「投資で本当にお金は増える?」の疑問はナンセンスな“これだけの理由”
Finasee / 2023年4月10日 11時0分
Finasee(フィナシー)
近年、お金についての基礎知識を学ぶ「金融教育」が学校の授業で実施され、話題となっています。今や若者の自立に欠かせないとされる金融リテラシー。しかし「なぜ投資するとお金が増えるのか」「効率よくお金を増やす方法とは?」といった疑問に正確に答えられる自信のある“大人”はどのくらいいるでしょうか。
投資についてイチから学びたい!子どもや親からのお金の質問にきちんと答えたい! そんな声に寄り添うのが、投資こそ必須の「生涯保険」という信条のもと、長期資産形成や実体経済に関する執筆を専門とする日野秀規氏。話題の書籍『こどもと一緒に読む投資の話』では、家族三世代全員が理解できるお金の増える仕組みを解説しています。今回は特別に、第3章『お金を「ふやす」ってどういうこと?』の一部を公開します。(全4回)
●第1回:大人なら説明できるようにしたい!「株でお金が増える」本当の仕組み
※本稿は、日野秀規著『こどもと一緒に読む投資の話』(ぱる出版)の一部を再編集したものです。
金融市場には400年以上の歴史がある投資は理屈ではもうかるものだけど、場合によってはうまくいかないこともある、というお話をしました。そんなにあやふやなものに、自分の大切なお金を投じることはできないと思った人がいるかもしれませんね。
株式や債券を取引する金融市場には400年以上の歴史があり、細かく値動きをたどれる期間だけでも200年分の歴史があります。株式投資はときどき、だいたい長くて10年程度の期間、うまくいかないこともありました。それでも、長くやればやるほど投資家をもうけさせてきたことを知ってほしいのです。
10年もうまくいかない期間があったと聞くと、投資がこわくなってしまうかもしれませんね。この後でお伝えしますが、1990年以降、日本の株式は調子の悪い時期が長く続き、32年たったいまでも、当時より低い株価になっていたりします。
実は、そのこわい気持ちが大事なのです。こわさをがまんして投資をした人だけが、投資先の会社があげる利益の分け前である、配当をもらうことができます。
あなたが投資したお金がめぐりめぐって会社の役に立ち、成長すれば株価が上がる、という話は少し前にお伝えしましたね。このような投資のしくみが、実際にどれほど投資家をもうけさせてきたのかを知ってもらえば、きっとあなたのこわい気持ちは減っていくと思います。
株式投資は210年の間に投資資金を「約70万倍」にした上の図は、株式や債券などへの投資が昔から発達しており、くわしい記録が残っている米国で投資をした結果をグラフにしたものです。
米国の株式、長期国債、ゴールド(金)、短期国債に投資した結果を描いています。期間は1802年〜2012年です。
この期間には2回の世界大戦がありましたし、1970年代のベトナム戦争で米国社会は深く傷つきました。20世紀には世界恐慌、21世紀にはリーマンショックという経済危機があり、2001年にはニューヨークがテロ攻撃を受けました。世界が平和だった時期はなく、米国経済が大きな損害を受ける出来事はたくさんあったのです。
それでもグラフを見ればわかるとおり、どんな出来事も200年のグラフで見れば、ほんの小さな凹みにすぎません。長期間投資をしていれば、経済の傷は必ず回復し、株価もふたたび上昇していきます。
そして、長期国債・短期国債・ゴールドに比べて、株式投資がずば抜けて有利な投資の手段だったことも、一目でわかると思います。株式投資では、1802年に投資した1ドルが、210年の間に「約70万倍」になったのです! 株式投資の力を感じてもらえたでしょうか?
