「リア充アピールすれば他人がうらやむ」は妄想…本当に意味あるお金の使い道は
Finasee / 2023年5月25日 15時0分
Finasee(フィナシー)
今注目の書籍の一部を公開して読みどころを紹介するシリーズ。今回は人生を豊かに生きるための具体的な「お金の使い方」について解説した大江英樹の『90歳までに使い切る お金の賢い減らし方』の一部を特別に公開します(本記事は後編)。
※本記事は大江英樹著『90歳までに使い切る お金の賢い減らし方』(光文社)から一部を抜粋・再編集したものです。
「見栄」と「義理」にお金を使う時代本章の(4)の1で、「世の中に無駄なものなど何もない」「無駄使いしたって一向にかまわない」と言いました。本人が価値を認めているものなら、どんなお金の使い方をしてもよいのですが、たった1つだけ、これはやめた方がよいと思う使い方があります。
それは「見栄」と「義理」にお金を使うことです。
ところが今の時代は、おそらくかつてないほど、この「見栄」と「義理」にお金を使う時代になってきたようです。
どうしてそうなってしまったのか、そしてそのどこがよくないのかについて考えてみたいと思います。
リア充ぶりをアピールして何になる年輩の人だと、「リア充」といわれても何のことかわからないかもしれません。これはブログやSNSのようなオンライン空間での活動ではなく、現実(リアル)の生活が充実している人を指すネットスラングのことです。もともとはネットのコミュニティである「2ちゃんねる」(現「5ちゃんねる」)で使われ始めた言葉で、当初はネットコミュニティに集まる人たちが、ネットでのコミュニケーションは活発にしていても現実の生活があまり充実していないことを自虐的に表現するための言葉として使われていました。
最近では、主に写真や動画を活用したインスタグラムやフェイスブック、あるいはTikTokといったSNS上で投稿するネタとして、いろいろなところに旅行に行ったり、お洒落なカフェでアフタヌーンティーを愉しんだりしている光景を、写真や動画で撮影する人が増えています。「インスタ映え」といわれるような写真をたくさん投稿する、あるいはインスタ映えする写真を撮るために珍しいところへ行ったり、美味しそうなものを食べたりするという行動はよく見かけます。
これはつまり、旅行やカフェで過ごす自分を紹介することで、「自分はこんなに充実した生活を送っているのだ」というリア充ぶりをアピールするためにお金を使っていることに他なりません。
特に最近は、昔と違って、誰もがSNSを使うようになったために、自分で世の中の人に向けて情報発信することが容易になってきたというのも、この傾向に拍車をかけているようです。
もちろん、本人がそれで満足しているのであれば、そういうお金の使い方をしてもかまわないわけですが、それはつまり、他人に自分をうらやましがらせるためにお金を使っているということであり、あまり意味のない使い方なのではないでしょうか。フェイスブックでいくらたくさん「いいね」が付いても、投稿を見ている人のホンネはわからないからです。
うらやましがられていると思うのはその人の勝手ですが、実際には妬まれていたり、「こんなチャラチャラした投稿をして、ばかじゃないか」と思われていたりするかもしれません。「どうだ、こんな美味しいものを食べているんだぞ、すごいだろう!」といわんばかりにリア充ぶりをアピールするというのは、厳しい言い方をすれば、投稿している人の妄想にすぎません。だったらそんな妄想のためにお金を使うのはあまり意味がないと思います。
人に注目されるために物を買う心理人をうらやましがらせるためにお金を使うというのは、SNSで投稿するために旅行や飲食をすることだけではありません。物を買うことでもそういう心理はあるでしょう。
たとえば高価なブランド物のバッグや値段の高い時計を買ったりすることがあります。もちろん自分が好きなデザインや材質であるとか、そのブランドの製品の品質がよいので気に入ったということで買うのであれば、それは結構なことです。
ところが、高級なブランド物を身に付けて自分が注目されるということを期待するのであれば、それはほとんど意味がないと思います。なぜなら、そもそも自分が思うほど人はあなたのことを見ていないし、気にもかけてはいないからです。
私は定年後に年賀状を出すのをすべて廃止したのですが、ある時、昔同じ部署で仕事をした仲間と集まった時に、年賀状を出していない非礼を詫びたところ、私が年賀状を出していないということに誰1人として気付いていなかったのです(笑)。それぐらい誰も人のことは気にしないのです。
