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“害虫の遺影”に手を合わせ…アース製薬が「殺虫剤」を使わない理由

Finasee / 2023年6月4日 11時0分

“害虫の遺影”に手を合わせ…アース製薬が「殺虫剤」を使わない理由

Finasee(フィナシー)

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6月4日は「虫ケア用品の日」です。日付が6(む)4(し)と読めること、また虫ケア用品に対する需要が高まる時期であることから、虫ケア用品大手のアース製薬が定めました。

害虫を弔う虫ケア用品メーカー

アース製薬は1892年創業され、1964年に現在の社名となりました。1973年に発売した「ごきぶりホイホイ」がヒットし、その後も「アースノーマット」や「アースジェット」など多くのロングセラー商品を世に送り出しています。アース製薬によると、国内虫ケア用品の市場シェアは56.3%(2022年12月期)に上っていることから、同社の製品に助けられている人も多いのではないでしょうか。

実はアース製薬は「虫供養」を行うことで知られています。同社の社員がハエやカなどの“遺影”の前で焼香し手を合わせる姿はよく報道されますが、多くの人には異様に映るでしょう。

しかし、アース製薬は虫供養を遊びで行っているわけではありません。同社の虫供養は、研究所がある兵庫県赤穂市の妙道寺で毎年12月に行われることが恒例となっており、その歴史は40年以上に上るとみられています。

アース製薬の虫ケア用品は、開発段階で多くの害虫を犠牲にしており、また消費者が使用すれば当然ながらさらに多くの命を奪うこととなります。いわばアース製薬は虫たちの犠牲の上に成り立っており、これを弔うことを目的に虫供養を行っているのです。

ちなみに、アース製薬は2017年に「殺虫剤」という呼称を「虫ケア用品」へと変更しています。同社は虫よけ剤といった殺虫を目的としない商品も提供しており、「虫を殺す」というより「人を守る」という考えから変更したと説明しています。

実は日用品に強みがあるアース製薬

虫ケア用品のイメージが強いアース製薬ですが、実は日用品の方が大きな売上高を占めていることはあまり知られていません。同社は入浴剤の「バスロマン」や洗口液の「モンダミン」など、誰もが知るような人気ブランドを多数抱える日用品メーカーでもあります。

【アース製薬のセグメント売上高(2022年12月期)】

アース製薬 2022年12月期決算短信より著者作成

近年はM&Aを通じ、さらに日用品を拡充してきました。2012年に入浴剤大手のバスクリンを買収したほか、2014年に「アイスノン」などで知られる白元から事業を買い取っています。特に白本が扱っていた不織布マスクがラインアップに加わったことは、コロナ禍を迎えることとなるアース製薬にとって幸運だったといえるでしょう。また2022年11月には入浴剤ブランド「BARTH」事業の譲受も発表しており、日用品部門の強化に余念がありません。

虫ケア用品は季節性のある商品で、一般に冬季に売り上げが減少すると考えられます。年を通して需要が見込める日用品が充実すれば、同社の業績をさらに押し上げるかもしれません。

【アース製薬の業績】

※2023年12月期(予想)は、2022年12月期における同社の予想
※アース製薬は2022年12月期より「収益認識に関する会計基準」等を適用している

出所:アース製薬 2022年12月期決算短信

【アース製薬の株価】

Investing.comより著者作成食糧問題の解決が期待される「昆虫食」

虫に関する話題として、最近は「昆虫食」が注目されているようです。きっかけは高等学校で食用コオロギの粉末を使用した給食が提供されたことでした。生徒は自身で食べるか否かを選択できたものの、子どもの食が舞台となっただけに、一部からは昆虫食の安全性や衛生面を心配する声があがり、大きな論争を呼んでいます。

昆虫食は、2013年5月に国際連合食糧農業機関(FAO)が報告書を公表した際も注目されました。同報告書では、世界で人は1990種を超える昆虫類を食していること、昆虫類にはタンパク質や鉄分などが豊富に含まれていること、また食品だけでなく飼料としての活用も期待できることなどが示され、おおむね昆虫食を推奨する内容でした。

背景には世界的な食糧不足があるとみられています。昆虫類は少ない環境負荷で飼育でき、また多くの栄養素を持つことから、従来の食品の代用品として期待されています。

昆虫食を容認する動きも世界ではあり、例えばEUは2018年に昆虫を新規食品と規定し、2021年5月には初めて乾燥イエロー・ミールワームを使用した食品の販売を承認しました。国内でも食用コオロギなどを手掛けるベンチャー企業が数億円の資金調達に成功する例も表れています。

日本能率協会総合研究所は2020年12月、2019年度におよそ70億円だった世界の昆虫食の市場規模は、2025年度までに1000億円にまで拡大するとの予測を公表しました。まだ主流とはいえない昆虫食ですが、今後は私たちに身近な存在となるかもしれません。

執筆/若山卓也(わかやまFPサービス)

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。

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