ものすごい増え方に感じられますが、1年ごとの投資成績に置き換えると、毎年6.6%の上昇になります。1万円を投資して、1年後に1万660円になるくらいですから、そうびっくりするような増え方ではないですよね。それでも毎年6.6%ずつ増えると、1万円が10年後には1万8,948円、20年後には3万5,904円、そして30年後には6万8,032円に増えます。そして、仮に同じ期間を定期預金に預けていた場合、現在の金利がこのまま続けば、30年たっても1万円は1万円のままです。
この運用成績は過去の米国のものですが、日本を含めた米国以外の国についても、成績の良しあしはあっても、長期間の株式投資ではみな投資資金は増えていました。
将来の日本や世界の株式で同じような運用成績があげられるかどうかは、未来のことなので断言はできません。とはいえ、考えてみてください。投資をする人の「お金をもうけたい」という気持ちは、過去も未来も違いはありません。であれば、人々の行動の結果である株価もそれほど大きくは違わないと考える方が、自然ではないでしょうか。
歴史とまったく違う、投資をした人が延々と損をし続ける未来がやってくると考えるよりは、投資がお金を増やす力を信じるほうが、自然ではないでしょうか。
債券投資ではお金は増えないの? いいえ、増えます!2ページ目のグラフをもう一度見てみましょう。
株式投資は200年の間、順調に右肩上がりになっています。それに比べて、長期国債と短期国債の成績が、途中から右肩上がりになっていないことに気がついたでしょうか?
長期国債と短期国債は、どちらも国が発行する債券です。満期(投資したお金が返ってくるまでの期間)と金利に違いがありますが、ここでは区別をせず、株式より安全な債券投資としてまとめてお話しします。
まず、このグラフを見ると債券投資がもうからないように見えてしまうのですが、そんなことはありません。
ポイントは、グラフの一番下に描かれている「米ドル」の線です。1950年くらいから米ドルの線がどんどんマイナス方向に進み、同じ時期から国債が横ばいになっているのがわかるでしょうか。
「米ドル」とは文字の通りで、現金を投資せず銀行にもあずけず、家に置いておいた場合です。保護者のかたには「タンス預金」という言葉がわかりやすいでしょう。1950年くらいからお金の価値がマイナスになっているのは、物価がどんどん上昇して、同じお金でも買えるモノやサービスがどんどん少なくなっていることを表しています。
つまり、この期間に債券投資が横ばいになっているのは、現金の価値がどんどん減ってしまう時期に、債券投資をしたことで投資した資金の価値を減らさずに済んだということです。債券投資も、株式投資ほどではありませんが、着実にお金を増やす力があります。
株式投資と債券投資で、それぞれどのくらいお金を増やす力があるか表にまとめました。投資資金1万円が、10年〜30年でどれほど価値が増えるかを示しています。
日本株は「オワコン」なのか?最後に、長期投資がうまくいかなかった、日本の例についてお伝えしておきましょう。保護者のかたのなかには、1990年以降、日本株の値動きを表す「日経平均」が低迷しており、30年以上たったいまでも過去の最高値を更新できていないことを知っている人も少なくないと思います。
その理由は、「バブルのあと始末に時間がかかった」からです。不動産と株式が両方とも価格が上がりすぎてしまった「平成バブル」がはじけてから、あと始末が最終的に済んだのは2003年だといわれています。
そして、2003年以降の株式の運用成績を見てみると、日本株式と欧州株式にはほとんど違いがありません。米国はこの10年ほど特別に株式投資の調子が良かったので例外となりますが、日本の株式が他の先進国に比べて、特別に調子が悪くもう未来がない、というような悲観的な話ではないのです。
今後は、日本株式は特別にダメだと決めつける必要はありません。分散投資をする時は、ぜひ日本株式を入れましょう。
●第3回(投資はギャンブル…ではない! コツコツもうける「超シンプルな投資方法」)では、株式とギャンブル、似て非なるものとされる2つの共通点について解説します。
『こどもと一緒に読む投資の話』日野秀規 著
発行所 ぱる出版
定価 1,540円(税込)
日野 秀規/個人投資ジャーナリスト・エディター
2級ファイナンシャル・プランニング技能士/AFP、キャリア・コンサルタント。20 年にわたる出版編集経験を活かし、個人の資産形成に役立つ最新の情報や考え方を、著書やSNSを通して分かりやすく発信している。
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