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「老後の収入は一切ありません」無年金の父が扶養に…娘が被った迷惑

Finasee / 2023年6月2日 11時0分

「老後の収入は一切ありません」無年金の父が扶養に…娘が被った迷惑

Finasee(フィナシー)

年金はあてにならない、どうせ少ない。そんな声をよく聞きます。しかし、もし年金がないとどのような生活になるでしょうか。今回は、無年金の父が引き起こした“ある迷惑”についてお話します。

***
 

50歳の恵理子さんは2人の高校生の子を持つ母親です。春から実父と同居が決まり、父を夫の扶養に入れるとどうなるのか知りたいとのことで、筆者のところに相談に来られました。

現在、お父様はタクシー運転手として働いていますが、春に定年の75歳を迎えるため、退職することになったそうです。お父様の退職後は恵理子さん一家と一緒に住むことになり、この同居によって家計にどのような影響があるのか事前に知っておきたいとのことでした。

<相談者 恵理子さんプロフィール>

・50歳
・夫婦共働き
・夫、高校生の子2人と暮らしている
・定年退職後の父親と春から同居予定

恵理子さんから発せられた“衝撃の一言”

まず、扶養には、「税制上の扶養」と「社会保険上の扶養」があります。

75歳になるとお父様自身は後期高齢者医療制度に加入することになりますから、社会保険上の扶養制度はなく、税制上の扶養のみとなります。また、税制上の扶養に入る条件として、お父様の所得が48万円以下である必要があります。

そこで、早速お父様の年金やその他収入状況を聞いてみました。すると、恵理子さんからは「ありません」と衝撃の一言が。筆者は「ありません」の意味が一瞬分からず、「お父様の年金はいくらですか?」と単刀直入に聞き直しました。

しかし、最初の言葉の通り、お父様は年金を納めていなかったため、定年退職後の収入はゼロだと言うのです。「収入が何ひとつない父を放っておけなかったんです……」と言って身元を引き取らざるをえない状況だったと話してくれました。

扶養に実父を入れることの影響は?

収入がゼロというのは困ったことですが、不幸中の幸いと言うべきか、税制上の扶養には何の問題もなく入れます。

さらに、恵理子さんのご主人の年収は約900万円とのことで、計算すると、お父様を扶養に入れることで所得税と住民税を合わせて15万円ほど節税できそうです。そのことを伝えると、「そんなにも節税できるのですか⁉」と恵理子さんは目を丸くしていました。

しかし、収入がないお父様は税金を納める必要こそありませんが、「後期高齢者医療保険の保険料」や「介護保険料」など社会保険料は納めなければいけないことに注意が必要です。

特に、介護保険料は世帯の所得も関係します。お父様の収入がゼロであったとしても、恵理子さん家族と一緒に暮らすことで、お父様の介護保険料がアップしてしまうのです。

もちろん、お父様には保険料を捻出するための収入がありませんから、この場合は恵理子さんのご主人が保険料を負担することになります。ご主人が負担することになるお父様の介護保険料は、年間6〜7万円ほどになるでしょう。

お父様の社会保険料を負担した時は、ご主人の社会保険料控除として年末調整できますから、この点は忘れずに申告が必要です。

「無年金」になってしまった経緯とは

「ところで、なぜお父様は無年金になってしまったのでしょうか?」

そう筆者が聞いてみると、恵理子さんがこれまでの経緯を話してくれました。

「父は年金を全く納めていなかったわけではありません。年金受給に必要な加入期間を満たせなかったのです」

というのも、お父様の年齢であれば、60歳から報酬比例部分という年金を受け取ることができたはずでした。しかし、年金受給に必要な加入期間は当時25年で、その後2017年に年金受給資格期間は10年に短縮されたものの、それでも加入期間を満たせなかったと言うのです。

お父様は、若い頃は4年ほど会社員をしていたため、厚生年金に加入し保険料を納めていました。その後、結婚し今は亡くなったお母様と一緒に食堂の経営を始めたそうです。

会社員から個人事業主になったため、自ら納付の手続きをする必要がありますが、目先の忙しさにかまけて手続きを放置。市の職員が戸別訪問し督促に来たこともあったようです。

現在では未納者に対して、電話や文書での督促、委託された民間事業者による戸別訪問、保険料を納める能力がありながら、納付されない場合は財産の差し押さえという取り組みがされています。

もちろん当時も督促はありましたが、お父様は仕事が忙しく納付を放置し続けました。お母様が亡くなった後は食堂を閉店し、タクシー運転手として働き始めました。この時の勤務形態はパートですが、厚生年金に加入し年金を納めることができました。

しかし、時すでに遅し。厚生年金は70歳まで加入できますが、お父様が転職したのは66歳。70歳まで4年間年金に加入できたとしても、過去の加入歴4年と合算しても年金受給に必要な10年をぎりぎり満たせなかったのです。

救済措置は用意されていたが……

しかし、お父様のような状況の人にもまだ救済措置はあります。70歳を過ぎても会社勤めをする場合ですが、年金受給資格期間を満たすまで厚生年金に加入できる「高齢任意加入」という制度を使うことができるのです。

この制度を使うには、本人が年金事務所に高齢任意加入の申出書を提出する必要がありますが、お父様はこの制度の存在を全く知らず手続きをしていませんでした。結果、無年金となり定年退職により収入がなくなったため、子どもに頼り、一緒に暮らすしか方法がなくなってしまったのです。

●実父の貯金は300万円。年金はやはり“なくてはならないお金”だった……。老後資金を作る必要性とともに、続きは後編【「やっぱり年金は大事…」収入ゼロの老後に待ち受ける“厳しい現実”】で解説します。

前田 菜緒/ファイナンシャルプランナー

FP事務所AndAsset代表。ファイナンシャルプランナー(CFP、1級FP技能士)。大手保険代理店に7年間勤務後、独立。子育て世代向けにライフプラン相談、セミナー、執筆などを行っている。子連れでセミナーに行けなかった自身の経験から、子連れOK、子どもが寝てから開催するなど、未就学児ママに配慮した体制で相談やセミナーを実施。経済的理由で進学をあきらめる子をなくしたいとの想いを持ち、活動中。

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