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実家が「不良債権」になる悲惨な末路…売却を阻んだ“予想外の強敵”

Finasee / 2023年5月31日 11時0分

実家が「不良債権」になる悲惨な末路…売却を阻んだ“予想外の強敵”

Finasee(フィナシー)

相続した実家が、いつの間にか家族のお荷物になっていた。そのことに気付いたのは2年と少し前、久しぶりに単身赴任先の札幌から自宅に戻った時でした。

子供たちはすっかり実家に寄り付かなくなり、1人でメンテナンスを担ってきた妻には匙を投げられる始末です。

加えて、敷地面積が100坪と広いこともあり、毎年何十万円もの固定資産税が、子供2人の教育費がピークに達した我が家の家計に重くのしかかっていたのです。

般若のような顔で実家の売却を迫る妻に気圧され、「分かった」と答えるしかありませんでした。しかし、売却もそう簡単ではなかったのです――。

●兄弟で遺産分割。あまりに楽観的すぎた兄の判断とは……
※前編【「あまりに楽観的すぎた」遺産分割で兄弟の命運を分けた“ある決断”】からの続き

ようやく売却できると思った矢先の出来事

大手不動産会社に相談し、ウェブサイトなどにも物件情報を掲載したところ、3カ月後にようやく声がかかったのは建て売り住宅メーカーでした。土地を5つの区画に分割し、いわゆるペンシルハウスを建てる計画と聞きました。

不動産会社の担当者からも、「ご実家の場合、個人で購入できる資力のある方は限られますから、いいお話だと思いますよ」と言われました。

建て売り住宅メーカーの担当者と話をし、売却価格でも折り合い、いよいよ契約となった時、思わぬ横やりが入りました。建設計画を見た近隣住民から「建物の距離が近過ぎる」「日が当たらなくなる」といったクレームが寄せられたのです。

担当者は最初「大丈夫、よくあることです。私が説得しますから」と自信を見せていましたが、1カ月後には「大変申し訳ありませんが、今回のお話はなかったことにしていただけないでしょうか」と青い顔で頭を下げてきました。

そのすっかり憔悴しきった様子を見て、「もしかして」と思いあたるフシがありました。実家の近くには周辺一帯の土地を広く所有する地主一家が住んでいます。不動産関係の会社を経営していて、不動産業界や政界にも顔が利く地元の大物でした。

確か現当主は地元の私立校で弟の同級生だったはず、と思い弟に口利きを頼めないか連絡したところ、「兄貴には悪いけど、あいつだけは無理!」というすげない答えが返ってきました。その時ふと、弟はこうなることを予測して「実家は兄貴に任せるよ」と言ったのではないかと疑念が頭をもたげました。

家賃収入が得られると思いきや…

そして、実際、“敵”は想像以上に手強かったのです。

建て売り住宅メーカーとのやり取りを見ていた不動産会社の担当者が「固定資産税の支払いだけでも大変でしょうから、家賃収入を得ることを考えたらいかがでしょう?」と、区役所と空き家の有効活用を目指したプロジェクトを運営しているNPO(特定非営利活動法人)を紹介してくれました。

NPOの担当者は地方のシャッター商店街再生プロジェクトなどにも関わったことのある大学の研究者でした。イングリッシュガーデンに煉瓦の洋館という実家の立て付けを高く評価し、シェアハウスやデイケア、区の文化施設などさまざまな活用法を提案してくれました。

その中で比較的イニシャルコストもかからないデイケア施設としての活用を本格的に検討していこうとなった矢先、またしてもあの地主一家が干渉してきたのです。

「自治会長さんという方が見えて、『この辺りは昔からの住民が暮らしている閑静な住宅地だから、身元の分からない部外者が毎日出入りするのは困る』とおっしゃるんです」。最初はNPOの担当者も困惑したようでした。しかし、区役所の担当者から“自治会長さん”の素性を聞き、抵抗しても無駄だと察し諦めたようです。

「厄介な相手と関わってしまいましたね。これがうまくいけば区内の空き家活用のベストプラクティスになったかもしれないのに」と言って引き上げていく背中には無念の思いがにじんでいました。

兄弟の命運を分けた“あの時の判断”

そうして実家の処分に手をこまねいている間にも、固定資産税は毎年容赦なく徴収されていきます。

今年に入ってから光熱費や食料品などが値上がりしたこともあり、我が家の家計はまさに赤字転落寸前です。家族に「いっそ実家に住まないか?」と提案してみたものの、子供たちの通学には交通の便が悪く、妻もパートを辞めたくないからと現在の賃貸マンションを離れるつもりは一切ないようです。

私は今年で役職定年を迎えます。それに伴い、収入も手取りベースで3割ほどダウンする予定です。このままでは、私たち夫婦の老後のために蓄えておいたわずかばかりの貯蓄を固定資産税のために切り崩していくしか方法はありません。

今や、実家は完全に我が家の“不良債権”と化しました。

実家を私にすんなり引き渡し、自分は母の金融資産2000万円を持っていった弟は、本当にうまくやったよなと思っても、あとの祭りです。8年前のあの時に時計の針を巻き戻せたら……と歯噛みする毎日です。

●生前贈与した財産の行方とは? 続きは【“依存症”妻が不倫、離婚後に元夫は急死…「恐ろしい計画」に絶句】(本サイト記事)で紹介します。

※個人が特定されないよう事例を一部変更、再構成しています。

Finasee編集部

金融事情・現場に精通するスタッフ陣が、目に見えない「金融」を見える化し、わかりやすく伝える記事を発信します。

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