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経済と投資は別物! 「米国スゴイ、日本ダメ」を鵜呑みにしてはいけない理由

Finasee / 2023年4月10日 11時0分

経済と投資は別物! 「米国スゴイ、日本ダメ」を鵜呑みにしてはいけない理由

Finasee(フィナシー)

近年、お金についての基礎知識を学ぶ「金融教育」が学校の授業で実施され、話題となっています。今や若者の自立に欠かせないとされる金融リテラシー。しかし「なぜ投資するとお金が増えるのか」「効率よくお金を増やす方法とは?」といった疑問に正確に答えられる自信のある“大人”はどのくらいいるでしょうか。

投資についてイチから学びたい!子どもや親からのお金の質問にきちんと答えたい! そんな声に寄り添うのが、投資こそ必須の「生涯保険」という信条のもと、長期資産形成や実体経済に関する執筆を専門とする日野秀規氏。話題の書籍『こどもと一緒に読む投資の話』では、家族三世代全員が理解できるお金の増える仕組みを解説しています。今回は特別に、第3章『お金を「ふやす」ってどういうこと?』の一部を公開します。(全4回)

●第3回:投資はギャンブル…ではない! コツコツもうける「超シンプルな投資方法」

※本稿は、日野秀規著『こどもと一緒に読む投資の話』(ぱる出版)の一部を再編集したものです。

経済の勢いと株価の伸びが一致しないことはよくある

投資を少しでもかじっている人ならよく知っていることですが、もう10年以上の間、米国の株式は調子よく株価が上がってきました。2022年になってから、どうも調子がよくありませんが……。

これに対して、日本の株式は米国株ほどには株価が上がっていません(2022年10月現在)。なかには株価がものすごく上がっている企業もありますが、全体の平均で比べると、米国にだいぶ差をつけられています。その理由として、少子高齢化が進んでいることに加えて古くさい企業がいばっているので、日本の経済は米国に比べて勢いがなく劣っているからだ、という説明をされることがよくあります。

実をいうと、この説明はまちがっています。経済と株式投資は影響しあっている部分はありますが、同じではありません。

まず、そもそも経済とは何でしょうか。一般的には、国内で作り出したモノやサービスの価値(付加価値といいます)の合計金額が年々順調に増えているかどうかで、その国の経済のよしあしを計ります。この金額の中には企業があげる利益も含まれていますから、経済が伸びている国の企業のほうがもうかりやすく、だから株価も高くなるんだと考えてしまう気持ちもわかります。

とはいっても、世界の株式市場を見れば、経済が急な勢いで伸びている国の株価が、そうでない国の株価よりさえない例はいくらでもあります。さらに日本と米国では、適切な指標をみると、経済成長にそもそも大して差がありません。

米国スゴイ日本ダメという話は、米国経済のごく一部、異常にキラキラしているところだけをとらえて、全体を説明できたような気になっているだけです。

株価は「投資家の心理」に大きく左右される

経済が伸びているほうが企業がもうかるというのが本当なら、なぜそれが株式投資と直結しないのでしょうか。それは、株価の動きには企業の利益のほかに、「投資家の心理」が強くかかわっているからです。

読者のみなさんは、たとえばお年玉のような臨時の収入があった時に、つい気が大きくなってふだんよりお金をたくさん使ってしまったことがあるでしょう。世の中や自分の周りでブームが起こった時に、それに乗ってお金を使ったこともあると思います。株式投資をする人(投資家)の心理も、これとまったく同じです。

2010年代には米国株のブームが起き、あまりさえなかった日本株に比べて、米国株の株価はぐんぐん上昇していきました。ところが、実は2010年代の日本企業と米国企業の利益の伸び率はほとんど変わらなかったのです。企業のもうける力は同じように成長したのに、投資家は米国株ばかりに殺到しました。

買いたい人と売りたい人の間で取引が成立した時の値段が株価なので、投資家がどんどん株を買おうとすると、企業利益の大きい小さいとは関係なく、株価はどんどん上がってしまうのです。

企業の調子を見て投資をする人もいるので、経済と投資がまったく関係ないわけではありません。それでも、決して同じではないということがわかってもらえたでしょうか?

経済は足が遅く、投資は早い

経済と投資が同じではないとはいっても、特大の経済ショック(悪い出来事)が起きれば、さすがに株式市場も暴落することがあります。2008年に米国で起こり、世界の経済と株式市場を巻き込んだリーマンショックがそうです。

米国の大手銀行や証券会社が次々と破産した結果、その余波で世界中の経済がどん底に突き落とされました。世界各国の株価も、およそ1年半をかけて半分以下になってしまいました。このように、経済が極端に崩壊してしまうと株式投資も大きな打撃を受けます。

ここで1つ、大事なことがあります。政府や中央銀行は人々の生活や雇用(仕事)を守るための対策を行ない、経済を復活させようと努力します。この時、経済よりも株式市場のほうに対策の効き目が早くまわり、先に立ち直るということです。

経済が壊れてしまうと、仕事を失う人が出ます。仕事がなくなった人は、何とか生活していかなければいけないので他の仕事を探したり、そのために引っ越したりすることがあります。お客が来なくなったお店は、店じまいをして在庫や店の備品を売ってしまいます。

ここで、政府の対策が効いて経済が復活を始めても、一度失われてしまった働き手や施設がすぐ元通りになるわけではありません。いったん動きが止まった経済を再起動して、勢いに乗せていくには、それなりの時間がかかります。

一方、株式投資はどうでしょうか。中央銀行の対策によってお金が借りやすくなれば、投資家はお金を借りてガンガン株を買います。クリックでいくらでもお金を動かすことができる投資は、経済に比べて復活のスピードがずいぶん早いのです。

リーマンショックの時には、米国の失業率が経済ショック前の低さに戻るまで10年近くかかりました。これに対して、米国株は、5年半でショック前の高値に戻りました。結局、リーマンショックのどん底から世界の株価は約11年で4倍になりましたが、世界の経済は同じ期間に4割程度成長しただけです。

ここまでの経済と投資の関係を私たちの投資に活かすとしたら、どう考えたらよいでしょうか。

株価は投資家の心理に左右され、短い期間で大きく動くという特徴を利用するなら、他の投資家の心理を読んですばやく売買すればもうけられるかもしれません。ただし、他の投資家に裏をかかれれば、あなたが負ける側になってしまいます。

経済とは関係ないので投資の行く先は読めない、長期でお金が増えればいいと考える人は、コツコツと積み立て投資をしていくのがよいでしょう。余裕があれば、経済ショックで株価が大きく下がった時に追加で買うと、より投資成績が良くなるでしょう。

『こどもと一緒に読む投資の話』

日野秀規 著
発行所 ぱる出版
定価 1,540円(税込)

日野 秀規/個人投資ジャーナリスト・エディター

2級ファイナンシャル・プランニング技能士/AFP、キャリア・コンサルタント。20 年にわたる出版編集経験を活かし、個人の資産形成に役立つ最新の情報や考え方を、著書やSNSを通して分かりやすく発信している。

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