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新NISAも見据えて知っておくべき、日本株アクティブファンドの真の魅力

Finasee / 2023年4月11日 17時0分

新NISAも見据えて知っておくべき、日本株アクティブファンドの真の魅力

Finasee(フィナシー)

行動ファイナンスの分野では、投資家が海外投資に慎重になる結果、自国資産への投資割合が相対的に高くなる事象を「ホームカントリーバイアス」という。2000年代初頭ぐらいまでは、投資信託の世界でも日本株の「1兆円ファンド」が誕生するなど、ホームカントリーバイアスは確かにあった。

しかし、今はどうかというと、詳しく説明するまでもなく、「海外投資に慎重になる」どころか、むしろ海外資産が圧倒的な存在感を示す。積立投資の浸透に伴い、長期的に上昇が見込める資産として、米国を中心とした海外株式への流入が加速したことは皮肉だが、インデックスファンドが市民権を得た今、この流れはそう簡単に変わらないだろう。

では、個人投資家、とりわけ資産形成層の関心が今後日本株に向かうことはないのか。筆者は株式を通じて企業に投資することの意義や、日本株アクティブファンドの魅力を十分に伝えきれていないことが、個人投資家を日本株投資から遠ざけていると考える。

米国株と日本株ファンドの10年間のリターンに大きな差はない

市場全体に投資を行うインデックスファンドに限定すると、日本株はどうしても米国株に見劣りしてしまう。本連載でも繰り返し言及してきた通り、日本株投資の魅力はインデックスではなく、アクティブファンドや個別株にある。米国ほど株式市場全体に自浄作用が働いておらず、超過収益獲得の機会が多いというのが最大の理由だ。ここで少し例を紹介する。

簡易的な方法ではあるが、高いリスク調整後リターンを継続的に獲得しているファンドを抽出する目的で、今回は筆者が所属する楽天証券で採用している「楽天証券ファンドスコア」を使い、「国内株式」の分類に属するファンドを絞り込んだ。分類平均と市場平均の双方を恒常的に上回る「文句なし」のファンドを抽出すべく、「3年、5年、10年の3期間でスコア最高位の5(分類上位10%以内)または4(同25%以内)」というやや辛口の抽出条件を設定したところ、最終的に16本が残った。

 

さて、重要なのはここからである。

同様の条件を「米国株式-為替ヘッジ無し」分類で設定・抽出すると、わずか2本しか残らない。さらに興味深いのは、10年間の年率リターンで見た場合、意外にも、この2本と「国内株式」分類の16本に極端に大きな差は見られない。

 

日本の投資信託市場で米国株が売れ筋になったのは足元5年ぐらいのことで、米国株式市場が他の地域を大きく引き離し、急上昇を続けた時期と重なる。インデックスファンドを中心に米国株投資を始めた投資家は、まだ停滞期も低迷期も経験しておらず、今後数十年単位で資産形成を続ければ、そうした局面に遭遇する可能性があることを認識しておいたほうがよいだろう。

ファンド選びにはその理念に共感できるかも大切

また、日本株に限らないが、アクティブファンドを選ぶ際は過去の実績だけでなく、もう少しシンプルに、ファンドや運用会社の理念に共感できるがどうかということも大切にしてもらいたいと思う。この点、日本株のほうが個々のファンドの運用方針や、ファンドマネジャーの考えに共感しやすいのではないだろうか。

日本株ファンドの強みであり、よいところは運用担当者のコメントが比較的豊富に用意されている点にある。月次報告書や販売用資料のほか、最近はファンドマネジャーが出演する動画やコンテンツを活用したマーケティングも目立つようになった。

ファンドマネジャーがどのような視点で銘柄を選定しているか、今後の株式市場をどう見ているかなど、共感できる要素が多ければ多いほど長期保有のインセンティブになる。先の一覧の中なら、「One国内株オープン」がよい例だ。

アセットマネジメントOneは同ファンドを「ロングセラーシリーズ®」(10年以上の運用実績があり、パフォーマンスが相対的に良好と同社が判断したファンド)と銘打ってブランディングし、ファンドマネジャーの酒井氏が自ら動画に出演するなどして知名度を上げてきた。酒井氏の「どのタイミングで購入しても、半年以上保有していればTOPIXを上回るファンドを目指す」というメッセージは実に強力で説得力がある。

長い道のりで息切れしないために、まず日本株という選択も

なお、来年から始まる「新NISA」ではアクティブファンドだけでなく、個別株も成長投資枠の中で購入・保有することができるようになる。この背景にある政府の考えは、岸田内閣が掲げる「資産所得倍増プラン」に以下の通り明記されている。

「中間層がリターンの大きい資産に投資しやすい環境を整備すれば、家計の金融資産所得を拡大することができる。また、家計の資金が企業の成長投資の原資となれば、企業の成長が促進され、企業価値が向上する。企業価値が拡大すれば、家計の金融資産所得は更に拡大し、「成長と資産所得の好循環」が実現する」(第20回 社会保障審議会 企業年金・個人年金部会 「参考資料」より)。

インデックス投資しか知らない投資家が見落としがちな視点だが、株式投資の本質は、表面的な株価の上下に一喜一憂することではない。個別株投資であれ、投資信託を通じた形であれ、自分の投じた資金が「成長投資の原資」となって利益を生み出し、持続的に成長を続けることにある。

こうした株式投資の本質的な意義を根気よく啓発していくことで、日本株投資に興味を持つ人も増えるのではないか。日本の企業のほうが、自分の投じた資金がどのように活用されているかを実感しやすく、心から応援したいと思える企業や産業のイメージも湧きやすい。言うなれば、より手触り感のある投資ができる。

以上見てきた通り、個人投資家も単に「日本株はS&P500よりもリターンが見劣りする」と決めつけるのではなく、もう少し広い視野を持って日本株アクティブファンドを掘り下げ、また、株式投資の意義についても理解を深めていけば、これまでとは違った見方ができるようになる。

資産形成は長い道のりとなる。新NISAで制度が恒久化されればなおのこと、途中で息切れしないために、投資の「引き出し」を増やしていくことが重要だ。「灯台下暗し」の状態とも言える日本株を、その最初の引き出しにしてみてはいかがだろうか。

篠田 尚子/楽天証券経済研究所 ファンドアナリスト

慶應義塾大学卒業後、国内銀行を経て2006年ロイター・ジャパン入社。傘下の投資信託評価機関リッパーにて、投信業界の分析レポート執筆、評価分析などの業務に従事。2013年、楽天証券経済研究所入所。日本には数少ないファンドアナリストとして、評価分析業務の他、資産形成セミナーの講師も務めるなど投資教育にも積極的に取り組む。近著に『【最新版】本当にお金が増える投資信託は、この10本です。』(SBクリエイティブ)。

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