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外資系エリートもパワーカップルも陥る…「ワンルームマンション投資」の落とし穴

Finasee / 2023年4月27日 11時0分

外資系エリートもパワーカップルも陥る…「ワンルームマンション投資」の落とし穴

Finasee(フィナシー)

投資用、居住用を問わず不動産に関するトラブルは後を絶ちません。この連載では、不動産にまつわる数々の相談に乗ってきた不動産鑑定士の福田伸二さんが、皆さんの「不動産リテラシー向上」に役立つ情報を事例と共にお届けしていきます。今回は、ワンルームマンション投資のリスクについてご紹介します。

不動産鑑定士・福田伸二さん *** パワーエリートが赤字物件を抱えて苦悩!?

弊社のご相談案件のうち1~2割は、ワンルームマンション投資についてのご相談です。それも、「このまま持ち続けていいのだろうか?」と不安に駆られてご相談に来る方が圧倒的に多いです。中には5つも6つもワンルームマンションを所有し、非常にリスクの高い状況にある方もいらっしゃる。そんな方が少しでも減るように、今回はワンルームマンション投資の利益のからくりをお伝えしたいと思います。

もちろん、私は決してワンルームマンション投資を否定しているわけではありません。当然、もうけている方もたくさんいらっしゃいます。しかし、その方々がなぜもうかったのかというメカニズムを知らなければ、不幸な方々もどんどん増えてしまいます。

投資用のワンルームマンション購入でよくあるのは、「節税になりますよ」と囁かれて買うパターンです。私が「節税になっていますか?」とお聞きすると、みなさん「たぶん……」と言葉を濁されます。また、多いのが「収支はトントンになっています」とおっしゃる方。損はしていないのだから、大丈夫だと考えるのです。しかし、そこに大きな落とし穴があります。

ご相談に来られる方は、社会的属性の高い方です。いわゆる「士業」「師業」の方や外資系金融機関のサラリーマン、共働きでご夫婦共に高学歴・高所得のパワーカップルも多いですね。そして皆さん忙しく、自分がどのような物件に投資しているかを把握されていない方が多い。そこが、ワンルームマンション投資の怖いところです。
 

勝ち抜けた人は、いつ・どんな物件を買った?

不動産投資の鉄則は安く買って高く売ることです。そして前回お話した通り不動産価格は上がったり下がったりのサイクルを刻むため、その大局をつかんでいただくのが不動産投資の秘訣です。例をあげれば、10年前にワンルームマンション投資を始めている方は勝てる可能性が高い。前回(「いま不動産購入には慎重になるべきこれだけの理由…“損する人”が知らないこと」)でもお話しましたが、直近10年、日本の不動産価格は上がり続けています。ですから、10年前に始められた方というのは今よりかなり安く購入されているわけで、最近売却して利益を確定させた方などは、大きなもうけが出ています。

では、この方たちがどんな物を買ってどういう風にもうかったのかをご説明します。まず典型的なワンルームマンションとして、台東区内、最寄り駅から5分の1Kタイプのマンションを例にあげシミュレーションをしてみましょう。

<前提条件>
物件所在 :東京都台東区内の最寄り駅徒歩5分
構造・築年:新築
賃貸面積 :25㎡
家賃   :100,000円
購入金額 :20,000,000円
借入条件 :変動金利2.0%、期間35年
初期費用 :600,000円(頭金を含む)

 

 この地域で家賃10万円の相場は、今もあまり変わっていません。当時台東区内では、約2000万円でワンルームタイプの物件が買えました。借り入れ条件は金利2%の35年ローン。この条件もあまり変化していません。フルローンで借入額2000万円、初期費用60万円で計算します。典型的な10年前のワンルーム投資です。

新築ワンルーム投資の収益構造とは?