したがって、その品物を持った時に、他人からどれぐらい注目されるだろうか、自分のことをどう見るだろうか、というのは、あくまでも自分の想像の産物にすぎません。それはおそらく、他人の持っているものを見てうらやましく感じる気持ちが自分にあるから、逆に自分がそれを持っていれば人が注目してくれるはずだ、と想像するのでしょう。ということは、人にうらやましく感じてもらいたいという気持ちの強い人は、自分もまた人のことをうらやむ気持ちが強い人なのだと思います。
私は、基本的に“人との比較”のためにお金を使うべきではないと思います。なぜならそれはキリがないからです。「自分の心の満足が得られるのなら、ブランド物を買って見せびらかしてもいいじゃないか」という人もいるでしょう。でもそうやって高価な品を買った翌日に、また他の人がもっと高価なものを身に付けている場面に出くわしたらどうでしょう。おそらくそれまでの優越感や幸福感は消えてしまうに違いありません。
そうやって、もっとよいものを、もっと高いものをと追いかけていくと、本当にキリがなくなってしまうのです。
義理よりも人情の方が大事「リア充ぶりのアピール」「高価なブランド物の購入」――それらの行為の多くは、自分をよく見せたいという「見栄」から生じるものです。私はこの「見栄」に加えて、「義理」にお金を使うのも、よく考えた方がよいと思います。
もちろん、社会人として生きていくためには、たとえ義理であったとしても、付き合いやお金を出す機会はやむを得ないケースがあります。でも、義理は最小限にしておくべきですし、特に、若いうちはともかく、定年近い年齢になってきたら、過剰に義理を果たす必要はないと思います。
私は60歳を過ぎて以降、自分で決めているあるルールがあります。それは、原則として慶事の出席は断るけれど、弔事は可能な限り出席するということです。もちろん、身内の人間やごく親しい友人自身が結婚する場合には喜んで出席しますが、相手も義理で呼んでいて、こちらも義理で出る結婚式には、理由をつけて出席しないようにしています。
でも、知人が亡くなった場合には、お通夜や告別式は何とか都合を付けて出席しますし、どうしてもできない場合には、供花を送ったり、後日あらためてお線香をあげに訪問したりするようにしています。
この理由は、「義理」よりも「人情」の方が大事だと思うからです。
人のためにお金(時間)を使う大切さ近親者の葬儀を経験した方ならおわかりになると思いますが、自分が喪主として葬儀に臨む時、多くの人が来てくれたり、お花や弔電をいただいたりするのは本当にありがたいという気持ちになるものです。家族が亡くなった悲しみをほんの少しであっても癒やしてくれます。たとえばそれが自分の父(母)であった場合、想定以上に多くの人が参列してくれると、「ああ、父(母)はこんなにもたくさんの人に慕われていたのだ」という感情が湧いてくるでしょう。
つまり、葬儀やお通夜に参列すること自体が、多少なりとも遺族の心情を癒やすことにつながります。言い換えれば、「弔事」への参列は、人のためにお金(時間)を使うということなのです。
ところが結婚式の場合、一番うれしいのは本人たちです。もちろんたくさんお祝いに来てくれたらうれしいでしょうが、それは自分たちにとってごく親しい人であって、自分の両親の仕事関係の取引先や以前の上司などには、ぜひ出席してほしいという気持ちはあまりないと思います。全部が全部とはいいませんが、ある程度の年齢になってくれば、「慶事への参列は義理、弔事への参列は人情」というのが一般的だろうと思います。
結局のところ、突き詰めて考えていくと、「見栄」も「義理」も、人が自分をどう見ているかということに行き着くのだと思います。でも前述したように、自分が意識するほど人は自分のことを見ていません。
だったら、「人からどう見られているか」にお金を使うよりも、「自分がどれぐらい楽しいか」にお金を使った方がはるかによいと思います。
世の中に無駄なことなど何もありませんが、人との比較に使うお金、人からどう見られているかを意識するために使うお金だけは、使い過ぎない方がよいと思います。
***大江英樹著『90歳までに使い切る お金の賢い減らし方』(光文社)
大江 英樹/経済コラムニスト
1級ファイナンシャルプラニング技能士、CFP®、日本証券アナリスト協会検定会員、行動経済学会会員、日本FP学会会員。大手証券会社において25年間、個人の資産運用相談に携わり、2001年10月より確定拠出年金における投資教育業務に従事した後、2012年に独立。資産運用やライフプラニング、行動経済学に関する講演・研修・執筆活動を行っている。
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