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「高い分配金」が魅力の“ある投資先”。投資に向いているのはどんな人?

Finasee / 2023年4月17日 17時0分

「高い分配金」が魅力の“ある投資先”。投資に向いているのはどんな人?

Finasee(フィナシー)

J-REITは投資家から集めた資金で商業施設や賃貸マンション、オフィスビルなどに投資し、賃料収入などから生じた利益を分配する商品です。市場の動向を見ながら、J-REIT投資が向いている人について解説します。

J-REIT市場の動向と今後の見通し

ニッセイアセットマネジメントが毎月定期的に公表している「J-REITレポート」には、東証J-REIT市場全体の動向と今後の見通し、投資部門別の売買動向、J-REITの投資先となる不動産市況などについて、各種データと共に詳細なレポートが記載されています。2023年4月に公表されたレポートでは、今後の見通しとして、慎重に上値を探る展開であることが指摘されました。

期待されること

同レポートでは、ポジティブな材料として、「春季の労使交渉」や「追加経済対策」への期待が挙げられています。

春季の労使交渉には、製造業の8割が労組の賃上げ要求に満額回答したこと、企業の賃上げに向けた動きが活発になっていることが該当します。この先、賃上げが実行に移されれば、インフレの進行具合による部分はあるものの、個人消費が活発になり、国内経済が好循環に入っていくという見方です。

これに加え、岸田内閣がインフレ対策として追加経済対策案を与党側に提示したという報道もありました。それも含めて国内景気が活況になれば、不動産市況が好転してJ-REIT市場の取引も活発になるとの見方もあるようです。

懸念されること

一方、ネガティブな材料としては、「信用不安」の広まりが指摘されています。

3月10日に米シリコンバレーバンク(SVB)が経営破綻したことで、2008年のリーマンショックを機に広まった信用不安が想起され、リスク資産への投資を回避する動きが強まりました。

シリコンバレーバンクの破綻が明らかになるのとほぼ時を同じくして、「全預金者を保護する」という政府の措置が行われたおかげで、信用不安はやや後退したものの、続いて米シグネチャーバンクが破綻。さらにスイスでは、3月19日に急激な資金流出で流動性不安に陥っていたクレディスイス(CS)が、UBSに買収されることになりました。

今は何とか騒ぎが収まっている状態ですが、3月中に連続して起こった米欧銀行の経営危機によって、信用不安が一気に加速しました。この手の信用不安の広まりは、投資家のリスク資産への投資を抑制する動きにつながります。

それらに加えて、もう1つ気になるのが「長期金利」の動向です。10年国債利回りは、信用リスクの高まりと共に瞬間0.25%程度まで低下したものの、再び上昇へと転じ、0.45%前後で推移しています。

今後、インフレの高まりと共に長期金利が上昇すれば、J-REITの分配金利回りとの差である「イールドスプレッド」が縮小し、利回りの優位性からJ-REITが買われるという動きに水を差されることも考えられます。

個人には「今」が良いチャンスかも?

同レポートでは、「J-REITは慎重に上値を探るものと想定します」という見通しを立てていますが、ネガティブ材料である信用不安や長期金利の上昇は、まさに足元で起こっている事象であるのに対し、ポジティブ材料は「そうなるかもしれないけれども、ならないかもしれない」程度の期待感であるため、ややネガティブ材料の方が強いようにも思えます。

現に東証REIT指数の値動きを見ると、2020年3月19日のコロナショックで1138.04ポイントまで急落した後、2021年7月13日には2200.02ポイントまで回復したものの、そこからは下落基調が続き、今年3月20日は1746.05ポイントまで下げています。

とはいえ、この調整局面は、個人がJ-REITに投資するには良いチャンスかもしれません。分配金利回りが上昇するのと同時に、NAV倍率が低下傾向をたどっており、J-REIT市場全般に割安感が高まりつつあるからです。

NAV倍率とは、J-REITの1口あたり純資産価格に対して、投資口価格が何倍まで買われているのかを示すもので、株式で言うPBRのようなものです。基本的に1.0倍だと、J-REITに組み入れられている物件の価値に対し、投資口価格が同等に評価されていることになり、1.0倍を下回ると、組入物件の価値に対し、投資口価格が割安に評価されていることになります。

