人が言う「お金がないから…」の言葉を真に受けてはいけない“これだけの理由”
Finasee / 2023年5月25日 15時0分
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Finasee(フィナシー)
今注目の書籍の一部を公開して読みどころを紹介するシリーズ。今回は人生を豊かに生きるための具体的な「お金の使い方」について解説した大江英樹の『90歳までに使い切る お金の賢い減らし方』の一部を特別に公開します(本記事は前編)。
※本記事は大江英樹著『90歳までに使い切る お金の賢い減らし方』(光文社)から一部を抜粋・再編集したものです。
「お金がないから」というごまかし50代から必ず出てくるセリフ
さて、いよいよ本節に入ります。この章の最初の節は「好きなことにお金を使おう」ということについてです。
私は企業からの依頼で、50代の社員の方向けにセミナーをすることが多いのですが、そんな時にいつも言うのは、「60歳になって定年になったのであれば、そこからは仕事でも趣味でも何でもいいから自分の好きなことをやりましょう」ということです。
すると、それに対して多くの参加者が口にするのが、「好きなことをやりたいけれど、お金がないからできない」、そして「好きなことといっても、何をしたらいいのかわからない」という2つのセリフです。
ここでは最初の「お金がないから……」という言葉について考えてみたいと思います。
「お金がない」ってどういうこと?
「お金がない」という理由は、一見もっともらしい理由に思えます。でも、もう少し深く考えてみましょう。「お金がない」というのはどういう状態をいうのでしょうか。
現金や普通預金にまとまったお金がないというなら、それはほとんどの人がそうでしょう。家に大金を置いている人なんてほとんどいませんし、預金だって少しまとまれば、定期預金や投資に回したりするでしょうから、現金や普通預金をたくさん持っていないからといって「お金がない」というのは少し違うと思います。
普通、「お金がない」というのは、「生活が苦しい」「お金の余裕がない」ということを指すのだと思います。これはたしかに、そういう人が世の中に一定数いることは間違いありません。でも私が研修講師を依頼されるような、比較的大きな規模の会社で50代まで働き続けてきた人であれば、そういう人は、いたとしてもそれほど多くはないでしょう。
にもかかわらず、ほとんどの人が「お金がない」と言うのは、いったいどういうわけなのでしょう。
おそらく「お金がない」と答える人の真意を正確に表現すれば、「そんなものに使うお金はない」ということなのだと思います。これならよくわかります。要は価値観の問題だからです。
たとえば、私は駅から少し離れた団地に住んでいるので、買い物に行くのも駅に行くのも自分で自動車を運転していきます。で、乗っているのは軽自動車です。
私の知人にはポルシェに乗っていたり、ベンツを持っていたりする人もいます。でも私は「ベンツに乗るなんて、そんなお金はない」という言い方はしません。私にとって、車は単なる移動手段で、それ以上の価値は何もないので、そんな高級車を買う意味はまったくないからです。ベンツであろうが軽自動車であろうが、使えればそれでよいので、別にベンツやポルシェに乗っている人をうらやましいと思ったことは一度もありません。まさに「そんなものを買うために使うお金はない」のです。
これは自慢にもなりませんが、私は今まで一度も、自分の車を自分で洗ったことがありません。よほど汚れがひどくなると、ガソリンスタンドの自動洗車を利用することもありますが、そもそも自分で洗車するなどということは私にとっては何の価値もない、もったいない時間なのです。この事実からも、私が自動車にお金をかけることには何ら価値を見いだしていないということがおわかりいただけると思います。
好きなものはもったいないとは思わない
逆に私がお金をかけるのは旅行です。50歳を過ぎてからの旅行では、値段を気にせずに、高級で居心地のよい宿に泊まるようにしています。移動もすべてグリーン車です。
人からは「よくそんな贅沢ができますね」といわれることもありますが、私にとって、旅行は最高の気分転換で、日常とは違った環境で思考にふけることができる、最も快適な機会なのです。
実際、旅行で考えたことや思いついたヒントが、コラムになったり本になったりして、ヒットしたこともあります。私は自分自身、寝ている時以外、すべて仕事だと思っていますから、見るもの、聞くものは全部、私にとっては取材なのです。
つまり、旅行はある意味、私にとっては投資ですから、楽しみであると同時に、収益を生み出してくれる源泉にもなっています。
