「日本好配当リバランスオープン」はなぜ金利上昇に強い?
Finasee / 2023年5月12日 19時0分
Finasee(フィナシー)
純資産総額が3.3倍に急増した注目の投信
2023年に入り、「日本好配当リバランスオープン」へ資金が大きく流入しています。2022年末で約110億円だった純資産総額は、およそ370億円にまで増加しました(2023年5月2日時点)。
投資家が日本好配当リバランスオープンに集まる理由はなんでしょうか。背景を探ってみましょう。
【日本好配当リバランスオープン】
出所:岡三アセットマネジメント ファンド情報より著者作成2022年の好成績が話題に日本好配当リバランスオープンの純資産総額は2023年に急増していますが、これは前年の良好なパフォーマンスが注目されたためだと考えられます。
2022年はロシア・ウクライナ問題や金利の上昇などが影響し、国内株式市場は軟調に推移しました。例えば日経500種平均株価(※)の騰落率は12.5%のマイナスとなっています。対して日本好配当リバランスオープンは同年、およそ20%のリターンを確保しました。
※日経500種平均株価:対象を500 銘柄に拡大し日経平均株価と同じ方式で算出される株価指数
好成績を残した理由としては、不安定な相場で同ファンドが投資する高配当株が選好されやすかったこと、特に銀行株の投資割合が大きかったことから金利上昇の恩恵を受けたことなどが考えられます。
【組入比率上位3業種の推移(2022年)】
2022年3月 2022年6月 2022年9月 2022年12月 1位 銀行業(13.4%) 銀行業
(21.9%) 銀行業
(21.7%) 建設業
(13.2%) 2位 鉄鋼
(6.8%) 建設業
(9.5%) 建設業
(10.9%) 銀行業
(11.8%) 3位 化学
(6.6%) 輸送用機器
(8.6%) 化学
(6.9%) 化学
(7.9%)
出所:岡三アセットマネジメント 情報提供用資料(2023年1月)
もっとも、日本好配当リバランスオープンが良好な成績を収めたのは2022年に限りません。直近の1年間や3年間では日経500種平均株価やTOPIXを上回るリターンを残しており、設定来でもこれらの指数を大きく超えるリターンを獲得しています(2023年4月7日時点)。
【騰落率の比較(2023年4月7日時点)】
出所:岡三アセットマネジメント 月次レポートより著者作成運用のわかりやすさもポイントが高い明瞭な運用内容も、投資家が日本好配当株式リバランスオープンを選んでいる理由だと考えられます。
日本好配当リバランスオープンの運用方針は、日経500種平均株価に採用される銘柄のうち、予想配当利回りが高い順に投資するというシンプルなものです。組み入れる数は70銘柄程度で、基本的に銘柄ごとの比率には重みをつけず均等に(組入銘柄数が70銘柄なら約1.4%ずつ)投資します。
【ポートフォリオ特性(2023年4月7日時点)】
・組入銘柄数:71銘柄
・平均予想配当利回り:4.86%
参考)東証プライム市場の加重平均利回り:2.56%
出所:岡三アセットマネジメント 月次レポート
つまり、日本好配当リバランスオープンは単純に予想配当利回りが高い順に投資するという戦略で、複雑なものではありません。さらに同ファンドは月次レポートで組入銘柄を全て公表しています。多くの投資信託がポートフォリオの一部しか公開しない中、珍しい取り組みといえるでしょう。
【業種別の主な組入銘柄(2023年4月7日時点)】
鉱業 INPEX 建設業 大林組、長谷工コーポレーション、住友林業 不動産 飯田グループホールディングス、大東建託、ヒューリック 化学 住友化学、クラレ、三菱瓦斯化学 鉄鋼 日本製鉄、JFEホールディングス 海運業 日本郵船、商船三井、川崎汽船 食料品 日本たばこ産業 サービス業 日本郵政、MIXI 卸売業 住友商事、丸紅、双日 銀行業 三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループ、ゆうちょ銀行出所:岡三アセットマネジメント 月次レポート
難解な運用を行わず、また投資先の透明性も高い点は、投資家を惹きつける理由の1つといえるでしょう。
金利上昇の備えとして検討したい1本日本好配当リバランスオープンは、金利が上がる際に比較的良好なパフォーマンスを残しやすいと考えられます。金利上昇の恩恵を受けやすい金融の割合が大きいこと、また金利の上昇は景気回復期にみられる傾向にあり、好況時に需要が増えやすい素材関連産業の割合が大きいことなどが理由です。
【ポートフォリオに占める金融と素材関連の割合(2023年4月7日時点)】
出所:岡三アセットマネジメント 月次レポートより著者作成さらに投資対象が日経500種平均株価採用銘柄から選ばれること、予想配当利回りが高い順に組み入れられることを踏まえれば、ポートフォリオは割安な大型株が中心となりやすいでしょう。これらの銘柄は一般に事業が安定している傾向にあり、金利上昇で懸念されがちな業績や財務の悪化にもある程度耐えられることが期待できることから、日本好配当リバランスオープンの運用にも寄与すると考えられます。
ただし、反対に金利や景気が下向く場合、市場平均よりもパフォーマンスが悪化する可能性には注意してください。
また日本好配当リバランスオープンは原則として1ヵ月ごとに銘柄の入れ替えを行います。株価が上昇すると予想配当利回りが低下するため、好調な銘柄が排除されやすいことにも留意したいところです。
【日本好配当リバランスオープンの概要】
銘柄 日本好配当リバランスオープン 運用会社 岡三アセットマネジメント(※) ファンドのタイプ 国内株式型 設定日 2005年3月23日 信託期間 2025年1月7日まで 決算日 1・4・7・10月の7日 受渡期間 4営業日 販売手数料(最大、税込み) 3.3% 信託報酬(全体、税込み) 0.913% 信託報酬(販売会社、税込み) 0.44% 信託財産留保額 なし 主な販売会社 SMBC日興証券岡三証券
フィデリティ証券
※2023年7月に「SBI岡三アセットマネジメント」へ商号を変更する予定
執筆/若山卓也(わかやまFPサービス)
証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。
Finasee編集部
金融事情・現場に精通するスタッフ陣が、目に見えない「金融」を見える化し、わかりやすく伝える記事を発信します。
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