。
■前編:「新NISAは『前準備』が超重要! 知れば得する2023年の動き方」
※本稿は、2023年3月11日時点の情報をもとに執筆しています。
執筆/浅見陽輔
大阪府立大学大学院 生命環境科学研究科を卒業後、2013年に銀行に就職。10年のキャリアで、投資運用、リスク管理、法人・個人向け融資、システム部門を経験。証券アナリスト、FP2級、簿記2級、税務上級など20種類の金融系資格を保有。趣味は優待株投資と筋トレ。本業の傍ら、Kindle(電子書籍)作家としても活動中。著書に『図解 新NISA』『トクする株主優待の選び方』『最後のジュニアNISA』『絶対に続く筋トレ』などがある。
Finasee編集部
金融事情・現場に精通するスタッフ陣が、目に見えない「金融」を見える化し、わかりやすく伝える記事を発信します。
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