約2万人が死亡…「世界的流行」の新型インフルエンザで経済に大打撃
Finasee / 2023年4月24日 7時0分
Finasee(フィナシー)
・朝日新聞「捏造記事」掲載の大事件…非難殺到で信頼失墜、社長は辞任
新型コロナウイルスは感染症法上の「新型インフルエンザ等感染症」に指定され、その感染状況は厳格に管理されることになりました(2023年5月8日に季節性のインフルエンザと同等の「5類感染症」に見直される予定)。しかし、そもそも「新型インフルエンザ」とはどのような病気なのか、疑問に思う人もいるかもしれません。
新型インフルエンザは直近で2009年にメキシコで発生しました。WHO(世界保健機関)は同年4月24日、当該新型インフルエンザについて国際緊急事態を宣言します。感染は世界的に拡大し、2010年5月までに1万8000人以上が命を落としました。
新型インフルエンザについて理解するためにも、当時を振り返ってみましょう。
豚インフルエンザが人に感染新型インフルエンザとは、新たに生じたインフルエンザウイルスによって引き起こされる感染症を指します。
インフルエンザウイルスは動物も感染しますが、通常は異なる種のインフルエンザウイルスには感染しません。例えば豚が感染するインフルエンザウイルスは基本的に豚だけが、鳥が感染するものは基本的に鳥だけが感染します。
しかし、まれにインフルエンザウイルスが変異したり混ざり合ったりすることで、人から人へ感染する新しいインフルエンザウイルスが生まれることがあります。これが新型インフルエンザウイルスで、新しく出現するウイルスであるために多くの人は免疫を持ちません。このため、新型インフルエンザは大きな流行が発生しやすいとされています。
出所:政府広報オンライン 新型インフルエンザの発生に備えて~一人ひとりができる対策を知っておこう
2009年にメキシコで発生した新型インフルエンザウイルスは、豚インフルエンザウイルスが人に感染したものでした。4月12日にメキシコのベラクルスの町で最初の集団感染がWHOに報告され、5月16日には日本でも新型インフルエンザ患者が確認されます。6月11日にはWHOが世界的な流行を示す「フェーズ6」を宣言するに至りました。
新型インフルエンザは経済にも悪影響を与えかねません。メキシコは感染予防のため一部の工場で操業を停止させました。リーマンショックで既にダメージを受けていたメキシコ経済は、新型インフルエンザでさらなる打撃を受けてしまいます。
【メキシコの実質GDP成長率】
IMF「世界経済見通し(2022年10月)」より著者作成拡大画像表示
このように、新型インフルエンザは社会に深刻な影響を与える可能性があるため、季節性のインフルエンザよりも厳しい感染対策が取られるのです。
非合法な雇用に依存するメキシコ経済メキシコ経済は新型インフルエンザなどで一時停滞したものの、その後は順調に成長しています。世界銀行によれば、2021年のドル建て実質GDPはスペインに次いで世界15位となりました。経済大国アメリカに隣接する地理や1億2000万人を超える人口がメキシコの強みです。
しかし、メキシコは「インフォーマル経済」への依存が高い弱点があります。合法的な就労形態を伴わない経済活動を指す言葉で、メキシコでは露天商や行商人など非合法な事業所や経済主体の下で働く労働者や、合法的な事業所や経済主体の下で活動していながら就労形態が非合法な労働者が少なくありません。メキシコはGDPのおよそ23.7%が、雇用のおよそ55.8%がインフォーマル経済によって支えられています(2021年)。
出所:ジェトロ
インフォーマル経済に正規部門と同等の生産性があるなら、GDPと雇用に占める比率の差は小さくなるはずです。しかし両者に大きな開きがあることから、インフォーマル経済は生産性が低いと考えられます。メキシコ経済がより成長するためには、インフォーマル経済への依存からの脱却が必要なのかもしれません。
米ドルと高い連動性を示すメキシコペソインフォーマル経済への依存が強いという弱点はあるものの、メキシコは投資対象としても人気があり、銀行などでメキシコペソ建ての外貨預金や外国債券が広く販売されています。
メキシコペソの特徴として、米ドルとの連動性がよく指摘されます。直近1年間を振り返ると、同じような値動きになっていることが分かります。
【メキシコペソ円とドル円(2022年3月1日=100)】
Investing.comより著者作成拡大画像表示
米ドルとメキシコペソが似たような値動きとなるのは、メキシコとアメリカの結びつきの強さがあるでしょう。メキシコは貿易のほとんどをアメリカ相手に行っており、2022年上半期では輸出の8割以上を、輸入の4割以上をアメリカが占めました。
【メキシコの貿易相手上位5カ国(2022年上半期)】
出所:ジェトロ
また金融政策の方向性が似ていることも、両通貨が同じように推移した理由の1つでしょう。金利水準はメキシコの方が高いですが、過去1年間は政策金利を同じようなタイミングで上昇させています。
【メキシコとアメリカの金利】
Investing.comより著者作成拡大画像表示
この状況が続くなら、メキシコペソは米ドルと同じようなリスク(値動き)で、米ドルよりも高い金利収入が見込める通貨といえます。メキシコペソが人気な理由はここにあるのかもしれません。
しかし、メキシコペソと米ドルの高い相関が今後も続くとは限りません。両国の関係が悪化すれば貿易に影響が出ると考えられるほか、インフレ率の違いなどから金融政策の乖離も考えられます。またメキシコ独自の事情でメキシコペソが下落することもあるでしょう。投資の際は慎重に検討するようおすすめします。
執筆/若山卓也(わかやまFPサービス)
証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。
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