収益構造を見ていきましょう。家賃が10万円なので年間120万円の収入が入ってきます。ワンルームマンションの場合はサブリース契約がセットの場合も多いのですが、今回はサブリースがない場合を考えていきます(サブリース契約の問題点については、また別の回でご説明します)。
※サブリース契約=不動産管理会社に手数料を払って物件を一括管理してもらうことで、家賃滞納や空室のリスクを抑える契約

サブリースがついていない場合は、買ったご本人と入居者が賃貸借契約を結びます。この時には、空室になった時のマイナス分を考慮しなければなりません。ワンルームの入居者で多いのは2年更新契約で、1回目は更新して、4年目に退去するパターンです。順調に入居者の入替が進んでも、クリーニングや修繕等の業者の手配、契約準備などで4年間の48カ月のうち2カ月は家賃が入ってこないと考え、年間4%を空室率と設定します。

その後に計算するのが、ランニングコストです。管理組合に払う管理費、修繕積立金、火災保険(損害保険)、サブリースがついていない場合は不動産会社に支払う入居者管理費用もあります。これらは、一般的な数字を入れていきます。それ以外には、固定資産税ですね。ワンルームタイプでも年間5万~6万円はかかります。

さらに、退去時の原状回復費と、入居者広告費、新しい入居者が見つかった時の契約代行、これを不動産会社に払います。こういった4年目にドンとかかってくる費用も我々は年間でならして計上しています。全て計算すると、ワンルームマンションのランニングコストは、年間約26万7千円になります。空室を考慮した年間115万2千円の家賃収入から26万7千円の費用を差し引くと、残りは88万5千円です。

ワンルームマンションの収益構造(新築2000万円で購入の場合)
※画像をクリックで拡大

 

【キャッシュフロー計算】 ※画像をクリックで拡大

注:条件はサブリース契約なし  出所:ファイナンシャルスタンダード

10年前に2000万円でワンルームマンションを買った方は、年間収支が9万円ほどプラスの収益構造になっていました。

途中で売却する場合も、プラスのキャッシュフローが積み上がっていくため、投資としての損益分岐点はかなり低く抑えられます(下図)。物件価格が極端に下がらない限りは、損をしにくい構造です。なお、物件価格が1,700万円からスタートしているのは、業者利益が10~20%乗っているためで、購入した瞬間に市場価格は10~20%下がってしまうことも理解しておかなければいけません。

※画像をクリックで拡大

注:赤い線より上で売れば利益が出る  出所:ファイナンシャルスタンダード同じ条件でも高値づかみで“危機”に

ところが、ここ10年間でワンルームマンションの価格はガーンと上がっていて、同じ条件のマンションが2800万円以上します。すると、儲かる損益分岐点のハードルが一気に高くなってしまう。同じキャッシュフローを当てはめると、年間22万8千円ものマイナスになってしまうんです。これが35年間続くというのが、高い価格でワンルームを購入された方に訪れる“危機”なんです。

「収支がトントン」と思われている方は、月々の収支だけを見ているケースがほとんどです。入居者が出て行った時にまとまって出ていくコストとリスクを意識していません。

ワンルームマンションの収益構造(新築2800万円で購入の場合)
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【キャッシュフロー計算】 ※画像をクリックで拡大

注:条件はサブリース契約なし  出所:ファイナンシャルスタンダード

お客様のイメージはこうです。「ローンが終わるまではお金が入ってこないけれど、仕方ない」「ローンが終わってから家賃が年金代わりに入ってくるよね」「生命保険代わりになるから‥」「売ってもゼロではないし……」

でも、考えてみてください。この投資は、35年間少なくともマイナス20万円、時間が経過すればさらにマイナスが増えることが確定した投資です。マイナスが年々積み上がりますので当然、先ほどの損益分岐点は上がります。我々の試算では2800万円で買ったものは10年目で2650万円、20年目で2300万円、35年目で1550万円、40年目でも1200万円が、売却の損益分岐点です。そのマイナス分を複利の効いた積立投資をしていればと考えると、機会損失はさらに深刻です。

35年前を想像してみると、スマホなど一切なかった時代です。今から時代がもっと進んだ35年後に、果たして今と同じ設備のマンションにどれくらいのニーズがあるでしょうか?

では、こういった“悲劇”をどうしたら避けられるか。後編【不動産鑑定士が警告する「やってはいけない」マンション投資とは?】で、その詳しい内容をお伝えします。

 

福田 伸二/不動産鑑定士

POLUSグループを経て、大和不動産鑑定株式会社に入社し、東京本社鑑定部課長、鑑定証券化部次長を最後に退社。その後、売買仲介・コンサルティング業務に従事し、J-REIT上場のアドバンス・レジデンス投資法人の運用会社で外部委員も務める。毎年100件以上にわたる収益物件の鑑定評価書の発行や、東京都税事務所のアドバイザーとして相続税路線価のアドバイス業務に従事。2020年にファイナンシャルスタンダード入社。

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