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「三菱」ブランド失墜…燃費不正の過去、経営危機で日産が下した決断

Finasee / 2023年5月12日 7時0分

「三菱」ブランド失墜…燃費不正の過去、経営危機で日産が下した決断

Finasee(フィナシー)

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2016年5月12日、三菱自動車と日産自動車は資本業務提携を発表します。日産はルノーの傘下にあったことから、これによって「ルノー・日産・三菱自」の巨大な自動車連合が誕生しました。同連合の自動車販売台数は世界4位の規模を誇ります。

【世界自動車販売台数(2022年)】
・トヨタ:1048万3024台
・フォルクスワーゲン:826万2800台
・現代自動車:684万8198台
・ルノー・日産・三菱自:615万6777台

出所:日刊自動車新聞

三菱自動車と日産の資本提携は、日産が出資する形で実現しました。当時の三菱自動車は燃費データを不正に改ざんした事実が判明し、経営危機に陥っていたのです。

燃費不正で揺れる三菱自を日産が支援

三菱自動車の燃費不正問題が発覚したのは2016年4月のことです。燃費データの改ざんが行われたのは、三菱自動車の「ekワゴン」と「ekスペース」、また三菱自動車が日産に供給していた「デイズ」と「デイズルークス」です。

発覚したきっかけは、軽自動車で提携していた日産による指摘でした。日産が燃費を計測したところ、国土交通省に提出していた数値と大きく異なるデータとなったことから事件が明らかになっていきます。

また、のちに三菱自動車が設置した特別調査委員会が調査したところ、同社は遅くとも1991年から定められた方法とは異なる手法で試験を行い、恣意的な改ざんは遅くとも2005年から行っていたことも判明しています。

今回明らかになった燃費データの不正は、2013年6月以降に発売された車両で行われました。不正が行われた車両はいずれも人気車種で、業績への大きなダメージは必至の状況でした。これが嫌気され、三菱自動車株式は急落します。なお、三菱自動車は消費者への約650億円の補償を発表しています。

存続が危ぶまれた三菱自動車でしたが、日産から約2370億円の出資の受け入れを発表し、難を逃れました。それまでは三菱グループが三菱自動車の大株主でしたが、以降は日産が34%の株式を握る筆頭株主となります。

【三菱自動車の株価(2016年)】

Investing.comより著者作成

拡大画像表示ルノーとの対等関係を勝ち取った日産

日産がルノーの傘下に入ったのも、実は経営危機に陥っていたことが原因でした。このときルノーから派遣されたカルロス・ゴーン氏が、その手腕で日産の経営をよみがえらせます。その後、ゴーン氏は2018年11月に逮捕されたことは記憶に新しいところでしょう。

危機から脱却し販売台数などでルノーを上回る日産は、ルノーと対等な関係を求めるようになります。日産もルノー株式を保有していましたが、その出資割合は15%とルノーの日産に対する割合(同43%)を大きく下回っており、また日産はルノーに対する議決権を行使できない状況でした。

日産はルノーと交渉を進め、ついに2023年1月、ルノーが日産株式を15%程度になるまで信託会社へ移し、議決権を手放すことで合意します。互いの出資比率が15%でそろうことで、日産はルノーと実質的に対等関係を得ることとなりました。これに伴い、日産はルノーに対して議決権の行使が可能となります。

また、ルノーが日産株式を売却する場合、その譲渡先は日産を筆頭とすることも決められました。今後、日産は信託されたルノーの日産株式を段階的に買い戻すと考えられます。日産は当初から買い戻しを検討していたとみられますが、今後は同社の財務について注目が集まりそうです。

【日産自動車の業績】

※2023年3月期(予想)は、第3四半期時点における同社の予想

出所:日産自動車 決算短信

【日産自動車の株価】

Investing.comより著者作成

拡大画像表示ガソリン車はいつ販売禁止になる?

ルノーが日産への出資比率を低下させた理由の1つに、EV(電気自動車)へのシフトがあるとみられています。ルノーはEV車を事業の中核に位置付け、体制の変革期にありました。その過程で日産との資本関係の見直しにも着手したと考えられます。なお、対等な資本関係へ見直しを進める対価として、ルノーが設立するEV新会社へ日産が最大15%出資することも盛り込まれています。

ルノーがEVへかじを切った理由は、ガソリン車からEVへの流れが世界的に起こっているからだと考えられます。EUは2035年にガソリン車の新車販売を禁じる方針を表明し、中国も同じく2035年までに全ての新車を環境対応車へ切り替える方針です。またアメリカでも、ニューヨーク州やカリフォルニア州などで、2035年までにガソリン車の新車販売を禁止にすることが決まっています。

このようにガソリン車から環境に配慮した車へ移行する流れは強く、自動車メーカーもその対応に追われています。世界の自動車販売で上位に入る日本の自動車メーカーも、EVでは出遅れが目立っており、経営戦略の見直しは避けられない状況です。

【世界EV販売台数(2022年)】

 

出所:時事通信

トヨタは戦略の見直しを発表し、2026年までにEVを150万台販売する目標を発表しました。また、ホンダも2030年までにEVを年間200万台超生産する方針を打ち出しています。日本においても、EVシフトの波はしばらく続きそうです。

執筆/若山卓也(わかやまFPサービス)

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。

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