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「南の楽園」が過去最悪の財政破綻…債務8.4兆円、人口流出止まらず【5月3日はどんな日?】

Finasee / 2023年5月3日 11時0分

「南の楽園」が過去最悪の財政破綻…債務8.4兆円、人口流出止まらず【5月3日はどんな日?】

Finasee(フィナシー)

・楽天ポイント「改悪」に“過去最大”赤字…それでも会員数爆増の理由

日本がWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)に優勝し、野球に注目が集まっています。野球は既に多くの企業やスポンサーが参加する主要なスポーツですが、WBCでの活躍を受け、今後のさらなる発展を期待する声が聞かれるようになりました。

WBCの強豪といえば、カリブ海の国や地域を思い浮かべる人は少なくないでしょう。中でも「プエルトリコ」は決勝ラウンドの常連で、2013年と2017年に連続で準優勝しています。2023年大会は惜しくも準々決勝で敗退しますが、WBC史上初の完全試合を達成したチームとなりました。

そんなプエルトリコですが、実は経済でも世界的に注目されたことがあります。WBCで2度目の準優勝を果たした2017年の5月3日、プエルトリコがアメリカの地方自治体(※)として過去最大の負債を抱え破産手続きを開始したのです。

プエルトリコに何が起こったのでしょうか。当時を振り返ってみましょう。

※プエルトリコはアメリカの自治連邦区という政治的地位

8.4兆円の債務を残し破綻

プエルトリコは、2000年代後半から経済の悪化が目立つようになりました。背景には、プエルトリコに対する連邦法人税の優遇措置が1996年から段階的に廃止され外国籍企業の撤退が相次いだこと、リーマンショックによる世界的な景気後退のあおりを受けたことなどが指摘されています。

【実質GDPの推移(2004年末=100)】

IMF「世界経済見通し(2022年10月)」より著者作成

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【失業率の推移】

IMF「世界経済見通し(2022年10月)」より著者作成

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経済の悪化に伴い、プエルトリコ自治政府の財政も逼迫するようになります。2014年には主要格付け機関が財政悪化を理由にプエルトリコ債をジャンク等級に格下げしました。

そして2015年、ついにプエルトリコで公的債務の返済が滞り始めます。これを受けアメリカ本土で「プエルトリコ監視・管理および経済安定法 (PROMESA)」が2016年6月に成立し、プエルトリコは同法に基づいて債務処理が行われることとなりました。

プエルトリコは2017年5月、約740億ドル(当時の為替レート1ドル=113円で約8.4兆円)にも上る債務を抱え、破産手続きを開始します。これはアメリカの地方自治体の破産としては過去最悪の規模でした。

【主なアメリカの地方自治体の破産】
・プエルトリコ(2017年5月):740億ドル
・ミシガン州デトロイト市(2013年7月):180億ドル
・アラバマ州ジェファーソン郡(2011年11月):42億ドル
・カリフォルニア州ストックトン市(2012年6月):10億ドル
・カリフォルニア州サンバーナディーノ市(2012年8月):5億ドル

相次ぐ自然災害に人口流出…カリブの楽園の厳しい現実

プエルトリコは、債務のうち約330億ドルを約74億ドルにまで減らす債務再編計画を提出し、2022年1月に承認を受けます。同年3月に再編計画が発効し、プエルトリコは実質的に財政破綻状態から脱しました。

しかしプエルトリコは厳しい状況が続いています。破綻手続きの開始以降、同地域はハリケーンや地震といった自然災害が相次いで発生し、深刻な被害が生じました。プエルトリコは、財政再建を進めつつ災害からも復興させるという困難な状況を強いられています。

【近年発生したプエルトリコの主な自然災害】
・2017年5月:プエルトリコの破産手続き開始
・2017年9月:大型ハリケーン「イルマ」「マリア」が相次いで襲来
・2020年1月:地震が頻発し、非常事態宣言を発出
・2022年3月:再編計画が発効し、財政破綻状態から脱却
・2022年9月:大型ハリケーン「フィオナ」が襲来

自然災害は、人口流出の要因にもなっていると指摘する声もあります。プエルトリコはもともと景気の悪化に伴って人口の減少傾向が顕著だったところ、相次ぐ自然災害で米国本土へ移り住む人が増えているようです。2004年に380万人以上あった人口は2021年に約312万人にまで減少しました。人口の流出は今後も予想されており、2025年には300万人を割り込むと考えられています。

【プエルトリコの人口】

IMF「世界経済見通し(2022年10月)」より著者作成

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債務の大幅な削減で再出発を図ることとなったプエルトリコですが、その道のりは険しいものになりそうです。

意外に知らない外国の「飛び地」

アメリカは50の州で構成されていますが、その中にプエルトリコは含まれません。プエルトリコはもともとスペインの統治下にありましたが、1898年に起きた米西戦争の結果アメリカに割譲されました。対外的にはアメリカ連邦政府が主権を発揮しますが、域内の自治はプエルトリコ政府が担っています。

このように、欧米の先進国では歴史的な経緯から海外に領土を持つケースが少なくありません。例えば観光地としても人気の高い「ニューカレドニア」はフランスが領有権を持っており、タックスヘイブン(租税回避地)として有名な「ケイマン諸島」はイギリスの海外領土です。

【主な海外領土】

 

海外領土は本国への帰属意識が低い場合もあり、独立機運が高まると地政学リスクが意識され経済に悪影響を及ぼす可能性があります。海外に領土を持つこととなった経緯を調べてみると、面白い気付きがあるかもしれません。

もっとも、これらの地域は領土が非常に小さいことも多く、「あえて主要国に属していた方が都合がよい」という思惑が働いているケースもあるでしょう。

執筆/若山卓也(わかやまFPサービス)

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。

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