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最新DC 投信マーケット解説 2023年4月号

Finasee / 2023年4月30日 15時0分

最新DC 投信マーケット解説 2023年4月号

Finasee(フィナシー)

DCガバナンスの視点から受託者責任を果たす目的で、投資信託のモニタリングや入れ替えを検討・実施する企業も少しずつ増えています。そこで、投資信託のモニタリングに役立つDC商品マーケットの最新状況を、投資信託評価会社である三菱アセット・ブレインズの標氏に解説していただきます。

※この記事は、2023年4月27日(木)に実施したWEBセミナー「 最新DC 投信マーケット解説 2023年4月号」を記事化したものです。

——早速2023年1月-3月のDCマーケット状況について伺いたいと思います。まずはアセットクラスごとのパフォーマンスをお聞かせください。

図1は過去2年間のファンド分類別の累積パフォーマンスを示したものです。2022年は金利が上昇基調で推移したことから、株式・債券等が同時に下落し、幅広い資産でパフォーマンスは軟調となりました。

2023年1月-3月の推移をみると、1月は世界各国でのインフレ率の鈍化、中国の経済活動再開への期待等を背景に、景気悪化懸念が後退し、株式・債券ともに上昇、良好な相場環境となりました。

2月にはインフレ率の高止まりから米欧の中央銀行による利上げ長期化が再燃し、株式はやや軟調、債券は下落しました。

3月は月上旬に米国のシリコンバレー銀行が経営破綻、その後欧州では金融大手のクレディ・スイスの経営不安が表面化し、金融システム不安から株価は一時下落しました。しかし、米国政府やスイス政府による対応策などからその後の市場は落ち着きを取り戻し、株価下落は最小限にとどまりました。

図1 分類別累積パフォーマンス  拡大画像表示

※ 公社債投信等を除くDCファンド(専用・共用)について月間収益率をカテゴリー別に単純平均し、 24ヵ月前を100として指数化したもの。 出所:三菱アセット・ブレインズ

次に分類別に直近3ヵ月のパフォーマンスランキングを確認します(図2)。まず、2023年1月にパフォーマンスが良かったのは、外国REIT、エマージング株式、外国株式、国内株式といったリスク性資産のカテゴリーです。世界的な金利の上昇がいったん落ち着いたことが、これらの資産のパフォーマンスにプラスに寄与しました。

2月は、外国株式、国内REIT、国内債券などが上昇しました。外国株式では円安の進行がプラスに寄与し、国内REIT・国内債券では、日本銀行の新体制でも金融緩和が継続されることが確認されたことなどが安心材料となりました。
3月は、米欧の金融システム不安が重石となりました。特に、外国REITは6%超のマイナスとなりました。金融不安を受けたREIT市況の不調や円高の進行がマイナスに影響しました。

以上のとおり、当該期間はインフレ率および各国中銀の動向、米欧の金融システム不安といった様々な要因により、各アセットクラスの価格は推移しました。

図2 分類別パフォーマンス 拡大図表示

※ 公社債投信等を除くDCファンド(専用・共用)について各期間別の収益率をカテゴリー別に単純平均し作成したランキング表。 出所:三菱アセット・ブレインズ

——2023年1月-3月のDCファンドの状況について教えてください。

ここではDCファンドの資金流出入動向について確認します。1月の資金流出入額は約470億円の流入超、2月は約140億円の流入超、3月は約1,160億円の流入超となりました(図3)。3月は2022年6月以来となる1,000億円超の資金が流入しました。資金流入額は、多い順に、外国株式型(約470億円)、複合資産型(約410億円)、国内株式型(約120億円)となりました(図3)。

図3 ファンド分類別 月間流出入額推移(DC専用ファンド) 拡大図表示

※ 公社債投信等を除くDC専用ファンド 出所:三菱アセット・ブレインズ

次に直近6ヵ月の資金流出入額の累積は、外国株式型が1,540億円、複合資産型が1,350億円と人気を二分していますが、外国株式型がやや上回る傾向が続いています(図4)。外国株式型は、若年層から支持を集めているものと考えられます。若い世代にもDCによる資産形成が広がっているようです。

国内株式型にも約430億円と相応の水準の資金が流入しています。外国株式型と比べるとやや少額で、過去の資金流出入の推移をみると、資金が流出する月もあるようです。相場の動向に応じたスイッチングにより売買を行う加入者も一定数いるものと考えられます。

図4 ファンド分類別 月間流出入額推移(DC専用ファンド) 拡大図表示

※ 公社債投信等を除くDC専用ファンド 出所:三菱アセット・ブレインズ

では続いて、個別ファンドではどのようなファンドに資金が流入しているのか、外国株式型と国内株式型の2つのアセットクラスについて確認しましょう。まず、外国株式型の月間資金流入額上位15ファンドについて確認します。ランキング表(図5)のとおり、上位15本のうち13本がMSCIコクサイ指数などの世界株価指数に連動するパッシブファンド、インデックスファンドとなりました。パッシブファンド中心に資金が流入する傾向に変化はありません。