年に数回、そういう投資のためにお金を使うことは、まったくもったいないと思いません。でも私にとって、普通の車を買うことすらもったいないので、安い軽自動車に乗っているのです。面白いことに友人から、「お前よく、そんな豪勢な旅行に行けるなあ、よっぽど金があるんだなあ」と言われたことがありますが、そういう彼が乗っている車はメルセデスです(笑)。結局、人は誰も、自分が本当にやりたいと思っていることや、心から欲しいと熱望しているものに対しては、お金を惜しむことはしないのです。
「いや、そんなことはない、食うや食わずの人にとっては、いくらやりたくてもできないことがある」という意見もあるでしょう。それはその通りです。私は子どもの頃、父親が事業に失敗し、小学校の給食費も払えないという本当に貧しい生活を経験していますので、それはよくわかります。
でも、世の中の人がみんなそういうわけではありません。ほとんどの人は生活水準に差があっても、その中で優先順位をつけて、自分にとって大事なことにお金を使っているはずです。ですから、誰でも自分のやりたいことに、何の遠慮もすることもなくお金を使えばいいのです。
ここにも「同調圧力」がある
では、なぜ多くの人は、「お金がない」と言って、やりたいことや欲しいものを手に入れようとしないのでしょう。
この理由は2つあると思っています。
まず1つは、「本当はそれほど欲しくない」からです。生活のレベルは人それぞれですから、欲しいものを手に入れるために普通に生活をしながら貯金をするという人もいますが、中には生活費だけで手一杯なので貯金する余裕がないという人もいるでしょう。
そんな場合、どうしても欲しければ、本業以外に何か別の収入の道を考えるとか、あるいは生活レベルを落としたり、極端な場合は一食抜いてでもその分のお金を回したりということをしてもよいはずです。
でもそれをしないということは、そのことやモノにそれほど大きな価値を見いだしていないからでしょう。だとすれば、それに対してはあまり無理をする必要はありません。
そしてもう1つの理由が、「同調圧力」だと思います。日本人は諸外国の人に比べて同調圧力が強いといわれています。昔の農村などでは、みんなと違うことをすると「村八分」にされたりすることがありました。
もちろん、現代ではそんなことはあり得ないのですが、仲間はずれにされたり、「あの人は変わっている」と思われたりすることを嫌がる気持ちは、多くの人が持っています。結果として、何につけても、相手からの申し出をどう断るかという理由を考えなければならないことが多くなってきます。
「○○を一緒にやりましょう」とか「○○は面白いよ!」と言われた時に、本当は欲しくないものややりたくないことでも、「そんなの興味ないよ」とか「そんなものいらないよ」と言ってしまうと、相手の好きなものを否定するようなニュアンスを与えてしまうのではないかと思うのです。したがって、それをむげに断ったのでは角が立つので、「お金がない」といってごまかしているのではないでしょうか。
つまり、「お金がない」というのは、断る理由としては一番無難、それだけなのです。
ごまかさずに、自分の意思にしたがうべき
人生の楽しみは、好きなことをしたり、欲しいものを手に入れて喜びを感じたりすることにあるといっていいでしょう。そして、その「楽しみ」は人それぞれ違いますし、違って当然です。
ですから、「お金がない」と言ってごまかさずに、それは自分にとって価値がない、別にやりたくも何ともない、ということを堂々と言えばよいのです。周りとの摩擦を避けるために、無難な言葉で逃げる必要はまったくありません。そして人が何と言おうが、やりたいことには堂々とお金を使えばいいのです。
人生の目的はお金持ちになることではなく、幸福になることなのですから、それが自分にとって幸福になることなら、遠慮することはありません。どんどんお金は使うべしです。
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大江英樹著『90歳までに使い切る お金の賢い減らし方』(光文社)
大江 英樹/経済コラムニスト
1級ファイナンシャルプラニング技能士、CFP®、日本証券アナリスト協会検定会員、行動経済学会会員、日本FP学会会員。大手証券会社において25年間、個人の資産運用相談に携わり、2001年10月より確定拠出年金における投資教育業務に従事した後、2012年に独立。資産運用やライフプラニング、行動経済学に関する講演・研修・執筆活動を行っている。
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