家計簿で貯金は無理!? しっかり者の予算主義がはまる意外な落とし穴とは
Finasee / 2023年5月12日 11時0分
Finasee(フィナシー)
おひとりさま4人に1人時代が到来したともいわれる現代。誰しも「おひとりさま」になりうると、“自分事”化しておく必要があります。
特に、医療や保険、年金、介護…といった“老後のお金”まわりで、「知らなかったがために損をする」事態を避けるためにも、早くから知識を身に付けるにこしたことはありません。
話題の書籍『おひとりさまが知って得する、お金の貯め方・増やし方』では、経済評論家として活躍中の佐藤治彦氏が、充実した“おひとりさまの老後”を過ごすために必要なお金との向き合い方を解説。今回は、本書冒頭の「はじめに」と第2章「幸せなおひとりさまは貧乏ではいけない。お金と住宅にまつわる話」の一部を特別に公開します。(全3回)
●第2回:「金運財布」は無意味だが…それでも財布の中を整えるのは“効果あり”な理由
※本稿は、佐藤治彦著『おひとりさまが知って得する、お金の貯め方・増やし方』(ぱる出版)の一部を再編集したものです。
家計簿をつけるとお金が貯まる生活になるでしょうか?僕はかつて、とてもよく売れる家計簿の監修をしていたことがあります。そこでの僕の裏テーマはどうやって家計簿をつけないで、家計簿をつけた時と同じような効果を出すかでした。家計簿をつける時間がとてももったいないと思ったのです。
家計簿は毎日、毎月の家庭のお金の動きを記録して、収入と支出を把握する。そして、主として支出をコントロールするために行うものです。ところが、多くの人が記録をつけるだけで終わってしまう。それでは、ため息をつくために時間と手間を使っているものだと思うのです。
そうでなくても、家族全員が忙しくしているのだから、家計簿にかける時間をできるだけ減らして、家族の会話やお風呂に5分長く入る、読書や趣味、テレビなどの娯楽に使った方がいいと思うのです。
家計簿をつけて、出て行くお金を管理して黒字の家計を作ろうとする。そのために多くの人が毎月の予算計画を立てます。食費は1週間に1万円とか、光熱費は電気代が毎月8000円とか、交際費、こづかい、趣味、交通費まで管理を始めます。
そして、今月は食費が予定よりも多かった少なかった。交際費が多かったので節約しないとといった具合に反省します。そして、うまくいかないものだと、ここでも深いため息をつくのです。
また、時に黒字になった時には、頑張った自分にご褒美といって普段は買わない高級な美味しいスイーツを買ったりします。
消費者金融のお世話になる人は全国民の1割くらいいるということですから、赤字の家計に悩む人は多いのですが、私はあえてこう申し上げたいと思います。
家計というものは、自分で管理しようと思っても無理なところがある。ざっくりとした方向性を持つことまで悪いとは言わないが、単月で赤字、黒字といって大騒ぎする必要はないものだ、と思うのです。
細かい予算主義はすぐに破綻するものです例えば、食費では、野菜や魚の価格は全く安定していません。バーゲン価格の時もあれば、逆に近いうちにこの商品は20%値上げになるといったこともあります。
私は洗濯用の粉せっけん、液体状のものも含めて、もう何年も買っていません。なぜなら、いつもバーゲンで200円程度にしかならない、一流メーカーの商品がパッケージを変えるということで、古いものが100円で売られていたので、大量に買ったからです。
腐るものではないし、パッケージデザインが新しいか古いかなどには興味がありません。それよりもバーゲンでも200円にしかならないものが100円で買えるというほうに100倍惹かれました。
マヨネーズは、イオン系のトップバリュのプライベートブランドの商品を愛用しています。法律が変わってプライベートブランドでも製造者をきちんと明示して売ることが必要となり、裏に小さくキユーピーと書いてあったので驚きました。キユーピーの商品は400グラム、プライベートブランドは500グラムで、キユーピーの商品はバーゲンでも200円、プライベートブランドの方はいつでも158円だったのです。それを、20日と30日の割引の日に買うので、さらに5%安く買っていました。
2022年は年初から生活に必要な食品や光熱費などの値上げが日本の家庭を襲いました。このマヨネーズは7月から25%値上げになると発表になり、賞味期限を確かめて、自分がそれまでに使うはずの四つをまとめ買いしました。
生活に必要なものが特に安く売られていれば、今月必要でないものも含めて賢く買います。大幅な値上げになると言われれば、それにも賢く対処します。そうすると、支出は増えてしまいます。
また、私の趣味は国内外の旅行です。時に2週間も旅行します。2週間も家を空けた月の光熱費はものすごく安いです。不在の時にも冷蔵庫には電気代は要りますが、それ以外の電気、ガス水道などほとんど使わなくなるからです。
さらに、パッケージ旅行で旅することが多いので食事は旅行代金に含まれていることも多く、家にいない期間が長いと食費も大幅に減ってしまいます。節約も努力もしていませんが、家計簿上は、光熱費も食費も減ったことになってしまうのです。
