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味の素が世界市場を独占?「100%のシェア」を握る“超意外”な事業

Finasee / 2023年5月20日 11時0分

味の素が世界市場を独占?「100%のシェア」を握る“超意外”な事業

Finasee(フィナシー)

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「味の素」の株式が快走しています。2022年11月に1987年3月の高値4350円を上回り、約35年ぶりに上場来高値を更新しました。その後も値上がりが続き、時価総額は2兆5886億円にまで成長しています(2023年4月19日終値時点)。

【味の素株価(月足終値 1987年1月~2023年3月)】

Investing.comより著者作成

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5月20日は味の素の創業記念日です。これにちなみ、味の素の歴史と現在の業績について押さえましょう。

日本発の味覚「うま味」を発見

味の素の創業記念日は、事業を初めて起こした日ではなく、同社の看板商品「味の素」が初めて一般消費者向けに販売された日に由来しています。うま味調味料「味の素」は、池田菊苗(いけだ・きくなえ)博士の尽力によって1909年に誕生しました。

池田博士は1899年、物理学を学ぶためドイツへ留学しました。そこでドイツ人の体格と健康状態のよさに気付き、「日本人の栄養状態を改善したい」と強く願うようになります。

帰国後、池田博士は味がよくて価格の安い調味料を作り出そうと研究に取り掛かりました。その中で昆布だしを研究するうちに、甘味・塩味・酸味・苦味といった4つの基本の味とは違う別の味があることを確信します。そして1908年、それがグルタミン酸というアミノ酸であることを発見し、「うま味」と命名しました。

池田博士はグルタミン酸を原料とした調味料の製造方法で特許を取得し、当時化学薬品工業界で有名だった鈴木三郎助(すずき・さぶろうすけ)に事業化を依頼します。こういった経緯で「味の素」が販売され、100年以上私たちの食卓を支えるロングセラー商品へとなりました。

もう食品会社じゃない? 電子材料事業で急成長する味の素

私たちにとって味の素は、調味料や食品の会社として身近です。事業別の売上高も「調味料・食品」や「冷凍食品」が大部分を占めています。

【事業別の売上高(2022年3月期)】

味の素 財務ハイライトより著者作成

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しかし事業別の利益では「ヘルスケア等」の割合が2番目に大きく、2022年3月期では全体の35%以上を占めました。近年は成長速度も顕著で、利益は前々期比で2.2倍以上になっています。近年の株価上昇は、このヘルスケア等事業が評価されたことが理由の1つだとみられています。

【事業別の事業利益】

 

出所:味の素 財務ハイライト

ヘルスケア等事業は、医療分野などの「バイオファーマサービス&イングリディエンツ」と、半導体向け材料などの「ファンクショナルマテリアルズ」で構成されています。事業利益は前者で約162億円、後者で289億円と、意外にも半導体向け材料の方が大きくなっています(2022年3月期)。

【「ヘルスケア等」を構成する主な事業】

 

味の素の電子材料事業は、「味の素」の製造過程で生じる副産物を有効活用する手段としてスタートしました。プラスチック用の難燃剤やエポキシ樹脂の硬化剤といった機能材料を先行して開発し、そして1999年にパソコン用半導体パッケージ基板の絶縁材として「味の素ビルドアップフィルム(ABF)」が誕生します。

それまで絶縁材には主にインクが用いられていましたが、フィルム化することで取り扱いの難しさが飛躍的に改善され、微細化していく高性能半導体向けに大きくシェアを伸ばしました。味の素によると、現在では世界の主要なパソコンのほぼ100%のシェアを握っているようです。

次の成長の種「BOPビジネス」

味の素は「BOPビジネス」に成功していることでも知られます。年間3000ドル以下の低所得層を「BOP(Base of the Economic Pyramid)」と呼び、この層をターゲットとした事業をBOPビジネスと呼びます。

BOP層は世界に40億人ほどだと推計されており、その多くが将来的に中間所得層へ育つと考えられることから、BOPビジネスへの進出を考える企業は増えてきました。しかし現時点ではその所得の小ささから1人あたりの購買力は弱く、高付加価値の商品で稼ぐ先進国の大企業にとって課題となっています。

そこで味の素は、現地の事情に合わせ小さいパッケージで販売する戦略を取りました。例えばうま味調味料「味の素」は、インドネシアでは0.9グラム(50ルピア:約0.5円)、フィリピンでは9グラム(2ペソ:約5円)、ベトナムでは50グラム(3000ドン:約17円)と、小分けし販売することで低所得層でも購入できるような価格帯を実現しています(2023年4月19日時点の為替レートを適用)。

出所:味の素 サステナビリティデータブック2015

また現地の食事情と融合させやすい商品性も、味の素がBOPビジネスに成功できた理由でしょう。うま味調味料「味の素」は、味を損なわずアミノ酸といった栄養素を補うことができます。またガーナでは、現地の一般的な離乳食「KoKo(ココ)」に混ぜることで、発育に必要な栄養を補う「KoKo Plus(ココプラス)」を開発しました。この取り組みは世界的な評価も高く、2012年5月に日本企業として初めて米国国際開発庁(USAID)のGDA(※)に採用されました。

※GDA:Global Development Alliance。USAIDが設立した官民連携機構で、開発途上国における社会経済状況改善のためのプロジェクトを民間セクターと協働で実施するもの。

BOPビジネスが味の素の業績に貢献することはまだ先でしょうが、「Ajinomoto」の知名度は着実に世界へ浸透しつつあります。開発途上国の発展が進めば、味の素はさらに大きく成長するかもしれません。

【味の素の業績】

※2023年3月期(予想)は、第3四半期時点における同社の予想

出所:味の素 決算短信

【味の素の株価】

Investing.comより著者作成

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執筆/若山卓也(わかやまFPサービス)

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。

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