同レポートによると、2003年3月末から2023年3月末までのNAV倍率の過去平均値は1.15倍ですが、これを19カ月連続で下回り、3月末のそれは0.93倍まで低下しているということです。

このように、分配金利回りとNAV倍率の両方から見ると、現状ではJ-REIT市場は割安水準にあると思われます。

個別銘柄を見ても、J-REIT市場が開設された当初から上場されている、「日本ビルファンド投資法人」の分配金利回りが4.13%(2023年4月10日時点)です。

同投資法人の分配金利回りは、リーマンショック前に一時期、2%を割り込んで1.9%台まで低下したこともありました。それだけ投資口価格が上昇したわけですが、今は逆に調整局面にあり、その分だけ分配金利回りが上昇しています。

同投資法人はS&Pの長期会社格付でA+、R&Iの発行体格付でAAを取得しています。全上場銘柄のなかでも最上位に位置する格付を取得しているJ-REITの分配金利回りが4.13%ですから、「高めの分配金を長期的に取得し続けていきたい」という運用ニーズには向いています。

まだ直接購入をしている個人は少ない

「高めの分配金を長期的に取得し続けていきたい」という場合、仮に2000万円の資金を年4%の利回りで運用したとすると、年間80万円のキャッシュフローを確保できます。年間80万円と言えば、1カ月あたり6万6000円強です。

毎月これだけの金額を生活費に計上できれば、老後の生活水準はかなり改善されるでしょう。しかも、J-REITのボラティリティ(価格の変動)は株式に比べて低めなので、保有資産の安全性を重視したい高齢者に適した投資対象だと言えます。

それにもかかわらず、J-REITを直接購入している個人投資家はまだ少数です。2023年1月に公表された、「上場不動産投資信託証券(J-REIT)投資主情報調査」によると、所有者別投資口数の割合(2022年8月時点)は、高い順に以下のようになります。

<所有者別投資口数>

投資信託・・・・・・・34.3%
外国法人等・・・・・・26.7%
都銀・地銀・・・・・・11.8%
個人・・・・・・・・・9.2%
事業法人等・・・・・・7.5%
その他の金融機関・・・4.3%
(都銀・地銀等、信託銀行、生命保険会社、損害保険会社を除く)
証券会社・・・・・・・4.2%
生命保険会社・・・・・1.3%
年金信託・・・・・・・0.6%

出所:「上場不動産投資信託証券(J-REIT)投資主情報調査」

もちろん、投資信託は大半が個人によって保有されていますから、間接的には個人マネーがかなりJ-REIT市場に入っていると考えられます。しかし、個人が直接J-REITを購入・保有している比率が9.2%、投資信託経由での保有が34.3%と大きく乖離しているのは、販売金融機関の営業戦略によるものと考えられます。

というのも、J-REITは株式と同じように市場で売買され、かつ投資信託のような「信託報酬」もないので、証券会社からすれば商売にならない商品です。対して、J-REITを組み入れた投資信託に組成し直せば、購入時手数料と信託報酬の一部を受け取ることができて商売的なうまみが増すため、それがこの数字の差に表れていると言えるでしょう。

J-REITの直接投資に向いている人

ところで、「J-REITには組入物件から得られる家賃収入の9割を分配しなければならない」という厳格なルールがあるのに対し、投資信託は投資信託会社が、その時々の状況に応じて分配金額を増減できるという違いがあります。

この違いから考えると、J-REITの直接購入は運用会社の恣意性が介入しない分だけ、分配金の安定性が高いとも考えられます。そのため、キャッシュフローの確保を重視した資産運用をしたいという高齢者の場合は、J-REITを組み入れた投資信託よりも、J-REITへの直接投資の方が向いていると言えます。

鈴木 雅光/金融ジャーナリスト

有限会社JOYnt代表。1989年、岡三証券に入社後、公社債新聞社の記者に転じ、投資信託業界を中心に取材。1992年に金融データシステムに入社。投資信託のデータベースを駆使し、マネー雑誌などで執筆活動を展開。2004年に独立。出版プロデュースを中心に、映像コンテンツや音声コンテンツの制作に関わる。

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