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三井不動産の知られざる過去…「東京のシンボル」買収の背景

Finasee / 2023年5月12日 17時0分

三井不動産の知られざる過去…「東京のシンボル」買収の背景

Finasee(フィナシー)

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2023年3月、東京駅周辺の八重洲エリアに新しいランドマーク「東京ミッドタウン八重洲」が誕生しました。地上45階建てのビルにはさまざまな飲食店や専門店が出店しており、「ブルガリホテルズ&リゾーツ」が手掛ける日本初上陸となるホテル「ブルガリホテル東京」も開業しています。八重洲エリアはさらなる再開発が決まっており、東京ミッドタウン八重洲はその中心的な存在となるでしょう。

この東京ミッドタウン八重洲を手掛けたのが「三井不動産」です。東京周辺の再開発で多くの受注実績があり、まさに東京の街づくりを主導してきました。

 三井不動産とはどのような会社なのでしょうか。歴史を振り返ってみましょう。

三井家の不動産管理から始まった業界の盟主

三井不動産の歴史は大正時代に始まります。日露戦争後、三井家は直轄事業の株式会社化を進め、その持ち株会社として1909年に三井家11人を出資者とする「三井合名会社」を設立しました。三井合名は、日本初の持ち株会社でもあります。

三井合名には、三井家の所有する土地・建物を管理する部門として1914年に不動産課が設置されます。これが三井不動産の起源で、1941年に独立して現在の形になりました。現在、三井不動産は業界で最大規模の売り上げを誇るリーディングカンパニーとなっています。

【主な不動産会社の2021年度の売上高】

出所:各社の決算短信より

三井不動産は、日本初のREIT(不動産投資信託)である「日本ビルファンド投資法人」を設立したことでも知られます。主にオフィスビルで運用されるREITで、約9500億円もの時価総額は日本のREITで最大規模です(2023年4月20日時点)。所有するオフィスビルの管理は三井不動産グループが担っており、日本ビルファンド投資法人を運用する日本ビルファンドマネジメントも三井不動産が筆頭株主となっています。

2021年1月には三井不動産の旗艦物件であった「新宿三井ビルディング」を日本ビルファンド投資法人が取得したことでも話題となりました。取得価格1700億円は、国内のREITでは最高額とみられています。総賃貸可能面積10万2718平方メートル、鑑定評価額1800億円は、日本ビルファンド投資法人が所有する物件でいずれも最大です(2023年4月20日時点)。

日本橋「三井本館」の歴史

三井不動産を象徴する建物といえば「三井本館」でしょう。日本橋にある重厚かつ華麗な建築物は、関東大震災で被災した旧三井本館を立て直す形で1929年に竣工しました。内装に大理石がふんだんに使用されたほか、外装には全て花崗岩が用いられており、総事業費は2131万円(現在の価値で約1000億円)にも上ります。

三井本館は、三井合名の本社ビルとして機能したほか、三井グループの本社機能を集約させる役割を果たしました。地下にある米モスラー社製の重量50トンもの大金庫は、現在も三井住友信託銀行の貸金庫として使用されています。

三井本館は戦争を生き抜いたこともあり、多くの悲劇にも見舞われました。「血盟団事件」もその1つです。血盟団とは国家主義者を中心にした右翼団体で、金融恐慌などから社会不安がまん延した1932年に政財界の重要人物を立て続けに暗殺しました。

凶弾は三井財閥にも向けられました。当時は反米意識が強く、三井本館がアメリカの設計と施工で建てられたこと、三井銀行がイギリスの金輸出停止に伴って巨額の米ドル買いを実施したことなどから、三井財閥は非難を集めるようになっていました。そして1932年3月、三井合名の理事長だった團琢磨(だん・たくま)は、三井本館の玄関前で血盟団員の青年によって射殺されてしまいます。

さらに、戦時中は国家総動員法によって三井本館からさまざまな金属類が回収されたほか、戦後は進駐軍によって一部が接収され扉の一部が切り取られるなど、多くの困難にさらされました。

戦後は再び三井グループのオフィスビルとして活用され、現在も三井住友銀行や三井住友信託銀行が入居しています。1998年には、優秀な意匠と歴史的価値が認められ、国の重要文化財に指定されました。

三井不動産が東京ドームの救世主に

三井不動産は2023年1月、「東京ドームシティ」のリニューアルを発表しました。2024年夏まで続く大規模なリニューアルで、八重洲に続く再開発エリアとして注目されそうです。

東京ドームは2021年1月に三井不動産によって買収されました。これには、東京ドームが同社の大株主だった香港系ヘッジファンド「オアシス・マネジメント」と対立するようになったことが背景にあります。

2019年12月、オアシスは東京ドームが都心に約14万平方メートルもの敷地を持ちながらその資産を生かせていないとして、経営改善を訴えるコメントを発表します。2020年1月には敵対的買収をほのめかす書簡を送付したほか、同年2月には、「より良い東京ドームへ」と題した86ページにわたる提言を公表しました。さらに同年10月には経営陣の解任を求めて臨時株主総会の招集を請求するなど、次第に態度を硬化させていきます。

こうした流れの中、三井不動産は東京ドームに買収を持ちかけました。三井不動産は、街づくりで培ったノウハウが東京ドームの経営に生かせると考えたのです。オアシスからプレッシャーを受けていた東京ドームにとって、三井不動産は救世主に見えたことでしょう。このように、敵対的な買収を仕掛けられた企業が見つける別の友好的な買収者を「ホワイトナイト(白馬の騎士)」といいます。

そして2020年11月、三井不動産は東京ドームへTOB(公開買い付け)を実施します。オアシスもこれに賛同したことから、同TOBは2021年1月に成立しました。以降、東京ドームは三井不動産グループとして再出発することとなりました。

文/若山卓也(わかやまFPサービス) 

Finasee編集部

金融事情・現場に精通するスタッフ陣が、目に見えない「金融」を見える化し、わかりやすく伝える記事を発信します。

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