「債券パワード・インカムファンド(資産成長型)」はなぜ人気化したのか
Finasee / 2023年3月24日 19時0分
Finasee(フィナシー)
成績が振るわない中で資金が流入
「債券パワード・インカムファンド(資産成長型)」(愛称:パワード・インカム。以下同)は、2021年2月に設定された比較的新しいファンドです。設定来リターンは芳しくありませんが、最近になって資金が集まりだし、2023年3月に純資産総額が初めて600億円に到達しました。
【債券パワード・インカムファンド(資産成長型)】
好調とは言えないパワード・インカムは、なぜ投資家に選ばれているのでしょうか。
利上げ停止を見越して買いが集まるパワード・インカムは、アメリカの利上げ停止を予想する投資家の受け皿となり、資金が集まっていると考えられます。
アメリカは新型コロナウイルスの拡大を受け政策金利をゼロとしていましたが、2022年3月から利上げを開始しました。パワード・インカムは実質的にアメリカの債券に投資しますが、債券は金利が上昇すると一般に価格が下がるため、利上げ局面で債券型ファンドはあまり選好されません。パワード・インカムも、純資産総額を減らす状況が続いていました。
しかし、2022年後半から2023年にかけてパワード・インカムに資金が集まりだします。アメリカの政策金利は2023年2月までに4.50~4.75%へ引き上げられており、市場では利上げの停止が意識されるようになりました。金利の上昇が止まれば債券の下落圧力の低下にも期待できることから、パワード・インカムにも資金が流入したと考えられます。
【純資産総額の増減額】
高い利回りが期待できる点も、パワード・インカムが選ばれている理由の1つでしょう。
パワード・インカムは、基本的に「米国債」「ジニーメイ債(※)」「米投資適格社債」「米ハイイールド社債」に投資し、年率10%程度のインカム収入を目指します。2023年2月時点では、9.2%の利回りを確保しました。
※ジニーメイ債:ジニーメイ(米国政府抵当金庫)が保証する米国住宅ローン担保証券
【ポートフォリオ特性(2023年2月末時点)】
・利回り:9.2%
・平均格付け:BBB-
アメリカの金利が上昇しているからといって、10%もの利回りは簡単には実現できません。そこでパワード・インカムは、各資産に50~250%、全体では200~500%レバレッジをかけて投資します。レバレッジをかけることで実質的な運用額が大きくなり、投資額に対する利回りが向上することになります。
【投資資産比率(2023年2月末時点)】
比率 米国債 50% ジニーメイ債 50% 米投資適格社債 50% 米ハイイールド社債 241% 合計 391%
ただし、レバレッジをかけるとインカム収入の向上には期待できますが、債券価格の変動の影響もより大きくなります。パワード・インカムもこれまでインカム収入を積み上げてきましたが、金利上昇による債券価格下落によって打ち消され、設定来リターンはマイナスに陥りました(2023年2月末時点)。
米金利の横ばい~低下を予想する人におすすめパワード・インカムは、最大5倍までレバレッジをかけることから、債券の価格変動リスクが比較的高い銘柄です。金利上昇時には債券価格の下落をより大きく受けることになり、高い利回りの恩恵をうまく享受することができません。
反対に、今後アメリカの金利が低下するならトータルリターンは向上すると考えられます。またアメリカの金利が横ばいでも、インカム収入が積み上がることで基準価額は押し上げられることとなるでしょう。
つまりパワード・インカムは、アメリカの金利が上昇しない局面でパフォーマンスを発揮することが期待できます。アメリカ金利の横ばいまたは下落を予想する人は、パワード・インカムを検討するとよいかもしれません。
なおパワード・インカムは、債券への投資の際にスワップ取引を用いるため、為替の影響は限定的です。スワップ取引とは、実際に商品の受け渡しを行わず、その投資効果(リターン)のみの交換を行う取引を指します。したがって、リターン部分は為替の影響は受けますが、元本部分は原則として為替の影響がありません。円安が進んでも、基準価額の押し上げ効果は限定される点には注意してください。
【債券パワード・インカムファンド(資産成長型)の概要】
銘柄 債券パワード・インカムファンド(資産成長型)(愛称:パワード・インカム) 運用会社 SOMPOアセットマネジメント ファンドのタイプ 海外債券型(レバレッジ付き) 設定日 2021年2月26日 信託期間 2028年3月8日まで 決算日 3月8日 受渡期間 6営業日 販売手数料(最大、税込み) 3.3% 信託報酬(全体、税込み) 1.749% 信託報酬(販売会社、税込み) 0.99% 信託財産留保額 なし 販売会社 大和証券OKB証券
ひろぎん証券
執筆/若山卓也(わかやまFPサービス)
証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。
Finasee編集部
金融事情・現場に精通するスタッフ陣が、目に見えない「金融」を見える化し、わかりやすく伝える記事を発信します。
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