いきなり「4600万円の大金」を得た男の末路…逮捕され人生暗転、なぜ
Finasee / 2023年5月18日 7時0分
Finasee(フィナシー)
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新型コロナウイルスで特に影響を受けた生活困窮世帯を支援するため、2022年度に「住民税非課税世帯等に対する臨時特別給付金」が支給されました。1世帯あたり10万円を支払うもので、国はこの支給のために約1兆5000億円もの予算を計上しています。
生活に困窮する人たちを守る大切なお金でしたが、2022年5月18日、このコロナ臨時特別給付金を巡って男性が逮捕される事態に発展しました。何が起こったのでしょうか。
誤って入金された4630万円を使って逮捕事件は山口県阿武(あぶ)町で起こります。2022年4月、町は463世帯分のコロナ臨時特別給付金4630万円を、1人の男性へ振り込んでしまいました。町の職員が、1世帯のみが記載された振込用紙を誤って金融機関に提出してしまったことが原因でした。
町は返還を求めますが、男性は既に使ってしまったとし、返金を拒みます。後の調査で、誤って振り込まれたお金はほぼ全額が2週間で引き出され、男性がオンラインカジノに使っていたことが判明します。
阿武町は同年5月12日、誤送金分の全額と弁護士費用などを含めた約5116万円の支払いを求め、男性を提訴しました。また山口県警は同月18日、誤って入金されたお金と知りながら口座のお金を移動したとし、電子計算機使用詐欺容疑で男性を逮捕します。
【刑法第246条「詐欺」(抜粋)】
1.人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2.前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
【刑法第246条の2「電子計算機使用詐欺」(抜粋)】
前条に規定するもののほか、人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与えて財産権の得喪若しくは変更に係る不実の電磁的記録を作り、又は財産権の得喪若しくは変更に係る虚偽の電磁的記録を人の事務処理の用に供して、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者は、十年以下の懲役に処する。
出所:e-Gov法令検索 刑法
誤送金された現金を引き出すことの違法性については議論が分かれていますが、山口地方裁判所は2023年2月、男性の電子計算機使用詐欺を認め、懲役3年執行猶予5年の判決を下しました。男性の弁護人は控訴しており、今後も審理が続くとみられています。なお、町が男性を提訴した件については、2022年9月に和解が成立しています。
誤送金した町はどうやって資金を回収したのか先述の判決に5年の執行猶予が付された理由として、山口地方裁判所は既に被害の全額が補填されていることを挙げました。阿武町は、どうやって資金を回収したのでしょうか。
町は弁護士に依頼し、男性がオンラインカジノへ入金する際に利用したとみられる決済代行業者の口座を割り出し、2022年4月下旬から当該口座を差し押さえる法的手続きを進めました。その結果、町は決済代行業者から約4299万円の返還を受けたのです。
男性は税金を滞納しており、町はその徴収権などを使って決済代行業者に支払いを働き掛けたとみられています。また男性がデビットカードなどを使って出金していた約340万円も、町は2022年6月に法的に確保することに成功し、被害の全額を取り戻すことができました。
送金先を間違えた! どうやって取り戻す?阿武町のように送金先を間違えて振り込んでしまうケースは私たちにも起こり得るでしょう。誤送金した場合、どうやってお金を取り戻せばよいのでしょうか。
相手を間違えて送金した場合、振込元の金融機関で「組み戻し」を行いましょう。これは振込先にお金が届いたあとで、その資金を振込元口座へ返却する手続きのことです。所定の手数料と日数がかかりますが、この手続きでお金を取り戻すことができます。
ただし、組み戻しは原則として受取人の了解が必要です。つまり誤って振り込んだ先の口座名義人が拒否すれば、組み戻しを行うことができません。この場合、弁護士など法律の専門家に依頼し返還を請求することとなるでしょう。
なお、受取人が誤って入金されたことに気付かないままそのお金を使ってしまった場合、全額を取り戻せない可能性があります。誤って入金されることで得た資金は「不当利得」に該当し返還義務を負うとされますが、その範囲は「利益の存する限度において」と限られているためです。
受取人が誤送金と知りながらお金を使いこむ場合は「悪意の受益者」と見なされ、全額の返還と損害賠償の義務を負うと民法では規定されています。しかし、現実に受取人の手元にお金が残っていない場合、やはり取り戻すことは難しくなるでしょう。
【民法第703条「不当利得の返還義務」(一部抜粋)】
法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者……は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。
【民法第704条「悪意の受益者の返還義務等」(抜粋)】
悪意の受益者は、その受けた利益に利息を付して返還しなければならない。この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う。
出所:e-Gov法令検索 民法
誤送金に気付いたら、できるだけ早く手続きを進めるようおすすめします。
執筆/若山卓也(わかやまFPサービス)
証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。
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