幸せなおひとりさま・不幸なおひとりさま—決定的な違いを生む要因は?
Finasee / 2023年5月12日 11時0分
Finasee(フィナシー)
おひとりさま4人に1人時代が到来したともいわれる現代。誰しも「おひとりさま」になりうると、“自分事”化しておく必要があります。
特に、医療や保険、年金、介護…といった“老後のお金”まわりで、「知らなかったがために損をする」事態を避けるためにも、早くから知識を身に付けるにこしたことはありません。
話題の書籍『おひとりさまが知って得する、お金の貯め方・増やし方』では、経済評論家として活躍中の佐藤治彦氏が、充実した“おひとりさまの老後”を過ごすために必要なお金との向き合い方を解説。今回は、本書冒頭の「はじめに」と第2章「幸せなおひとりさまは貧乏ではいけない。お金と住宅にまつわる話」の一部を特別に公開します。(全3回)
※本稿は、佐藤治彦著『おひとりさまが知って得する、お金の貯め方・増やし方』(ぱる出版)の一部を再編集したものです。
おひとりさまは、知らないと損することばかりおひとりさま、普通時代がやってきました。おひとりさまと言っても、生涯独身の人もいるし、結婚はしたけれど離婚した人、反対にまだ結婚してないだけの人もいる。夫や妻、愛するパートナーが亡くなりおひとりさまになる人もいます。
また、家庭がうまくいかずに、これからおひとりさまになるかもしれない、いや、なりたいと思っている人も少なくありません。こう考えると、おひとりさまとおひとりさま予備軍は、決して少数派ではなく、もはや成人人口の半分近いと言っても過言ではありません。
そして、今の自分はおひとりさまではないとしても、それは相手のあることです。また、いつ何時、おひとりさまになるかもしれません。そういう時代に私たちは生きています。
ただ、今の日本社会はおひとりさまに決して優しい社会ではありません。日本のシステムは、昭和半ばのサザエさんのような家族構成と家庭で人生を送る人をモデルケースにして作られています。特に社会の制度や、経済のシステムがそうなっています。そういう仕組みの中で生きているのです。
おひとりさまには、幸せなおひとりさま、不幸せなおひとりさまがいます。中間もいます。それを分けるのはいったい何でしょうか?
その一つがお金であることは間違いありません。ところが、多くのおひとりさまは、どういう選択をしていくべきか。その情報や知識がないために、誤った選択をし続けて、金銭的に随分と損をしているように思います。
この本は、おひとりさまが、直面するさまざまな経済的、社会的決断の中でどうやっていくのが賢いのか、どういう選択肢があるのか、また知っておきたい情報を紹介しながら、ひとりでも多くの人に、笑顔で人生を送ってもらうための後押しになるように書いたものです。
知っておきたい、医療と保険、年金、介護保険、老人ホームの知識やおひとりさまが得する選択の方法。税金の知識をつけてもらって、ほぼノーリスクでお金を増やす方法。支出に占める割合の高い住まいについてへの提言。手元に残るお金を増やす買い物のポイント、考え方などについても書きました。
また、お墓やお葬式についておひとりさまはどう考えたらいいのかそんなことまで書いてみました。知らないと損することばかりです。
私はこれが正解だ! と私の考えを押し付けようとは思いません。できるだけ皆さん自身に考えてもらって、読者の皆さん一人ひとりに最適な答えを見つけてもらうヒントを提示していきたいと思っています。
ひとりでも多くのおひとりさまが、笑顔で幸せなおひとりさまになりますように。
幸せなおひとりさまになるためには、お金と賢く付き合う必要がある幸せなおひとりさまの生活をするためには、少し余裕のある経済環境を作っておくことがとても大切です。そのために必要なことは、メリハリをつけることです。世の中のシステムは未だに平均とか標準を中心に作られています。家族、夫婦、会社員や公務員。お金の使い方もみんな平均や標準というものがある。
それは、自分が本当に欲しいものと、標準や平均との間には差があるということを意味します。差は自分にとっては無駄、必要がないものです。また、反対に足りないこともあるわけです。
お金は大切です。ですから、自分のお金は自分のニーズに合わせて使っていく。標準仕様に合わせないということが必要です。
この本の企画を持ってきてくれた編集者の原田さんから、おひとりさまは老後が心配で、将来の生活費のことがとにかく心配だと思うんです。いったいいくらくらいあったら生活ができるのか、ぜひ書いてくださいと言われました。
私は、それは人それぞれですから、と言いました。
そうしたら、原田さんは、セレブコース、普通コース、最低限コース、のようなモデルケースを提示してもらうことはできませんか? と返されました。
そういうことじゃないんです。
例えば、1ヶ月の生活費が10万円あれば十分な人もいるでしょう。10万円だから、苦しいとかとことん節約をしてるとか、そういうことじゃない。例えば、地方に住んでいて家賃が要らない人、もしくは、公営住宅などで非常に安い家賃の賃貸に住んでいる人なら住宅費はほとんど要りません。
料理を作るのが億劫(おっくう)でなく、外食などはほとんどせず、スポーツや散歩が好きで、特にお金のかかる趣味も持っていない。そして健康だという人にとってみると、1ヶ月に必要なお金は非常に限定的なんです。
食費がメインになる生活です。さらに、地方では地域のコミュニティの中で上手くやっていると、農村地域なら規格外の野菜を、港に近ければ魚をもらえたりすることもあるものです。そういうおひとりさま生活なら1ヶ月に10万円もあれば十分なのです。