一方、アクティブファンドからは、「DIAM外国株式オープン<DC年金>」が12位にランクインしました。運用管理費用は1.86%とパッシブファンドと比べ割高ですが、リターンの水準は直近1ヵ月で1.1%、直近6ヵ月で15.1%と、パッシブファンドのリターンを大きく上回る水準となっています。

当ファンドは日本の運用会社であるアセットマネジメントOneが設定するファンドですが、実際の運用は外国の運用会社である「キャピタル・インターナショナル」の助言に基づいて行われます。当ファンドはファンドの資産を複数に分割し、それぞれ異なるポートフォリオ・マネジャーが自分の得意とする運用手法でベンチマークを上回ることを目指します。複数のファンドマネジャーが運用する資産を最終ポートフォリオとして集約することから、特定の運用スタイルに偏らずにバランスの良い運用が行われる点がメリットです。

図5 2023年3月 外国株式型(DC専用ファンド) 拡大図表示

※ 公社債投信等を除くDC専用ファンド 出所:三菱アセット・ブレインズ

次に、国内株式型の月間資金流入額上位15ファンドについて確認します。ランキング表(図6)のとおり、上位15本のうち10本がパッシブファンド、5本がアクティブファンドとなりました。外国株式型と比べるとややアクティブファンドの本数が多くなりました。6位の「大和住銀・DC日本バリュー株ファンド」を始め、9位の「DC・ダイワ・バリュー株・オープン」、14位の「MHAM日本バリュー株<DC年金>」と、「バリュー」と名の付くファンドが目立ちます。

図6 2023年3月 国内株式型(DC専用ファンド) 拡大図表示

※ 公社債投信等を除くDC専用ファンド 出所:三菱アセット・ブレインズ

バリュー株は企業の利益や純資産の水準に対し株価が割安な価格で取引されている株式のことを言います。2022年に世界の金利が上昇基調に変化すると、バリュー株の対極に位置するグロース株(現在の株価の水準に拠らず将来の成長性を重視して取引される株)が業績悪化懸念から下落し、バリュー株が注目されるようになりました。こういった相場の動向がDCの市場にも影響を与えたものと考えられます。

長期の視点に基づく運用が原則のDCではありますが、特に国内株式では相場の動向に応じてファンドを選択している加入者も一定数いるようです。

——最後に、直近DC向けにどのような商品が設定されたか教えてください。

新規設定ファンドは、1月から3月にかけて、5本の設定にとどまりました。いずれも三井住友DSが運用するターゲットイヤー型ファンド「三井住友DS・DCターゲットイヤーファンド」になります(図7)。

図7 2023年3月 新規設定ファンド(直近30本、過去2年間) 拡大図表示

※ 公社債投信等を除くDC専用ファンド 出所:三菱アセット・ブレインズ

当ファンドは新興国を含む国内外の株式・債券・REITの計8資産で運用を行います。それぞれの資産ではベンチマークに運用成果を連動させるパッシブ運用を行いますが、ターゲットイヤーという資産形成の目標時期に向けて、少しずつ株式の比率を引き下げ、債券の比率を引き上げるといった運用を行います。資産形成をスタートしたばかりの若い年代ではリスク許容度が高いため株式による積極的な運用を行い、退職が近づいた年代では逆に資産を守る必要があることから、債券中心の安定的な運用を行う必要がある、という考えに基づいたものです。

ターゲットイヤー型ファンドは退職時期から逆算してファンドを選択することで、これ一本で資産形成が可能であり、投資資金のこまめなチェックが難しい現役世代にとってはうってつけの商品と言えるでしょう。

ターゲットイヤー型ファンドは、DC専用ファンドで40本超ありますが、純資産残高は1,400億円と、3兆円超ある複合資産型の純資産残高と比べるとわずかにとどまっています。直近の資金流入額でも上位15ファンドに1ファンドがランクインしているのみであり、まだまだ大きな資金が集まっているとは言えない状況ですが、メリットも十分にあることから、今後注目を集めることが期待されます。

以上、パフォーマンス動向、資金流出入動向、新規設定ファンド動向について、お話しました。

 

標 陽平/三菱アセット・ブレインズ株式会社 シニアファンドアナリスト

2011年3月大学卒業後、銀行でのリテール営業を経て、2014年9月三菱アセット・ブレインズ株式会社(MAB)へ入社。2016年7月よりアナリスト第一グループ所属。同グループでは主にDCファンドを始めとした投信評価業務、投資情報の提供を担当。日本証券アナリスト協会検定会員。

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