化粧品大手レブロンの破産から1年…“桁違い”の巨額負債を抱えた理由
Finasee / 2023年6月15日 7時0分
Finasee(フィナシー)
・「絶対にもうかる」正規の金融機関に言われたら…資産を守る重要手段
新型コロナウイルス感染症が感染症法上の5類(季節性インフルエンザと同等)に移行し、街には随分とにぎわいが戻ってきました。しかし経済への爪痕は深く、コロナ関連倒産は現在でも増加傾向にあります。
【新型コロナウイルス関連倒産件数】
東京商工リサーチ 新型コロナウイルス関連倒産動向調査(2023年5月)より著者作成日本より比較的早く経済を再開させたアメリカでも同じような動きがありました。新規感染者数の落ち着きが見られていた2022年6月15日、アメリカの化粧品大手レブロンが破産を申請したのです。
老舗化粧品メーカーが1兆3400億円の負債を残し経営破綻レブロンは1932年3月にチャールズ&ジョゼフ・レブソン兄弟とチャールズ・ラックマンが設立した化粧品会社で、日本には1963年に進出しました。
創業期から革新的なネイルエナメルやリップスティックでシェアを伸ばし、特に1973年にリリースした香水「チャーリー」は世界的にヒットします。1980年代には当時のスーパーモデルを起用したキャンペーンが当たり、レブロンは化粧品業界で世界トップクラスの売り上げを持つ大企業へと成長しました。
しかし、次第に国内のライバル企業や海外勢との競争が強まり、徐々に業績が悪化します。近年は2016年から最終赤字が続いていました。そして2020年は新型コロナウイルスによる急激な売上高の減少に見舞われ、およそ6億ドルもの純損失を計上します。
【レブロンの業績】
レブロン 年次報告書より著者作成新型コロナウイルスに伴う強力なロックダウンはレブロンのサプライチェーンにも深刻なダメージを与え、同社の供給網を混乱させました。それを立て直すことができず、レブロンは破産法の適用を申請し経営破綻します。破綻時の負債は最大100億ドル(約1兆3200億円)にも上ると推定されました。
レブロンは2023年5月、経営権を譲り渡すことを条件に27億ドル以上の債務を削減し、破産から脱却しました。レブロンの新しい所有者にはキング・ストリート・キャピタル・マネジメントやアンジェロ・ゴードンといった投資ファンドが名を連ねています。
アメリカのインフレはいつ収まる?レブロンが破綻した理由の1つにインフレがあるとみられています。アメリカは2020年3月から実施した金融緩和の効果やコロナからの脱却に伴う需要の増加から、2021年ごろからインフレが進むようになりました。
さらに2022年2月に起こったロシア・ウクライナ問題が穀物やエネルギーの価格を押し上げ、物価の上昇に拍車をかけます。レブロンが破綻した2022年6月のCPI(消費者物価指数)は、前年比で9.1%もの変化率を記録しました。
【アメリカのCPI(変化率)の推移】
Investing.comより著者作成アメリカはインフレを抑え込むため緩和的な金融政策を転換し、2022年3月には利上げに転じます。それに伴ってアメリカ株式市場は軟調に推移するようになります。インフレが落ち着くまでは金融引き締めが続くと予想されることから、多くの投資家は「インフレはいつ終わるか」に関心を寄せているでしょう。
アメリカのインフレはいつ収まるのでしょうか。FRBが目標とする前年比2%にはまだ距離があるものの、利上げの効果からかCPIは落ち着きを見せており、2023年4月分は2年ぶりに前年比で4%台にまで低下しています。このペースが維持されるなら、2023年中にFRBの目標インフレ率に到達することになります。
ただし、低下ペースは鈍化が懸念されるほか、経済動向によってはむしろ上昇することも十分考えられるでしょう。アメリカのインフレは、まだまだ予断を許さない状況が続きそうです。
なぜグロース株は金利上昇で値下がりしやすいのか金利の上昇でアメリカ株式市場は全体的に軟調な展開が続きましたが、特にグロース株(成長株)はバリュー株(割安株)より大きく下落する傾向にありました。アメリカが利上げを実施した2022年3月からのマーケットを見ると、明らかにグロース株価指数の方がバリュー株価指数より大きく値下がりしています。
【S&Pグロース指数とS&Pバリュー指数の推移(2022年2月末=100)】
S&P ダウ・ジョーンズ・インデックスおよびInvesting.comより著者作成なぜ金利上昇下でグロース株はバリュー株より大きく下落したのでしょうか。その理由は「益回り(株式益回り)」の差にあると考えられています。
益回りとは株価に対する利益率のことで、1株純利益を株価で割って算出されます。PER(株価収益率)とは逆数の関係にあり、例えばPERが20倍なら益回りは5%、PERが100倍なら1%です。従って、PERが高い傾向にあるグロース株は益回りが低く、反対にPERが低い傾向にあるバリュー株は益回りが高くなりやすいといえます。
そして純利益は株主のリターンの源泉であることを踏まえれば、益回りは株式投資で期待できる利回りを表すことになります。これは債券投資における債券利回りに相当することから、益回りは債券利回りとよく比較されます。
リスクの差から、益回りは債券利回りより大きくなることが一般的ですが、グロース株は益回りが低い傾向にあるため、バリュー株ほど大きな差とはならないでしょう。金利が上昇すると債券利回りも上昇するため、場合によっては利回りが債券に追いつかれるグロース株も出てくるかもしれません。
同じ利回りなら、リスクの高い株式より債券で運用する方が効率的です。このような思惑から金利が上昇すると株式の売りが誘発されやすく、特に益回りが低いグロース株でその傾向が強くなるといえます。金利の上昇が予想される際はこの仕組みを思い出し、株式投資に生かしてみてください。
執筆/若山卓也(わかやまFPサービス)
証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。
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