しかし、東京や大阪などの都市部で生活をしている人で、食事は外食を基本にしながら、趣味や人との付き合い、時には旅行などもしながら暮らしていくとなると、そうはいきません。1ヶ月で30万円でもギリギリかもしれません。さらに家賃が月に20万円くらいのところに住んでいるとなると50万円でも十分でない人もいるものです。
月に50万円の生活をしていても、本人は決して贅沢をしているつもりでも、裕福な生活をしているとは思ってないものです。他者から見ても、テレビで見るようなセレブレティな生活とはちょっと違うそんな生活になる。
本当に人それぞれなのです。
自分を世の中の標準や平均で評価してはいけないですから、皆さんに考えていただきたいのは、自分がどんな生活をしたくて、いくらくらい必要なのかを考えてもらいたいのです。そして、いったいいくらの資産を持っていて、年金でいくらくらいのお金が入ってくるのか、調べていただいて、それらの費用で自分らしい生活が維持できるか考えてもらいたいのです。
大丈夫そうだなと思うのならそれでいいし、足りないなと心配ならお金を増やす工夫か、生活スタイルを変化させていくことも必要でしょう。この本では、老後のおひとりさま生活には毎月20万円は必要ですとか、70歳までに2000万円用意してくださいとか、そんな乱暴なことは書かないことにします。
生活に必要なお金は人それぞれだからです。
そして、手持ちの金融資産のことも十分考えてもらいたいです。年金だけでは自分の生活費が足りない場合や、怪我や病気で多額の医療費が必要になったとか、家の大規模な修繕をすることになったとか、時に多額のお金がいることもあるでしょう。いざという時に、いつも通りの生活を維持するためには、金融資産があった方がいいです。そして、金融資産は少ないよりは多い方がいい。
リバースモーゲージ(自宅を担保にした融資制度の一種)やリースバック(自宅をリースバック運営会社に売却すると同時に、その会社と賃貸借契約を締結することで売却後も同じ家に住み続けることができるサービス)という形もあるではないかと言われる方もいますが、生活資金が足りないからと、シニアになってから借金をしながら生活をしていくなどというのはナンセンスでしょう。
ただ、誰にでも言えることは、自分の生活スタイルを大切にする。持っているお金を有効に使う、減らさない。特に現役時代の方には、投資などで運用して増やすことも考えて将来に備えていただきたいです。まずはできるだけリスクを最小限にしつつ、お金を増やしていく。そういう工夫をしてもらいたいのです。
また、今後の社会制度の変化や、2022年になってにわかに心配になってきたインフレによる影響もあるかもしれません。金融資産があればそういう将来の不測の事態にも対応できます。
自分の生活スタイルと、手持ちの資産がどのくらいあるのかを考えると、何歳まで働いて収入を得ておきたいとか、年金は何歳からもらうことにするのか、そういうことを決めることにも有効だと思います。
現役時代の方もお金に対して少し余裕があるといいですよね。例えば、ブームがある。みんながやってるから自分もやる。ブームというのは、世の中全体がお祭りみたいな熱狂の渦に巻き込まれるようなもので、後から考えたら、何だったんだろあれ? ということもよくあることです。
ただ、時にはそういうお祭り騒ぎに参加してみるのもいいものです。が、別の時には、自分はきっとこれは楽しめないと思ったら距離を置くのもいい。周りの流れに毎度毎度は付き合わない。ただし、時には流れに身を任せて楽しんでみる。そういうことがらも、できるだけ主体的に判断をして欲しいものです。
ブームだけでなく、普段の生活スタイル、消費のスタイルにも言えることです。みんなが自動車を買うから自分も買う。みんながスタバに行くから私も行く。みんながマンションを買うから無理してでも買う。みんなが生命保険に入るからやっぱり入る。そうやって周りに合わせていくと、お金はあっという間になくなります。それは、企業側のマーケティング戦略にまんまとズッポリはまってしまうことです。
よく、住居費は収入の20〜30%くらいが目安などという人がいます。そんな数字に惑わされる必要もありません。
例えば、アウトドアによく出かける人と、週末も家にいて趣味に時間を使う人では、住宅に対するお金の使い方が違っていいはずです。前者は住宅費はできるだけ抑えて自家用車などに十分なお金を使い、後者は住宅費により重点的にお金を使うべきだと思うのです。
ここでは、人生にとってとても大切なお金との付き合い方を考えつつ、皆さん一人ひとりにとって、使うべき支出はいったい何だろう、金融資産はどのくらい増やそうかと考えてもらいたいと思います。
●第2回(「金運財布」は無意味だが…それでも財布の中を整えるのは“効果あり”な理由)では金運にまつわる噂の真相から、日頃の金銭管理、ひいては資産管理について解説します。
『おひとりさまが知って得する、お金の貯め方・増やし方』佐藤治彦 著
発行所 ぱる出版
定価 1,540円(税込)
佐藤 治彦/経済評論家
慶應義塾大学商学部卒業。東京大学社会情報研究所修了。大学卒業後は、米銀で為替オプションを扱う銀行員として、東京、ロンドン、ニューヨークで勤務した後に、短期の国連ボランティア、経営コンサルタント事務所などを経て独立。放送作家を経て、1992年ごろから多様なメディアで、経済やマネーについて評論、コメントする経済評論家として活動してきた。著書に『安心・安全・確実な投資の教科書』『年収300〜700万円 普通の人が老後まで安心して暮らすためのお金の話』(以上、扶桑社)、『しあわせとお金の距離について』(晶文社)、『急に仕事を失っても、1年間は困らない貯蓄術』(亜紀書房)、『日経新聞を「早読み」する技術』(PHP研究所)など。
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