“終わった”中高年、“いまを生きる”中高年―決定的な違いを生む要素とは
Finasee / 2023年6月1日 11時0分
Finasee(フィナシー)
人生100年時代における「50歳」は、折り返し地点でもある重要なタイミング。結婚や仕事、育児で悩んでいた20代、30代の頃と異なる不安や心配が出てくるものです。
仕事人生の後半戦ならではの不安や悩みに、働く人々のアドバイザー的存在として書籍や雑誌で執筆活動を行う有川真由美氏が寄り添います。話題の書籍『50歳から花開く人、50歳で止まる人』では、人生後半で様々な不安から解放されて前向きに生きていくための知恵について解説しています。今回は、本書第1章『50歳からは「自分優先」で生きていく』の一部を特別に公開します。(全3回)
※本稿は、有川真由美著『50歳から花開く人、50歳で止まる人』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。
「会社がなくなるのが怖い」という不安でいっぱいですか?私の話を少しさせてください。
「働けば働くほど、不幸になっていくのではないか」
かつて会社員として過酷な働き方をしていたとき、そう思っていました。がんばるほど心と体が壊れていく。稼いだお金を使う暇も、友人や家族と過ごす暇もない……。それでも辞められなかったのは、せっかく入った会社を辞めるのは「負け」「逃げ」だと思っていたから。いえ、正直にいうと、会社の名前がなくなって、まわりに「なんでもない人」「残念な人」と下に見られるのが怖かったからです。
ついに体がボロボロになって会社を辞め、半年後に再就職活動を始めたとき、これまでの経歴がなんの役にも立たないことに愕然(がくぜん)としました。社内では表彰され、とんとん拍子に昇進したのに、会社の外ではただの人。
「私はこれができます」と胸を張れるものがなにもなかったのです。それから、さまざまな仕事をしました。ブライダル会社にいたとき、カメラマンとしてのスキルを身につけてフリーで活動したあと、嘱託社員として新聞社に就職。
定年まで働くつもりで、ゆったり構えていたら、法律が変わったことから、突然、契約を切られることになりました。
40歳手前。定年が20年、早まったようなものでした。
そのころは、毎日寝る前に「ほんとうのところ、どうしたいの?」と問い続けていました。ある朝、カメラを抱えて海外を取材する自分の姿が浮かんできた途端、動き出さずにはいられなくなり、数カ月後にはそれを実行していました。
最初からうまくいったわけではありません。世界を放浪したあとは、横浜で風呂ナシの離れを借りて、日雇いのアルバイトをしながら、細々と週刊誌で発表していたこともありました。
でも、自分の行きたい道を行けるところまで行ってみようとする旅路は、どこを切り取っても「楽しかった」「幸せだった」と思うのです。
私の話を読んで、「一歩踏み出すのは、若いからできること」と思われるでしょうか。「たまたま運がよかったから、うまくいった」と思いますか。
たしかに、年齢や人との出逢いは大きく関係していますが、50歳、60歳で放り出されても、私はなにかしら、やれることを見つけていくでしょう。さらに増えた知恵と人間関係などの資源を生かして、それはそれで面白い旅になると思うのです。
すべての年代で「学ぶ」「働く」「遊ぶ」を同時進行するこれまで私は会社員、派遣社員、フリーランス、経営者など立場をくるくると変え、やった仕事は50職種以上になります。新しい環境に飛び込むことの繰り返しでした。
世間では「一度入った会社は、続けるべき」「長く続けてこそ、会社員の価値がある」などといわれます。
でも、そもそも会社とは期間限定のもの。もっというと、家族の形態も期間限定のものです。いつか、会社や家族のなかの役割から解き放たれることは、否が応でもやってきます。
これまでの「学び(20歳前後まで)→労働(60歳前後まで)→老後(死ぬまで)」という一辺倒のライフコースはなくなり、すべての年代で「学ぶ」「働く」「遊ぶ」を同時進行し、柔軟に変化していく時代になりつつあります。働くことに加えて、学んだり、遊んだりしているから、次のステージも生まれてきます。
会社というのは、働くだけの場で老いたら使い捨てにされるものではなく、ひとつの“踏み台”だと主体的に考えたほうがいいのです。
会社のなかだけでなく、社会全体をフィールドにして生きていく方法は無限にあります。何十年と働いてきた会社員や、休みなく家事や育児を続けてきた主婦がなにもできないはずはありません。
そして、社会全体をフィールドと考えると、これまでよりずっと多くの人の幸せに直接的に貢献できる姿が見えてくるのです。