節約をするという意識よりも、無駄なお金は使わないという主義友人が立て続けに結婚すれば交際費は膨らみますし、今月は交際費に余裕があるからと、大して仲の良くない人にプレゼントを送ったりもしません。エアコンが壊れれば、予算がなくても買い替えないと熱中症で命に関わる問題になりかねません。しかし、予算があるからといって、掃除機をもう1台買うのは家電芸人さんくらいでしょう。
こう話すと、佐藤さんの例は極端すぎると言われることがあります。日本人はどうしても周りと比べたがる。だいたい他の人と同じようにしていると安心だし満足もしてしまう。しかし、それが良くないんです。
皆さんにお願いしたいのは、世間と比べて安心する生活、人並みに合わせるというのをやめてもらいたい。自分で自分の基準を作る。ルールを設定する。これが必要なことなのです。
テレビなどの家計簿診断では、いわゆる平均値を出して比較します。この家庭の場合は、光熱費や趣味のお金が多い。もう少し考えた方がいいですね、という具合です。しかし、例えば、スポーツをする高校生の2人の少年がいる家庭では、教育費も食費も平均より多いのは当たり前で、むしろ平均で抑えているのであれば、何か特別な事情があるのかなと思ってしまいます。
同じ2人世帯の家庭でも、20代の若い2人の家庭と60過ぎの家庭では暮らし方も大きく変わります。使うもの、使い方が変わるのが当たり前。平均と比べても仕方のないことです。
最近はアプリで簡単にレシートなどから家計簿をつけられるものもあるので、つけたい人はつけてみるのには反対しません。でもですね、家計簿よりも、もっと大切なことは、要らないものは安くても買わない。必要なものは、できるだけ賢く安く購入する。ということを徹底していくことではないでしょうか?
自分に必要なものしか買ってないのに、家計が赤字になり貯蓄も全くできないということであれば、必要なものとそうでないもののハードルが低すぎるのかもしれません。もしくは、買い方が下手なのかもしれません。どこか我慢するものを選ぶ必要があるのかもしれません。
しかし、黒字だからといって、自分に必要なものとは何かということを考えなくていいわけでもありません。
例えば、私は街で缶コーヒーやペットボトルなどの飲料をほとんど買わなくなりました。前は1日に2本くらい買っていたので、1日280円くらい使っていた。しかし、自販機やコンビニで買わずに、多くの場合は安く売っているドラッグストアやスーパーで買うことにしていて、少し安くできていた。それも一つの工夫です。
しかし、私は、水筒を持ち歩くことにしたのです。美味しいコーヒーなどをいれて持ち歩く。夏は冷たく、冬は暖かい飲み物がいつでも飲めるようになった。さらに、外で購入する時間と手間は要らない。外で買うとじきに常温になってしまいますが、そんなこともない。
さらに、1日に280円は365日で10万2000円ほどです。家から持ってくると10分の1程度でしょうか。どちらが賢いスタイルか考えると明白ではないでしょうか?
そして、ペットボトルや缶コーヒーを買うのを控えて水筒にするのは、多くの場合で環境にも優しいはずです。だから、160円で売られているペットボトル飲料が130円になっていても安いとか買いたいとか思わない。自分の買物の基準から外れているからです。
ただし、この基準に縛られすぎるのも良くない。水筒を持って出るのを忘れた。あまりにも暑くて飲みきってしまった。そんな時には、外で冷たい飲み物を買うこともあります。自分のルールだから頑なに買わないなんてこともしない。
家計簿をつけて、今月は黒字だ、赤字だと一喜一憂しても仕方ないです。それよりも、自分のルールや基準で不必要なものを決めて、それに従って生活していくほうが現実的だと思うのです。
毎月のように赤字でキャッシングで借金も増えてどうしようもない。自分で支出をコントロールできないというのなら、家計簿をつけるのもいいのかもしれませんが、一般的には、家計簿をつけるよりも、自分にとって本当に必要なものは何か? それをいくらくらいでどう買っていくか。無駄なく使っていくか。そういうことを考えておくほうが大切だと思うのです。
家計簿をつけるだけでは、家計の財政状態が良くなるわけじゃない。それだけは申し上げたいです。
『おひとりさまが知って得する、お金の貯め方・増やし方』佐藤治彦 著
発行所 ぱる出版
定価 1,540円(税込)
佐藤 治彦/経済評論家
慶應義塾大学商学部卒業。東京大学社会情報研究所修了。大学卒業後は、米銀で為替オプションを扱う銀行員として、東京、ロンドン、ニューヨークで勤務した後に、短期の国連ボランティア、経営コンサルタント事務所などを経て独立。放送作家を経て、1992年ごろから多様なメディアで、経済やマネーについて評論、コメントする経済評論家として活動してきた。著書に『安心・安全・確実な投資の教科書』『年収300〜700万円 普通の人が老後まで安心して暮らすためのお金の話』(以上、扶桑社)、『しあわせとお金の距離について』(晶文社)、『急に仕事を失っても、1年間は困らない貯蓄術』(亜紀書房)、『日経新聞を「早読み」する技術』(PHP研究所)など。
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