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販売台数「世界一」のトヨタがテスラに“惨敗”? 時価総額大差の理由

Finasee / 2023年6月1日 7時0分

販売台数「世界一」のトヨタがテスラに“惨敗”? 時価総額大差の理由

Finasee(フィナシー)

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アメリカの自動車市場は世界的に見ても大きく、2022年の新車販売台数は1390万台に上りました。これは中国(同2684万台)に次ぐ規模で、マルタを除くEU(同925万台)や日本(同420万台)を上回ります。

【地域別の新車販売台数(2022年)】
・中国:2684万4000台
・米国:1390万3429台
・EU(マルタ除く):925万4208台
・日本:420万1321台
・インド:379万2356台

出所:ジェトロおよびマークラインズ

足元に巨大な市場を抱えるも、アメリカの自動車メーカーは自動車販売台数で日本やヨーロッパ、韓国勢に後れを取ってきました。背景には、かつて栄光を築いた三大自動車メーカーが相次いで経営破綻したことがあるのかもしれません。

「ビッグスリー」の2社が陥落…お膝元の市も道連れで破綻

2009年6月1日、アメリカの自動車大手ゼネラル・モーターズ(以下GM)が経営破綻しました。同社は1908年に創業された自動車の名門で、同じく自動車大手のクライスラー、フォードと並び「ビッグスリー」と称されていました。

しかし海外勢との競争激化やエネルギー価格の高騰、さらにはサブプライムローンに端を発した不況などにより、GMはついに破綻してしまいます。実は同年4月にもクライスラーが倒産しており、ビッグスリーのうち経営破綻していないのはフォードだけとなっています。

またビッグスリーの本社があったデトロイト市も、税収の悪化などから2013年7月に破綻してしまいました。破綻時の負債総額180億ドル(約1兆8000億円)は、アメリカの自治体としては当時の過去最大だといわれています。

GMは約495億ドルの支援を受け国有化され、2010年11月に再上場を果たしました。その後、2013年には国有化を解消しています。しかし株価は長く伸び悩んでおり、投資家はGMが成長する姿をうまく描けていないようです。

【GMの株価(月足終値)】

Investing.comより著者作成テスラの時価総額が世界最大の理由

低迷するGMとは対照的に、アメリカのEV(電気自動車)大手「テスラ」は快走が続いています。2020年7月には時価総額が2072億ドルに到達し、トヨタ自動車(同2071億ドル)を抜いて世界の自動車メーカーで最大となりました。差はさらに拡大しており、テスラは約5130億ドルまで時価総額を増やしていますが、トヨタ自動車は2230億ドルほどにとどまっています(2023年5月1日終値)。

株式はどのような値動きを見せたのでしょうか。テスラ株式は2020年ごろから顕著に上昇し始め、高値からは下落したものの2018年末比でおよそ7.4倍の水準に位置しています(2023年4月末時点)。対してトヨタ自動車株式はほぼ横ばいで、値上がりはほとんど観察できません。

【テスラとトヨタ自動車の株価(月足終値 2018年末=100)】

Investing.comより著者作成

このように市場の期待がより注がれているのはテスラですが、実は自動車販売台数はトヨタ自動車が圧倒しています。2022年の販売台数を比較すると、トヨタ自動車は1048万台で世界首位となった一方、テスラは131万台にすぎません。なぜ販売台数で劣るテスラの方が投資家を引き付けているのでしょうか。

1つは利益率の差が挙げられます。直近の営業利益率を比較すると、トヨタ自動車が10%を割り込む一方、テスラは約17%にもなりました。これはテスラの方が効率よく利益を得ていることを表しています。株主資本に対する利益率を示すROEも、トヨタ自動車はテスラの3分の1ほどしかありません。

【営業利益率とROEの比較】

 

出所:日本経済新聞

市場のEVに対する期待の強さも関係しているでしょう。テスラの自動車販売台数は決して多くありませんが、EVに限れば世界首位です。トヨタ自動車はEVへの進出が遅れており、世界シェアは0.3%ほどだとみられています。EVへの取り組みの差が、株価の明暗を分けたのかもしれません。

ワイオミング州が「EV禁止法」で世界に逆行?

テスラを中心にEV化を進めつつあるアメリカですが、実は2023年1月にワイオミング州でEVの新車販売を段階的に廃止する法案が提出されたことが話題を集めています。世界的にはガソリン車の販売を規制する流れが強まっていますが、なぜワイオミング州で逆行する動きがあるのでしょうか。その背景には同州の経済構造があるとみられています。

ワイオミング州は石油や石炭、天然ガスといった天然資源が豊富で、その産出量は全米トップクラスです。一方でその他の産業に乏しく、鉱業が州内総生産のおよそ4分の1を占めており、天然資源と鉱業分野での雇用率は全米1位となっています。

出所:ジェトロおよび在デンバー日本国総領事館

つまりワイオミング州はエネルギーに対する依存度が高く、ガソリン車に対する規制は同州経済にとって逆風となる可能性が指摘されています。同じように天然資源への依存度が高い国や地域では、同様の動きが生じるかもしれません。

執筆/若山卓也(わかやまFPサービス)

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。

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