「いまさら、そんな仕事はできない」と思っていますか?地元にUターンする人がよく言っているのは、「地方は仕事がない」ということ。中高年でも若者でも「会社が少ない」「給料が少ない」「正社員になれない」などと嘆きます。
でも、ちょっと待ってください。コロナ禍(か)以降、どこにいてもリモートで仕事ができる人が増えました。地方では介護や保育、農業、運送業などの業種はいつも人手不足です。柔軟な考えの人は、そんな分野から関連する仕事を見つけたり、自分で店を開いたり、会社をつくったり、町おこしやボランティア活動をしたりしながら、地域に溶け込んでいきます。
一方、大企業や役職の肩書きがあった人ほど、定年後もネームバリューや立場にこだわって、それ以外は「いまさら、そんな仕事はできない」などと言うのです。専業主婦でも、子どもが巣立って、やっとこれから自分の道を歩けるというときに、「パートやアルバイトの仕事は、いまさらしたくない」などと言う人もいます。
気を悪くされるかもしれませんが、そのようなプライドほど、邪魔になるものはありません。
おそらくそんな人たちは、まわりに認められることや、人と比べることで自分の価値を測ってきたのではないでしょうか。ほんとうは自信がないから、肩書きや過去の栄光をアピールしたり、見栄えのいい仕事をしようとしたりして、自分を武装してしまうのではありませんか。
ほんとうに自信がある人は、決まって謙虚です。そもそも自分に価値があることはわかっているので、自分を飾ったり、上から目線だったりすることはありません。自分の成長のためには、年下にも頭を下げて教えてもらい、人の話をよく聞きます。
まわりにどう思われるかを気にしても、他人は自分が思っているほど、自分には興味がないものです。他人から認められる生き方ではなく、自分で自分を認める生き方、自分を好きになれる生き方にシフトしていこうではありませんか。
「過去の自分」ではなく、「いまの自分」に自信をもつ日本人の仕事に対する価値観は、大きく変わろうとしています。
地位や収入よりも、個人の幸せや成長を重視し始めたのは、中高年より先に、若者のほうでした。自分を犠牲にしてまで働いても、大した見返りはないと、感覚的にわかってきたのでしょう。
彼らは「肩書き」「収入」よりも、「やりがい」「心地よさ」を重視します。「なにに属するか」よりも、「なにになるか」「だれとつながるか」を重視します。
会社の上下関係で消耗するのではなく、上にいくために競争するのでもなく、横のつながりで、人と協力し合いながら自分が力を発揮できる道を探します。
中高年のほうが、これまでの価値観を変えるのはむずかしいもの。先にシフトした人から、これまでの“呪縛”から解放されて、「気負わず、無理せず、伸び伸びと」生きられるようになります。
「人に認められたい」という承認欲求はだれにでもあるものです。おそらく、その欲求は死ぬまでついてくるし、それが力になっていることも否(いな)めません。
だからこそ、「元○○」といった肩書きに頼る情けない人になってはいけない。会社がなくなると、利害関係でつながっていた人たちは一斉に散っていきます。
「この人に会いたい」「この人と仕事をしたい」と思うのも、人柄や仕事ぶりに魅力がある人です。情熱をもってなにかに取り組んでいたり、自分の世界をもってやりたいことを伸び伸びと楽しんでいたり……。
つまり、「終わった人」ではなく、「いまを生きている人」であり、そんな人はかっこよく、尊敬できるのです。
「いまさら、そんな仕事をしたくない」と思う人こそ、自分が満足し、人から認められるほどの力をつけておく必要があります。仕事を選ぶよりも、選ばれる人になることのほうが先決なのです。
●第2回(問題は年齢ではない…「年をとると、仕事がなくなる」という人の“根本的な勘違い”)では、生活のために会社を辞められなかった人こそ大切にしたい、50歳以降の仕事選びについて解説します。
『50歳から花開く人、50歳で止まる人』有川真由美 著
発行所 PHP研究所
定価 1,485円(税込)
有川 真由美/作家
台湾国立高雄第一科技大学修士課程修了。化粧品会社事務、塾講師、衣料品店店長、着物着付け講師、ブライダルコーディネーター、フリー情報誌編集者など多くの転職経験を生かし、働く女性のアドバイザー的存在として書籍を多数執筆。近著に『まんがでわかる 一緒にいると楽しい人、疲れる人』『孤独を楽しむ人、ダメになる人』『口ぐせを変えれば、人生がうまくいく 朝起きてから夜寝るまで、いいことが起こる92の習慣』(すべてPHP研究所)など。
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