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選択肢が多すぎる…分散投資に悩む人のための“シンプルな考え方”

Finasee / 2023年5月16日 11時0分

選択肢が多すぎる…分散投資に悩む人のための“シンプルな考え方”

Finasee(フィナシー)

資産形成とは切っても切れない悩み

確定拠出年金や、つみたてNISAを含むNISAで資産形成を行う場合、一番悩むのは「何で運用すればいいのだろう」ということだと思います。

確定拠出年金やNISAなどの非課税口座を通じて投資できる先は、かなりたくさんあります。もちろん、運用先の選択肢は多いに越したことはありません。自由に選び、あるいは組み合わせることができるからです。

ただ、選択肢が多過ぎると逆に選べない状況に陥ってしまうケースがあります。

しかも、インターネットなどを介して流れてくるさまざまな投資の情報を見ると、「投資をする時はリスクを軽減させるために分散投資が必要」などと書かれていて、「1つでさえ選ぶのが難しいのに、複数を選んで組み合わせるなんて無理だ」と、諦めてしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか。

参考にできる“9つのポートフォリオ”

ゴールデンウイークに入る前にリリースされたニッセイ基礎研究所の「基礎研レポート」には、「確定拠出年金やNISAでは何に投資したら良いのか」という、運用先に悩む方たちにとって、まさに興味を惹かれるタイトルが掲げられています。

米国株式型、外国株式型、内外株式型、バランス型など、全部で9つのポートフォリオ別に、特定の運用期間中にどの程度のリターンが実現されたのかを比較しています。

ちなみに9つのポートフォリオに組み入れられている資産クラスは、以下の6資産で、それぞれの資産クラスを代表するインデックスに連動するものとしています。

●米国株式・・・・・・S&P500配当込み
●外国株式・・・・・・MSCIコクサイ配当込み
●国内株式・・・・・・TOPIX配当込み
●外国債券・・・・・・FTSE世界国債インデックス(除く日本)
●国内債券・・・・・・NOMURA-BPI総合
●短資・・・・・・・・短期債券など

そして、9つのポートフォリオのうち、米国株式型、外国株式型、国内株式型、外国債券型、国内債券型は、上記のインデックスを100%組み入れて運用することになっています。また、その他のポートフォリオでは、

●内外株式型は「国内株式50%+外国株式50%」
●バランス型(高リスク型)は「国内株式50%+外国株式25%+国内債券17%+外国債券5%+短資3%」
●バランス型(中リスク型)は「国内債券42%+国内株式33%+外国株式17%+外国債券5%+短資3%」
●バランス型(低リスク型)は「国内債券67%+国内株式17%+外国株式8%+外国債券5%+短資3%」

という組み合わせになっています。

金融・経済危機に直面…報われるにはどうしたら?

同レポートで興味深いのは、この30年間で私たちが経験してきた金融・経済危機の直前から積立投資をスタートさせた場合、2023年3月末までに最終積立金額がいくらになったのか、年率リターンは何%になったのかを計算していることです。

ちなみに過去30年間で起こった金融・経済危機は以下の4つで、積立投資を始めた起点となる年月は、以下になります。

日本バブル崩壊直前・・・・・1989年12月末
ITバブル崩壊直前・・・・・・2000年2月末
リーマン・ショック直前・・・2007年10月末
コロナ・ショック直前・・・・2019年12月末

投資している最中に、こうした危機に直面すると、「すべては終わった」などと絶望感を抱いてマーケットから退場してしまう人も少なくありません。しかし、このレポートに記載されている結果を見ると、不幸にしてバブル崩壊に直面したとしても、投資を続けることができれば、報われる可能性が高まることが分かります。

例えば、1989年12月末のTOPIXは、2881.37ポイントで、2012年6月には過去最安値の695.51ポイントまで下落しました。実に4分の1以下です。ここまで下がるといい加減、嫌になるものですが、それでも投資を継続したことによって、実は利益が出ているのです。

ちなみに、1989年12月末を起点にして毎月2万円ずつ積立投資をしていった場合、累積積立元本は798万円ですが、国内株式型で運用し続けた場合の最終積立金額は、2023年3月末時点で1702万円になります。年率のリターンにすると年4%ですから、少なくともゼロ金利状態が続いている預貯金よりも、よい運用成果が得られています。

しかも、これはあくまで「国内株式のみ」で運用した場合の結果です。MSCIコクサイという、日本を除く世界先進国22カ国の株価を合成した指数で運用した場合、1989年12月末からの最終積立金額は4914万円になります。この間の年率リターンは年9%です。

ちなみに、9つのポートフォリオで最も高いリターンを上げているのは米国株式型で、1989年12月末からの最終積立金額は6187万円、年率リターンは年10%でした。

分散投資に悩んだ時の、1つの考え方

投資信託などのリスク商品を用いて資産運用を始めたばかりの方は、投資対象を選ぶ際、「初めての投資だから、できるだけ元本割れリスクの低いもので運用したい」などと考え、9つのポートフォリオの中では「バランス型(中リスク型)」か、「バランス型(低リスク型)」を選びがちです。

もちろん、レポートを見ても分かる通り、両者とも元本割れはせず一定のリターンは実現されています。中リスク型の年率リターンは年4%、低リスク型は年3%ですから、現在の預貯金利率から見れば非常によい数字と言えます。

ただ、個人が自分の資産を運用する際、購入する投資信託でリスクをコントロールする必要は基本的にはないと考えます。

もちろん、すべての金融資産を1本の投資信託で運用するなら、リスクをコントロールするためにバランス型を選ぶ必要はあるかもしれませんが、多くの人にとって確定拠出年金やNISAで購入する投資信託は、全金融資産の一部です。多くの場合、投資信託以外に預貯金や債券といった、円建てで元本が保証された金融商品を保有しているのが一般的です。

だとしたら、元本割れリスクのコントロールはこの手の元本保証型商品も含め、自分が保有している金融資産全体で行う方が合理的ですし、自分が取っているリスクの度合いも分かりやすくなります。

例えば、運用資産が100万円でこのうち投資信託を50万円購入したとします。購入した投資信託は債券50%、株式50%で運用するバランス型投資信託です。バランス型投資信託とはいえ、株式を50%組み入れているので、価格変動リスクがあります。

この場合、表面的には、保有しているポートフォリオ全体の50%で、価格変動リスクを取っているように見えます。しかし、基本的に債券は安定資産なので、実際にはポートフォリオ全体の25%で価格変動リスクを取っていることになります。

つまり、保有している投資信託と保有しているポートフォリオ全体の二重に価格変動リスクをコントロールする形になるため、どの程度までリスクを取っているのかが分かりにくくなってしまうのです。

もし、価格変動リスクをポートフォリオ全体の50%まで許容できるなら、その50%をバランス型投資信託ではなく、他の株式型投資信託を組み合わせる方がより合理的と言えるでしょう。

鈴木 雅光/金融ジャーナリスト

有限会社JOYnt代表。1989年、岡三証券に入社後、公社債新聞社の記者に転じ、投資信託業界を中心に取材。1992年に金融データシステムに入社。投資信託のデータベースを駆使し、マネー雑誌などで執筆活動を展開。2004年に独立。出版プロデュースを中心に、映像コンテンツや音声コンテンツの制作に関わる。

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