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6月は食品「3800品目」が対象…まだまだ値上げが終わらないワケ

Finasee / 2023年5月8日 17時0分

6月は食品「3800品目」が対象…まだまだ値上げが終わらないワケ

Finasee(フィナシー)

昨年から続く食品価格の値上げ。新年度以降、この動きが一段落するのか、それともさらに値上げが続くのかが気になるところですが、この夏も食品価格の値上げ攻勢は終わらず、家計に厳しい状況となりそうです。

なぜ値上げが続いているのか?

帝国データバンクが今年の4月28日に公表した「『食品主要195社』価格改定動向調査―2023年5月」によると、一部の食品に値下げの動きはあるものの、5月に824品目、6月に3322品目、7月に1884品目が値上げされ、さらに8月以降を見ても390品目において値上げが予定されていることが分かりました。今年1月からの値上げ品目数は、7月までに合計で2万品目を突破すると見られています。

また、2023年に予定されている品目の値上げ要因ですが、トップが原材料高で99%、次いでエネルギーが88%、包装・資材が67%、物流が59%、円安が16%、人件費が10%となっています。詳細を見ていきましょう。

円安の問題

まず円安については、日本の財政破綻や日銀の信用力低下などで円の底が抜けない限り、一方的にどこまでも円安が進むことはないでしょう。したがって、値上げ要因のうち16%を占める円安は、逆に値下げ要因に働くこともあり、その意味では中立要因であると考えられます。

原材料価格、エネルギー価格の問題

ただ、99.9%を占める原材料価格や、88%を占めるエネルギー価格の上昇については、予断を許しません。

工業品と同様、食品の世界でも構築された「グローバルで見て、安いところから仕入れる」というグローバルサプライチェーンは、民主主義国家と専制主義国家の対立によって機能不全に陥り、原材料価格を押し上げています。

また、エネルギー価格の上昇もそれに端を発しています。この状況が早期に好転する可能性はかなり低いと言えるでしょう。

物流コスト、人材不足の問題

物流コストも一段と上昇する可能性があります。

物流・運送業界ではかねてから「2024年問題」と言われている通り、働き方改革法案によってトラックドライバーの労働時間に上限が設けられます。その結果、ドライバー1人あたりの走行距離が短くなることで運べる荷物が減る恐れがあるのです。

その上、問題になると思われるのが人材不足です。

みずほリサーチ&テクノロジーズが今年4月28日に発表した「みずほリポート」によると、労働集約的なサービス業種を中心に人手不足が深刻化し、中でも運輸の正社員は大幅な不足に陥ると見られています。

このように、労働時間の短縮と人材不足という二重の制約によって物流サービスの供給が制限される一方、需要はECの隆盛によって盛り上がっていますから、価格が一段と上昇しやすい環境になると言えます。

人件費の問題

また、値上げ要因の中では最も影響度の低かった「人件費」ですが、今後は動向に注視する必要があります。

みずほリポートにもあるように、遠くない将来に日本国内では生産年齢人口の減少ペースが加速し、企業の人手不足感が一段と強まる見通しです。今年の春闘でも多くの企業が賃金の引き上げに応じており、今後もその傾向は続くでしょう。

人手不足が深刻化すれば、人材確保のために賃金水準を引き上げざるを得ず、それがさらなる物価高につながる可能性も否定できません。

消費者物価指数で分かる値上げの傾向

今年4月28日に、総務省から東京都区部における4月の「消費者物価指数」が発表されました。通常、全国の消費者物価指数は調査月の1カ月後に発表されるため、4月の数字は5月中旬頃に判明するのですが、東京都区部の数字は中旬速報値といって、その月の数字が同月内に発表されます。全国の消費者物価指数の先行指標的な存在と言ってよいでしょう。

その東京都区部の消費者物価指数を見ると、変動が大きい生鮮食品ならびにエネルギーを除く総合の数値が、騰勢を強めていることが分かりました。

昨年4月時点の数字は、前年同月比0.8%の上昇でしたが、今年4月のそれは前年同月比で3.8%もの上昇となったのです。しかも、この数字は昨年4月にプラスへと転じて以来、一貫して前年同月比が上昇を続けています。

また、この傾向は全国の数字にも見られます。全国の消費者物価指数で生鮮食品及びエネルギーを除く総合の数字を見ると、東京都区部と同じく昨年4月にプラスへと転じた後、3月まで上昇の一途をたどっています。

消費者物価指数を押し上げている要因は?

では、何が要因となって消費者物価指数を押し上げているのでしょうか?

それは生鮮食品を除く食料品の値上がりです。生鮮食品の前年同月比は+5.3%ですが、生鮮食品を除く食料の前年同月比は+8.9%となっているのです。

さらに中身を詳しく見ていくと、外食のハンバーガーが前年同月比で+18.4%、鶏卵が同+28.0%、食用油が同+22.7%というように、1年間で20%超も上昇しています。

特に鶏卵については、全国に広がった鳥インフルエンザの影響も大きかったようです。実際、今シーズンにおいて全国で処分されたニワトリは約1700万羽にも達しており、過去最多を更新しています。

また、食料品と共に値上がりが著しいものに家具・家事用品があり、前年同月比で+10.1%でした。家具・家事用品の中で、消費者物価指数の上昇に対する寄与度の高いものとしては、例えば家庭用耐久財が前年同月比で+12.8%、家庭用耐久財のうちルームエアコンが前年同月比+30.2%となりました。

逆に下落したものとしては水道・光熱費で、前年同月比▲2.0%でした。中でも電気代は、前年同月比で▲7.9%と大幅に下落していますが、水道・光熱費が低下しているのは、政府の電気・ガス料金抑制策による効果によるものです。

日銀の金融政策に期待されること

黒田前日銀総裁は、日銀総裁に就任した2013年4月の金融政策決定会合において、「量的・質的金融緩和」を打ち出し、その際に物価目標として+2%を掲げました。

本来なら、+2%の物価上昇率が定着したと判断された時点で量的・質的金融緩和を引き締め方向に転じなければならないところですが、現時点において+2%どころか、+3%、+4%という高い物価上昇率が示現しているにもかかわらず、日銀は金融引き締めに転じる動きを見せていません。

前述したように、日本の物価上昇率は食料品を中心にして、今年もそれほど上昇ペースが緩まる気配は見られず、消費者物価指数の押し上げ要因になる可能性が高いとするならば、日銀の金融政策も、現在の異次元金融緩和を正常化させるかどうかで、正念場を迎えることになりそうです。

鈴木 雅光/金融ジャーナリスト

有限会社JOYnt代表。1989年、岡三証券に入社後、公社債新聞社の記者に転じ、投資信託業界を中心に取材。1992年に金融データシステムに入社。投資信託のデータベースを駆使し、マネー雑誌などで執筆活動を展開。2004年に独立。出版プロデュースを中心に、映像コンテンツや音声コンテンツの制作に関わる。

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